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第一部 決闘大会編
十五話
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嬉しい時でも、時間ってちゃんと流れてるもんで。
昼休み終了のチャイムが鳴る。
別々に帰った方がいいってことで、俺が先に帰ることになった。
「またね、トキちゃん」
「おう、またなイノリ」
教室の中から、イノリがにこにこと手を振っている。俺も手を振り返した。
静かな廊下をずんずん歩きながら、俺は「くふふ」と笑いがこみ上げてきた。
イノリと、久々に話して、飯を食った。
で、明日からの昼休み、あそこに行けばイノリに会えるわけで。それが、めっちゃ嬉しい。
イノリと離れてたこのひと月、やっぱ寂しかったんだよな。
だってさ、今までずっと一緒にいたんだし、当然、ここでもそうだって思ってたから。
『生徒会に入ったのは……ちからが欲しかったから』
イノリの言葉が甦り、俺はピタッと足を止める。
305教室を振り返って、中にいるイノリを思った。
『俺は、転校したての未熟な紫だから、標的にされたっぽいんだよね』
俺がぼーっとしてるうちに、一人で闘っていたイノリ。毎日、決闘だって追い回されて、どんだけ不安だっただろう。
あいつ、親のことといい、俺にそういうの言わねえんだな。
「俺、もっとちゃんとしねえと」
別にさ。
イノリは、俺に言ってもしょうがねえとか、思ってるわけじゃねえと思う。でも、やっぱダチには頼られてえもんな。
なんつって、決意新たに迎える午後の授業。
今日は、武道館に集まって魔法バトルの実技をするらしい。
転校してから、魔法の基礎理論ってのをずっとやっててさ。魔法バトルみてえな授業は初めてで、ちょっと楽しみだ。
「いいか。魔法バトルを学ぶと言っても、一年のきみ達がまず修めるべきは、魔力のコントロールだ」
ジャージに着替えた葛城先生(やはり短パン)が、小脇に抱えたマネキンを床に置く。
「あくまで、バトルの形式で魔力のコントロールを学ぶのが、この授業の主眼だ。置かれた状況に対し、臨機応変に魔力の操作を行うのは、魔法バトルの基礎能力だが、体得するのは難しい。で、今日は、この「げんそくん三号」を使って、それを体感してもらう」
そう言うと先生は、マネキン改めげんそくん三号の背中のボタンを押した。のっぺらぼうの顔の真ん中に、丸くてでっかい石がはまってて、そこにポウッと赤い光が灯る。
「げんそくん三号は、風・火・水・土の四元素を宿していて、ランダムに元素の強さを切り替えることができる。今は、火の元素が強い状態になっているな。これを倒すにはどうしたらいいか……。理論で散々やったから、皆わかるものと思う。さて、今から一人ずつ、げんそくん三号と二分間バトルを行ってもらうぞ」
葛城先生はすらすらと説明を終えると、鳶尾を前に呼び出した。見本をするよう言われて、鳶尾は誇らしげに胸を張った。
「はい。先生、お願いします」
鳶尾は、げんそくん三号と向き合った。
「では、はじめ!」
葛城先生が、開始を合図する。
と、げんそくん三号は、人形と思えねえ動きで床を蹴り、鳶尾に向かって行く。
接近すると、腕をぶんとしならせて、鳶尾の顔面にビンタをくりだした。
鳶尾は、ボクサーのように頭を低くしてよける。そのまま一歩前に踏みこむと、固いどてっぱらに拳をお見舞いする。
バスっと重い音がして、げんそくんがよろけて下がった。殴られて仰のいた顔面の光が、暗褐色に変わる。
鳶尾は慌てず、軽快なフットワークを刻みつつ詠じた。
「我が身に宿る風の元素よ、風より疾くボクを動かせ」
鳶尾の全身が、淡い金の光に包まれる。
風を切って猛進すると、げんそくんの鼻っ面にビンタをぶちかます。パァン! と鋭い音が鳴り、げんそくんは完全にグロッキーを起こした。
膝から崩れ落ち、鳶尾の足元にドンガラガッシャンと倒れこむ。
「そこまで! 上出来だ、鳶尾。元素の変化にも、良く対応できていたぞ」
「ありがとうございます」
鳶尾はふふんと鼻を鳴らすと、列へ戻った。お追従マン二人が、わっと駆け寄って「すごかった」って褒めてる。
まあ確かに、すげえよな。
俺、元素の対応とか言われても、わかんねえし。やな奴だけど、やっぱ魔法も出来るんだよなーあいつ。
しかし、思ってたよりハードな授業だぞ。柔道の授業ならしたことあっけど、それでいけるかな。
「次、吉村! 行ってみるか?」
ぼーっとしてたら、先生に指名された。
「黒なのに、出来んのか?」とかひそひそ聞こえてくる中を、「どうもどうも」のポーズで前に出る。
「お願いします!」
よくわかんねえけど、やるしかねえ。
俺は、ムンと構えてげんそくん三号に向き合った。その顔面には、今は青い光が灯っている。
「では、はじめ!」
先生の合図で、げんそくんが向かってきた。鳶尾の時と違って、蛇行するような走りで、そんなに速くない。
俺も飛びだして、げんそくんの襟(は無いから、肩)に手を伸ばす。先手必勝! と肩と腕を取った。
「おりゃっ!」
思いっきり踏み込んで、逆の足でげんそくんの足を刈る。そのまま、全体重をかけて、げんそくんを押し倒した。
どふっ! と二人? して床に倒れこむ。
「どうだ?!」
が、げんそくんは、ピンピンしてた。下から打たれたすげえキックが、俺の腿にぶち当たる。
「ぎゃっ!」
超、痛え!
