「いつでも僕の帰る場所」短編集

高穂もか

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♡宏ちゃん、お背中流します!【後編】

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「や……あぁっ」
 
 宏ちゃんのお膝の上に座って、ぼくは裸身を捩った。
 
「ほら、動くな。洗えないだろ?」
「あっ!」
 
 注意するみたいに、後ろからきゅっと胸を揉まれる。
 
「だって……そこばっかり恥ずかしい」
「駄目。胸が凝ってると、リラックスできないぞ」
 
 何処かで聞いた台詞を囁かれ、涙目になる。
 
 ――わーん! 宏ちゃんにリラックスしてもらうはずやったのに……!
 
 服をぽんって脱がされたと思うと、「お返しに洗ってやる」って言われて。
 でも、これ洗うって言うより揉んでるよね!!?
 
「あ……っ、くぅ」
 
 両脇から寄せるように、ぎゅっと揉みあげられる。こんな貧相で、触ってて楽しくないと思うんやけど……宏ちゃんはせっせと薄っぺらいお肉をほぐしてくれる。
 
 ――でも……恥ずかしいのにっ……ぬるぬるで、きもちいい……
 
 大きな手に包まれてると、体がポカポカしてくる。ハアハアって、短い息を吐いていると、
 
「ひゃんっ!」
 
 胸の真ん中を、揃えた指がにゅるにゅると通り過ぎる。……撫でられてるだけなのに、気持ちいい。胸が内側から、ふわふわしてくるみたい。 
 厚い胸に凭れると、宏ちゃんは嬉しそうに言う。
 
「うん。成の胸、やわらかくなってきた……けっこう、凝ってるなあ」
「あ……! んん、そう……? 自分じゃあんまり……」
「いつも、頑張ってくれてるもんなー。よく揉んどかなくちゃ」
「ふあっ」
  
 大きな手できゅ、きゅって揉まれる。最初より柔らかくなったからなのか……宏ちゃんの指の間で、ふんわりとお肉が盛り上がってる。
 
 ――あ……胸が熱い……っ。じんじんして……
 
 頭がぽうっとする……
 気持ち良くて、体から力が抜けちゃう。耳元で、低く笑う声がした。
 
「可愛い。ここ、凄く尖ってる」
「いや……言わんといてぇ……」
 
 かあ、と頬が火照る。胸のてっぺんの……二つの粒が真っ赤になって、ふくらんでる。
 
 ――やだ……触って、って言うてるみたい。
 
 恥ずかしい。
 見てらんなくて、きつく目をつぶると、かしゅってポンプを押す音がした。宏ちゃんが、ボディソープをたっぷりと泡立てて……ぼくの胸を泡で覆いはじめる。
 
「あ……あぁんっ」
 
 ふわふわの泡が先端をすべるたび……大げさなほど、震えてしまう。
 二本の指で、脇の下をぬるぬるなぞりあげられて、恥ずかしい声が止まらない。
 
 ――はぐらかしてる? そこっ……触ってほしいのに……
 
 もどかしいよぅ。
 思わず、宏ちゃんを振り返ると、くすりと笑われた。ぬるぬるって、あばらの上を撫でられて――ぴん、と二つの尖りを弾かれた。
 
「ひぁんっ……!」
 
 ぼくの声が、エコーする。
 
 ――お、お風呂場~っ……!!
 
 ぼふ、と耳まで燃え上がった。
 恥ずかしすぎて涙目になっていると、宏ちゃんがぎゅうと抱きついてきた。
 
「かーわいい。もっと聞かして」
「あ……ゃんっ。だめーっ」
 
 くねくね身を捩って、いたずらな指から逃げようとする。でも、宏ちゃんは笑いながら、羽交いに抱いてきて。長い腕の余りで届いた指先が、ぼくの胸の先をきゅうと摘まんで、放してって弄ぶ。
 
「ひあっっ……やん!」
 
 おっきい声が、何度も出ちゃう。
 いやいやって頭を振るのに、宏ちゃんは全然やめてくれない。
 
「もおっ! 宏ちゃんの、いじわる……ぅ!?」
 
 じたばたと、前のめりになった拍子に、お尻を後ろに突き出してしまった。ぎゅむ、ってお尻の狭間に凄いものが食い込んで、ぼくはピタリと動きを止める。
 
「んっ……」
 
 宏ちゃんが、低く息を詰めた。熱い息が耳をくすぐって、唇が震える。
 
「ひぇ……」
 
 ぼくは止せばいいのに、おずおずとお尻を揺する。
 火のついたこん棒みたいに熱くって、お尻を押し返す程、たくましい。……その正体に感づいて、これ以上できないほど真っ赤になってしまう。
 
