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第一部 決闘大会編
百八話
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イノリは、ヤカンのお湯でカップうどんを作った。
もわもわと蓋の隙間から湯気が上るのを見てたら、なんとなく嬉しい気持ちになる。
「トキちゃんも一緒にたべようねー」
「おっ、やった!」
うまいよなあ、寒い日のうどん。
出来上がりを待つ間、俺のパンをはんぶんこすることにした。メロンパンの片割れをかじっていると、イノリは言う。
「トキちゃん、火傷はどう?」
「全然だぞ! 忘れてたくらい」
「よかったぁ」
イノリは、ホッとしたように笑う。
心配性だなあ、と思いつつ、くすぐったい。イノリは昔から、人の痛いのに敏感なんだ。
「イノリこそ、警備どうだったん?」
「んー、ぼちぼち? 特に乱闘になるでもなくー、ぐるぐる校内を練り歩いたってかんじだねぇ」
「そっかぁ。お疲れ!」
危ないことになってないなら、良かった。
イノリが強いのわかってるけど、乱闘とかは無い方が安心だと思う。
「ちゃんと、抑止力になってるといいけどー」
「大丈夫っ。俺の見立てじゃ、バッチリだぜ!」
「そぉ?」
上から見てたやつら、みんなイノリのことすげーって思ってんの、伝わって来たもん。
太鼓判を押すと、イノリは照れくさそうに笑った。
三分経って、イノリがべりべり蓋を剥がす。ふわんと出汁の匂いがして、喉が鳴った。
「はい、トキちゃんも」
「ありがとうっ」
割り箸を貰って、お相伴に預かる。
一つのうどんをつつきながら、つもる話をした。一日会わないだけで、色々話したいことは尽きない。
「トキちゃん、昨日のメモ面白かったよー」
「だろ! 俺も良い手を思いついたなってさあ」
得意になって胸を反らすと、イノリがくすくす笑う。
「そうだ。ハンカチ洗濯したから、もうちょっと待っててね」
「えっ、悪いなわざわざ」
「いいんだよー。あと、これ」
イノリは、ポケットから消しゴムを取り出して、俺の手に握らせる。ハンカチの重石にしたやつだ。
「サンキュ」
鞄からペンケースを出してしまっていると、イノリが不思議そうに言う。
「トキちゃん、今日は鞄も持ってきたんだ?」
「!」
思わず、ぎくっとする。
昨日、色々ものがなくなっちゃったからさ。一応予防として、鞄を持ち歩くことにしたんだ。
いつも昼飯しか持ってこないから、へんに思われたのか。
「えっと。ほら、試験も近いから! 勉強道具持ち歩いてんだ」
「そっかぁ。ごはんのあと、問題出しっこする?」
げげっ。教科書はおろか、参考書なんて持ってないぞ!
「い、いやいや! メシのときは休もう?!」
「……そう?」
慌てて首をブンブン振ると、イノリは首を傾げた。じっと見つめられて、冷や汗が出る。
まずいぞ。あやしまれてる……。
「ねえ、トキちゃん――」
「あ、あのさ! 俺のクラス、今日魔力の再測定なんだぜ!」
急な話題転換で、イノリの問いを遮った。イノリは目をパチクリさせている。
ごめん! って心の中で手を合わせて、ぺらぺら捲し立てる。
「だから、クラスがすげえピリピリしててさー! 結果の良し悪しで、凄いテンションの高低差でな。俺もドキドキしちまったりして」
「……」
「イノリのクラスは、もうやった?」
「……んーん。俺のクラスはまだかなぁ」
「そっか!」
なはは! と笑う。
イノリは、唇に指をあてて思案顔だ。怪しんではいそうだけど、これ以上突っ込まれずにホッとする。
「トキちゃんは、もうした?」
「出席番号順だから、まだ先だぞ。――俺、実はちょっと楽しみなんだ」
「え……」
「お前に魔力起こして貰ったし。魔力のパラメーター絶対変わってると思うんだ~」
ニコニコして言うと、イノリもやわらかく微笑んだ。
「トキちゃん、いっぱい頑張ってたもんね」
「ありがと! あとは、あの石が不良品じゃないかだけ……」
前は、さわった瞬間割れちまったから。そしたら、いっぱい人が来て、びびったし。なんか縁起悪いじゃん。
そう言うと、イノリは目を丸くした。次いで、コロコロ笑い出す。
「トキちゃん、大丈夫だよー。それは故障なんかじゃないから」
「えっ、そうなのか?」
「うん。だってね……」