ふっとばされて、床をゴロゴロ転がった。太ももがジンジンする。
げんそくんは、てくてく近づいてくる。見上げた顔の光が、暗褐色に変化してた。
俺は、ファイトを湧き起こし立ち上がる。走り込みで鍛えた足、なめんな。げんそくんに突進し、肩を掴む。そして、
「あれっ」
ぎょっとする。
力一杯押しているのに、げんそくんは岩みてえにびくともしねえ。
あわあわと跳ね回っていると、クラスメイトが「わははは」と爆笑する。ひでえ。
と、げんそくんが俺の腕をはっしと掴んだ。そのまま、背中の上に背負い込んでくる。
あ、やべえ! て思ったときには、視界がグルンて回ってて。俺は、ズダン! と床に背中を打ちつけた。
「そこまで!」
葛城先生が、駆け寄ってきた。
「こら吉村、普通に格闘してどうする。魔力のコントロールが全然できてないじゃないか」
「あたたたた、すんません」
「まったく、この単元も補習だからな」
「うす。あたた」
先生に助け起こされて、医務室送りになった俺。
すれ違い様に、鳶尾達が「低レベルすぎて、嫌になるね」って呟いたのが聞こえた。
まあ、最初っから、上手くいくもんじゃねえけどさ。全然相手にならんくて、悔しいな。
昼休み終了のチャイムが鳴る。
別々に帰った方がいいってことで、俺が先に帰ることになった。
「またね、トキちゃん」
「おう、またなイノリ」
教室の中から、イノリがにこにこと手を振っている。俺も手を振り返した。
静かな廊下をずんずん歩きながら、俺は「くふふ」と笑いがこみ上げてきた。
イノリと、久々に話して、飯を食った。
で、明日からの昼休み、あそこに行けばイノリに会えるわけで。それが、めっちゃ嬉しい。
イノリと離れてたこのひと月、やっぱ寂しかったんだよな。
だってさ、今までずっと一緒にいたんだし、当然、ここでもそうだって思ってたから。
『生徒会に入ったのは……ちからが欲しかったから』
イノリの言葉が甦り、俺はピタッと足を止める。
305教室を振り返って、中にいるイノリを思った。
『俺は、転校したての未熟な紫だから、標的にされたっぽいんだよね』
俺がぼーっとしてるうちに、一人で闘っていたイノリ。毎日、決闘だって追い回されて、どんだけ不安だっただろう。
あいつ、親のことといい、俺にそういうの言わねえんだな。
「俺、もっとちゃんとしねえと」
別にさ。
イノリは、俺に言ってもしょうがねえとか、思ってるわけじゃねえと思う。でも、やっぱダチには頼られてえもんな。
なんつって、決意新たに迎える午後の授業。
今日は、武道館に集まって魔法バトルの実技をするらしい。
転校してから、魔法の基礎理論ってのをずっとやっててさ。魔法バトルみてえな授業は初めてで、ちょっと楽しみだ。
「いいか。魔法バトルを学ぶと言っても、一年のきみ達がまず修めるべきは、魔力のコントロールだ」
ジャージに着替えた葛城先生(やはり短パン)が、小脇に抱えたマネキンを床に置く。
「あくまで、バトルの形式で魔力のコントロールを学ぶのが、この授業の主眼だ。置かれた状況に対し、臨機応変に魔力の操作を行うのは、魔法バトルの基礎能力だが、体得するのは難しい。で、今日は、この「げんそくん三号」を使って、それを体感してもらう」
そう言うと先生は、マネキン改めげんそくん三号の背中のボタンを押した。のっぺらぼうの顔の真ん中に、丸くてでっかい石がはまってて、そこにポウッと赤い光が灯る。
「げんそくん三号は、風・火・水・土の四元素を宿していて、ランダムに元素の強さを切り替えることができる。今は、火の元素が強い状態になっているな。これを倒すにはどうしたらいいか……。理論で散々やったから、皆わかるものと思う。さて、今から一人ずつ、げんそくん三号と二分間バトルを行ってもらうぞ」
