俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか

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第一部 決闘大会編

百九十話

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 怪我人が出たということで、手当てもかねて医務室で聴取をすることになった。
 俺はべつに、怪我してなかったんだけどさ。イノリが、「吉村くんも、ちゃんと見てもらったほうがいいよ?」って、心配してくれて。そんなら「行くべ」って、俺も医務室に行ったわけよ。

「……ふんふん。ちょっと赤くなってますが、大丈夫ですよ。一応、薬塗っときましょうね」
「ありがとうございます」

 田野先生が、にこやかに太鼓判を押してくれる。俺は、お礼を言って服を直した。
 医務室の隅で、じっと様子を見ていたイノリに、にこっと笑いかける。と、イノリはほっとしたように、眉間のシワをほどいた。

「おつかれ、吉村くん。さっそくだが、話を聞いてもいいか?」
「はい、お願いします!」

 白井さんに、ベッドの方へ誘導される。風紀委員が三人、囲むように立っているベッドに白井さんは近づくと、カーテンをシャッ、と開けた。

「失礼。――具合はどうだろう。話せそうなら、聴取をしたいのだが」
「……良くはねぇけど、話せる」

 中には、頭に氷嚢を乗っけてバンド奴が寝転んでいた。ベッド脇の椅子には、森脇が座ってる。

「あ、ああの、僕も一緒にいて、いいですか?」
「勿論だ。君からも、話を聞きたいからな」

 そういうわけで、風紀委員とイノリがベッドをぐるっと囲んだ状態で、聴取が始まった。



 まず、俺が経緯を話した。

「俺は、森脇に話しかけようとしたんです。そしたら、そこにいる奴が連れてっちまって。険悪だったから、心配で追っかけて――」

かくかくしかじかと理由を述べると、周りの委員の人がメモを取っていた。

「ぼ、僕は寮にもっ戻ろうかと。そしたら、美門くんとけっ喧嘩になって……」
「間違いなく、喧嘩なのかな?」
「はっ。は、はい」

 訝しげな顔で聞き直した白井さんに、森脇はがくがくと頷いた。
 最後に、バンド奴が尋ねられた。バンド奴は、美門輝人と言うらしく、やはり森脇のクラスメイトで合ってたらしい。
 美門は、森脇に助け起こされ、三白眼にこっちを睨み付けてくる。

「俺は……盾太に忠告しただけだ。そこにいる黒と、一緒にいるなって」
「ふむ。それはまた、どうして」
「どうしてって……黒なんかといて、良いことがあるか? 黒なんぞ、弱くて卑しくて、自分が助かることしか考えてない奴ら」
「わあっ!」

 大声を出した俺を、みんながぎょっと振り返る。

「――どうした、吉村くん」
「い、いえいえ。すんません、続けてください」

 あぶねえ。イノリが、近くにあった本投げようとしてた。とっさに、大声出して気を逸らしたけど――イノリに「だめだ!」って目で訴えた。

「特に、そこにいる奴はよ……盾太どころか、そこにいる桜沢や須々木、姫岡にまで媚び売るような奴なんだぜ。盾太のことだから、利用されてんだと思って――」
「ああっ!!」

 すっとんきょうな声を上げた俺に、みんな「またか」と振りかえる。

「どうした、吉村くん?」
「すっすんません、続けてください」

 白井さんは、「静かにな」って苦笑した。
 俺は頭を下げつつ、イノリに「落ち着け」ってハンドサインを送る。頼むからお前は、そのポットを置いてくれ――

「み、美門くん。よっ吉村くんは僕の友だちなんだ。そっそういう言い方、やめて」
「……!」
「森脇……」

 と、森脇が、きりっと美門を見据えた。
 俺がジーンとしてると、美門はキリキリと眉を吊り上げた。

「何でだよ! いつも、俺の言うこと聞いてただろ? 俺が信用できないって?」
「そっそうじゃないよ! たっただ、ご、誤解が、あると思うんだ。吉村くんは、そんな人じゃない。吉村くんは――」
「……吉村、吉村ってうるせぇ!」

 美門が怒鳴って、森脇はびくりと肩を震わせた。と、美門は額を手で抑えて、呻き出す。

「……はっ、そうかよ。結局、新しいツレが出来たら、俺はどうでもよくなったってことか! つくづく薄情な奴だよ、盾太は」
「ちち、違う! どうでもよくなんて……!」
「嘘つけ! 大体、お前はいつもいつも……」

 やんや、やんやと言い合う二人。
 俺は、止めるべきか迷いつつ、なんとも言えないむず痒さを感じていた。
 なんだろう……喧嘩のはずなんだけどさ。ちょっと、母ちゃんとおばさんが言い合ってる時に似てるような……。
 白井さんたちも、あっけに取られて顔を見合せあっている。
 と、そのとき。

「あのさぁ、なんでもいーんだけどぉ」

 イノリのおっとりした声が、言い合いに割ってはいった。

「よーするにあんたはー、もりわきくんが、吉村くんと仲良さそうで、寂しかったってことでしょー?」
「……!」
「えっ」

 イノリの指摘に、美門はかあっと顔を真っ赤にする。それを見て、森脇もびっくりした顔で固まった。

「なら、そこをちゃんと言わないとー、心配してるとか言っても、ぜーんぶウソに聞こえるしさぁ。余計こじれると思うんだけどー」
「あ……う……」

 美門は、真っ赤な顔のまま、口をパクパクさせている。森脇も、「え……」と両手で口を覆って、頬を赤らめている。
 ええと、どうゆうことよ、結局……? 俺は、ぽかんと顔を赤くしている二人を見比べた。

「これは……その……?」

 白井さんたちも、どう対応したものか判じかねているらしい。
 すると、こんな時にも動じない男――イノリが追撃を加えた。

「それよりさあ、聞きたいんだけど……あんた、さっき吉村くんがどうとか、言ってたよねー?」

 こてん、と首を傾げながら言った。

「もしかして、ずーっと吉村くんのことつけ回してたの?」

 なぜか、部屋の温度がぐっと下がったような気がした。

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