笑いを治めたイノリが、内緒話のポーズをつくる。それから、こそっと教えてくれたことに、俺は驚愕した。
もわもわと蓋の隙間から湯気が上るのを見てたら、なんとなく嬉しい気持ちになる。
「トキちゃんも一緒にたべようねー」
「おっ、やった!」
うまいよなあ、寒い日のうどん。
出来上がりを待つ間、俺のパンをはんぶんこすることにした。メロンパンの片割れをかじっていると、イノリは言う。
「トキちゃん、火傷はどう?」
「全然だぞ! 忘れてたくらい」
「よかったぁ」
イノリは、ホッとしたように笑う。
心配性だなあ、と思いつつ、くすぐったい。イノリは昔から、人の痛いのに敏感なんだ。
「イノリこそ、警備どうだったん?」
「んー、ぼちぼち? 特に乱闘になるでもなくー、ぐるぐる校内を練り歩いたってかんじだねぇ」
「そっかぁ。お疲れ!」
危ないことになってないなら、良かった。
イノリが強いのわかってるけど、乱闘とかは無い方が安心だと思う。
「ちゃんと、抑止力になってるといいけどー」
「大丈夫っ。俺の見立てじゃ、バッチリだぜ!」
「そぉ?」
上から見てたやつら、みんなイノリのことすげーって思ってんの、伝わって来たもん。
太鼓判を押すと、イノリは照れくさそうに笑った。
三分経って、イノリがべりべり蓋を剥がす。ふわんと出汁の匂いがして、喉が鳴った。
「はい、トキちゃんも」
「ありがとうっ」
割り箸を貰って、お相伴に預かる。
一つのうどんをつつきながら、つもる話をした。一日会わないだけで、色々話したいことは尽きない。
「トキちゃん、昨日のメモ面白かったよー」
「だろ! 俺も良い手を思いついたなってさあ」
得意になって胸を反らすと、イノリがくすくす笑う。
「そうだ。ハンカチ洗濯したから、もうちょっと待っててね」
「えっ、悪いなわざわざ」
「いいんだよー。あと、これ」
イノリは、ポケットから消しゴムを取り出して、俺の手に握らせる。ハンカチの重石にしたやつだ。
「サンキュ」
鞄からペンケースを出してしまっていると、イノリが不思議そうに言う。
「トキちゃん、今日は鞄も持ってきたんだ?」
「!」
思わず、ぎくっとする。
昨日、色々ものがなくなっちゃったからさ。一応予防として、鞄を持ち歩くことにしたんだ。
いつも昼飯しか持ってこないから、へんに思われたのか。
「えっと。ほら、試験も近いから! 勉強道具持ち歩いてんだ」
「そっかぁ。ごはんのあと、問題出しっこする?」
げげっ。教科書はおろか、参考書なんて持ってないぞ!
「い、いやいや! メシのときは休もう?!」
「……そう?」
慌てて首をブンブン振ると、イノリは首を傾げた。じっと見つめられて、冷や汗が出る。
まずいぞ。あやしまれてる……。
「ねえ、トキちゃん――」
「あ、あのさ! 俺のクラス、今日魔力の再測定なんだぜ!」
急な話題転換で、イノリの問いを遮った。イノリは目をパチクリさせている。
ごめん! って心の中で手を合わせて、ぺらぺら捲し立てる。
「だから、クラスがすげえピリピリしててさー! 結果の良し悪しで、凄いテンションの高低差でな。俺もドキドキしちまったりして」
「……」
「イノリのクラスは、もうやった?」
「……んーん。俺のクラスはまだかなぁ」
「そっか!」
なはは! と笑う。
イノリは、唇に指をあてて思案顔だ。怪しんではいそうだけど、これ以上突っ込まれずにホッとする。
「トキちゃんは、もうした?」
「出席番号順だから、まだ先だぞ。――俺、実はちょっと楽しみなんだ」
「え……」
「お前に魔力起こして貰ったし。魔力のパラメーター絶対変わってると思うんだ~」
ニコニコして言うと、イノリもやわらかく微笑んだ。
「トキちゃん、いっぱい頑張ってたもんね」
「ありがと! あとは、あの石が不良品じゃないかだけ……」
前は、さわった瞬間割れちまったから。そしたら、いっぱい人が来て、びびったし。なんか縁起悪いじゃん。
そう言うと、イノリは目を丸くした。次いで、コロコロ笑い出す。
「トキちゃん、大丈夫だよー。それは故障なんかじゃないから」
「えっ、そうなのか?」
「うん。だってね……」
笑いを治めたイノリが、内緒話のポーズをつくる。それから、こそっと教えてくれたことに、俺は驚愕した。
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