葛城先生はすらすらと説明を終えると、鳶尾を前に呼び出した。見本をするよう言われて、鳶尾は誇らしげに胸を張った。
「はい。先生、お願いします」
鳶尾は、げんそくん三号と向き合った。
「では、はじめ!」
葛城先生が、開始を合図する。
と、げんそくん三号は、人形と思えねえ動きで床を蹴り、鳶尾に向かって行く。
接近すると、腕をぶんとしならせて、鳶尾の顔面にビンタをくりだした。
鳶尾は、ボクサーのように頭を低くしてよける。そのまま一歩前に踏みこむと、固いどてっぱらに拳をお見舞いする。
バスっと重い音がして、げんそくんがよろけて下がった。殴られて仰のいた顔面の光が、暗褐色に変わる。
鳶尾は慌てず、軽快なフットワークを刻みつつ詠じた。
「我が身に宿る風の元素よ、風より疾くボクを動かせ」
鳶尾の全身が、淡い金の光に包まれる。
風を切って猛進すると、げんそくんの鼻っ面にビンタをぶちかます。パァン! と鋭い音が鳴り、げんそくんは完全にグロッキーを起こした。
膝から崩れ落ち、鳶尾の足元にドンガラガッシャンと倒れこむ。
「そこまで! 上出来だ、鳶尾。元素の変化にも、良く対応できていたぞ」
「ありがとうございます」
鳶尾はふふんと鼻を鳴らすと、列へ戻った。お追従マン二人が、わっと駆け寄って「すごかった」って褒めてる。
まあ確かに、すげえよな。
俺、元素の対応とか言われても、わかんねえし。やな奴だけど、やっぱ魔法も出来るんだよなーあいつ。
しかし、思ってたよりハードな授業だぞ。柔道の授業ならしたことあっけど、それでいけるかな。
「次、吉村! 行ってみるか?」
ぼーっとしてたら、先生に指名された。
「黒なのに、出来んのか?」とかひそひそ聞こえてくる中を、「どうもどうも」のポーズで前に出る。
「お願いします!」
よくわかんねえけど、やるしかねえ。
俺は、ムンと構えてげんそくん三号に向き合った。その顔面には、今は青い光が灯っている。
「では、はじめ!」
先生の合図で、げんそくんが向かってきた。鳶尾の時と違って、蛇行するような走りで、そんなに速くない。
俺も飛びだして、げんそくんの襟(は無いから、肩)に手を伸ばす。先手必勝! と肩と腕を取った。
「おりゃっ!」
思いっきり踏み込んで、逆の足でげんそくんの足を刈る。そのまま、全体重をかけて、げんそくんを押し倒した。
どふっ! と二人? して床に倒れこむ。
「どうだ?!」
が、げんそくんは、ピンピンしてた。下から打たれたすげえキックが、俺の腿にぶち当たる。
「ぎゃっ!」
超、痛え!
ふっとばされて、床をゴロゴロ転がった。太ももがジンジンする。
げんそくんは、てくてく近づいてくる。見上げた顔の光が、暗褐色に変化してた。
俺は、ファイトを湧き起こし立ち上がる。走り込みで鍛えた足、なめんな。げんそくんに突進し、肩を掴む。そして、
「あれっ」
ぎょっとする。
力一杯押しているのに、げんそくんは岩みてえにびくともしねえ。
あわあわと跳ね回っていると、クラスメイトが「わははは」と爆笑する。ひでえ。
と、げんそくんが俺の腕をはっしと掴んだ。そのまま、背中の上に背負い込んでくる。
あ、やべえ! て思ったときには、視界がグルンて回ってて。俺は、ズダン! と床に背中を打ちつけた。
「そこまで!」
葛城先生が、駆け寄ってきた。
「こら吉村、普通に格闘してどうする。魔力のコントロールが全然できてないじゃないか」
「あたたたた、すんません」
「まったく、この単元も補習だからな」
「うす。あたた」
先生に助け起こされて、医務室送りになった俺。
すれ違い様に、鳶尾達が「低レベルすぎて、嫌になるね」って呟いたのが聞こえた。
まあ、最初っから、上手くいくもんじゃねえけどさ。全然相手にならんくて、悔しいな。
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