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第一部 決闘大会編
百七十八話
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森脇と片倉先輩と、わっせほっせと寮へ戻った。片倉先輩は、欠伸を連発していて、
「だりい。一刻も早く寝る。晩飯? お前ら二人で行けば」
と、寮につくやいなや、部屋に戻ってしまった。
その後ろ姿はふらふらで、見るからにお疲れ模様だ、
確かに先輩、すっげえ真剣に、コントロールの練習してたもんな。口では乗り気じゃないけど、ほんとはアツい人だよなって思う。
「じゃあ、二人で行くかー」ということになって、食堂に行って晩メシを食った。ピークの時間が外れたこともあって、食堂はわりと空いていて。
さっきの勉強会のことで、のんびりしゃべる余裕もあった。
森脇は、オムライスの山を崩しながらにこにこと言う。
「す、すごく楽しくて……。ゆっ勇気だして行って、良かった」
「俺も! すげー楽しかった」
森脇も、また参加させてもらうつもりなんだって。
今日、楽しかっただけでなく、補習のことが大きかったらしく。
「か、葛城先生の補習に出っ出てから。成績が、ひっ久しぶりに上がったんだ」
聞けば、このところ伸び悩んでいた成績が、すごく上がったんだって。そういうとこで、すげえ手応えを感じたから、もっと授業を受けたいって、思ったそうなんだ。
「そっかあ。やったな、森脇!」
「え、えへへ……」
森脇は、はにかんだ。
「あっありがとう。い、今までね、高柳先生の勉強会にね? 出るものなのかなって。思、思ってたんだけど……あ、僕、詠唱術が好きで、そういう分野を研究とか、そのしたくて……。なら、高柳先生に習うのかなって……けど、もっと体系的に、ま、学んだほうがいいのかもって、思い始めて……」
俺は、ほえーっと感激した。
一生懸命に話す森脇の言葉を聞いてたらさ。こんなに色々考えてんのかって、真剣さに圧倒されちまって。
「すげーな、森脇。めっちゃ考えてんだな……」
「えっ、そっそんなことないよ」
しみじみ言うと、森脇はぱっと顔を赤らめて、首をふった。
でも実際、やりてえことがわかってて、そのためにどうしたいかわかってるって、すげえと思う。
そう言ったら森脇は、首を傾げた。
「そっそうかな? よ、よ吉村くんは?」
「へ?」
「あっ、あのその。したいこととか……好きなこととか……」
俺は、きょとんとしつつ、考えた。俺のしたいこと……
――トキちゃん。
ふいに、亜麻色の髪が、笑顔が、脳裏によぎる。
「あっ」
「ど、どうしたの?」
「ううん、なんでも」
不思議そうな森脇に、にかっと笑った。
そうだ。俺は、まだ魔法のことはわかんねえけど。
今は、とにかく強くなって、序列をあげてえな。イノリのそばにいたいから。
「俺は、強くなる!」
「わ、わあっ?!」
ぐっと拳を握って言うと、森脇がぎょっとしていた。いつもすまん。
食べ終わって、お盆を返して。階段の前で、森脇と別れた。
のんびり手をふって、自分の部屋に戻ろうとしたとき。
――ピリッ。
また、項にこれだよ。
実を言うと、食べてるときも、ちょいちょい刺さってた。
話しに集中したくて、スルーしたけどさ。
なんなんだよな?
俺は、項をこすりこすり早足で廊下を歩く。明日こそ、二見に相談してみよう……。
「だりい。一刻も早く寝る。晩飯? お前ら二人で行けば」
と、寮につくやいなや、部屋に戻ってしまった。
その後ろ姿はふらふらで、見るからにお疲れ模様だ、
確かに先輩、すっげえ真剣に、コントロールの練習してたもんな。口では乗り気じゃないけど、ほんとはアツい人だよなって思う。
「じゃあ、二人で行くかー」ということになって、食堂に行って晩メシを食った。ピークの時間が外れたこともあって、食堂はわりと空いていて。
さっきの勉強会のことで、のんびりしゃべる余裕もあった。
森脇は、オムライスの山を崩しながらにこにこと言う。
「す、すごく楽しくて……。ゆっ勇気だして行って、良かった」
「俺も! すげー楽しかった」
森脇も、また参加させてもらうつもりなんだって。
今日、楽しかっただけでなく、補習のことが大きかったらしく。
「か、葛城先生の補習に出っ出てから。成績が、ひっ久しぶりに上がったんだ」
聞けば、このところ伸び悩んでいた成績が、すごく上がったんだって。そういうとこで、すげえ手応えを感じたから、もっと授業を受けたいって、思ったそうなんだ。
「そっかあ。やったな、森脇!」
「え、えへへ……」
森脇は、はにかんだ。
「あっありがとう。い、今までね、高柳先生の勉強会にね? 出るものなのかなって。思、思ってたんだけど……あ、僕、詠唱術が好きで、そういう分野を研究とか、そのしたくて……。なら、高柳先生に習うのかなって……けど、もっと体系的に、ま、学んだほうがいいのかもって、思い始めて……」
俺は、ほえーっと感激した。
一生懸命に話す森脇の言葉を聞いてたらさ。こんなに色々考えてんのかって、真剣さに圧倒されちまって。
「すげーな、森脇。めっちゃ考えてんだな……」
「えっ、そっそんなことないよ」
しみじみ言うと、森脇はぱっと顔を赤らめて、首をふった。
でも実際、やりてえことがわかってて、そのためにどうしたいかわかってるって、すげえと思う。
そう言ったら森脇は、首を傾げた。
「そっそうかな? よ、よ吉村くんは?」
「へ?」
「あっ、あのその。したいこととか……好きなこととか……」
俺は、きょとんとしつつ、考えた。俺のしたいこと……
――トキちゃん。
ふいに、亜麻色の髪が、笑顔が、脳裏によぎる。
「あっ」
「ど、どうしたの?」
「ううん、なんでも」
不思議そうな森脇に、にかっと笑った。
そうだ。俺は、まだ魔法のことはわかんねえけど。
今は、とにかく強くなって、序列をあげてえな。イノリのそばにいたいから。
「俺は、強くなる!」
「わ、わあっ?!」
ぐっと拳を握って言うと、森脇がぎょっとしていた。いつもすまん。
食べ終わって、お盆を返して。階段の前で、森脇と別れた。
のんびり手をふって、自分の部屋に戻ろうとしたとき。
――ピリッ。
また、項にこれだよ。
実を言うと、食べてるときも、ちょいちょい刺さってた。
話しに集中したくて、スルーしたけどさ。
なんなんだよな?
俺は、項をこすりこすり早足で廊下を歩く。明日こそ、二見に相談してみよう……。
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