「あーあ。悪戯っ子だなぁ」
「ご、ごご、ごめんなさ」
 
 おろおろと謝ると、奇麗な顔が近づいて来て――ちゅっとキスされる。軽く啄まれた後、緩んだ唇の中に、舌が潜り込んできた。
 
「ん……ふっ」
 
 やさしく舌を吸われて、とろけていると……グイと腰を抱かれる。
 
「あふっ?」
 
 すり、と熱いものがお尻の谷間を擦り、目を見開く。
 宏ちゃんは、ぎゅっとぼくを抱いて、言った。
 
「じゃあ、そろそろ良いか?」
 
 熱っぽい声に、お腹の奥がきゅんと痺れたのが、わかった。
 
 
 □□
 
 
「あ……あぅ」
 
 浴槽のヘリに上体を預け、四つん這いになった成は、甘い呻き声を漏らす。
 俺は、細い腰を掴み、太ももの間に自身を擦り付けていた。成の太ももに残った泡のおかげで、ぬるぬると滑りが良い。
 
「成の肌、やわらかいな。気持ちいい……」
「んっ……うれしい」
 
 ちょっと振り返った成が、恥ずかしそうに笑む。俺に向かってお尻を突き出す姿のせいか、白磁の肌が桃色に上気している。
 
 ――エロい。エロすぎるぞ、成。
 
 採光の良い風呂場では、綺麗な体の全てが見えた。
 華奢な背から、細い腰に向けての美しいウェーブ。いたずら心で、逆ハート形のお尻を左右に開くと、成は甘い声を上げた。
 
「あぁっ……」 
「成。綺麗だ……」
 
 桃色のアヌスに、ふっくらと盛り上がった生殖弁。花の蕾のように品の良い性器にいたるまで、丸見えだ。
 成はお尻の頬まで真っ赤にして、いやいやと頭を振った。
 
「だめっ。そんなとこ見ないで」
「嫌だ」
「いや!?」
 
「がーん」って顔をした成に、にやりと笑いかける。
 
「成。男ってのは、駄目って言われるとしたくなるんだよ」
「そんなの初めて聞いたもん~!」
 
 成の抗議をいなし、俺は両手に握った柔肉を揉む。ぬるぬると腰を送ると、成は「ああ」と切なそうに喘いだ。
 
「あ……ぁんっ。ふぅ……!」
 
 良い眺めな上、しなやかな太ももにきつく挟まれて、気持ちいい。
 
「……成のここ、凄く熱い」 
「あぅ!」
 
 股の間、ぷるぷる揺れていた花蕾を、俺のもので擦り上げた。
 
「そこ、擦っちゃやだ。いっちゃう……」
「なら、もっとしなきゃな~」
「やあぁ」
 
 逃げようと揺れる尻を押さえ、腰を打ち付けてやると、ぐちゅぐちゅと粘着質な音が響く。成は浴槽にしがみついて、甘い声で悶えた。
 
「ふあっ、あぁんっ……宏ちゃんの、あつい……」
 
 華奢な股の間で、俺のグロテスクなものと成の可愛らしいものが、白い雫を泡立たせ、縺れあう。時折、生殖弁を先端で捏ねてやると、ふっくらと赤みを増した其処が、甘い香りを放つ。まるで、熟する前の木の実が、鳥を誘うような……とんでもなくエロくて、背筋がぞくりと慄えた。
 
 ――可愛いなあ、成の体。どこもかしこも……
 
 興奮に乾いた唇を、ぺろりと舐める。
 前に手を回して、性器を包み込む。「ひ、」と小さく悲鳴を上げる妻を宥め、蜜を零す鈴口を、指先でくるくると撫でれば……びくんと華奢な体が硬直した。
 
「やぁあん……っ」
 
 甘い声を響かせて、成は何度もお尻を震わせた。無意識にか、ぎゅうぎゅうと太ももを引き締めて、俺のを道連れにしようとする。
 
「ああっ、うぅ……」
「……くっ」
 
 奥歯を噛みしめて、快楽に耐えながら――性器に、とろとろと熱いものが滴るのを感じていた。
 成は、よほど深く感じ入ったのか、床にぺたんと座り込んでしまう。
 
「ああ……ぼく、先に……」
「可愛いかったよ」
 
 俺は、浴槽のヘリに突っ伏した成の、頬にキスを落とす。鼻や、唇にも……慰めるようにたくさん。
 
「んっ、宏ちゃ……」
 
 慎み深い成は、果てやすい体を恥ずかしがるが、俺はとてもかわいいと思う。そもそも、オメガの体は数多の子孫を残すという宿命に耐えるため、とても感じやすく出来ているので、自然の摂理だ。
 よしよしと頭を撫でてやると、可愛い笑顔が戻った。
 
「宏ちゃん、大好き」
「俺も」
 
 振り返った成が、両腕を伸ばし、抱きついてくる。膝の上に乗せて、抱きしめると……ふわり、と和やかな甘い香りが漂う。俺の肩口に頬を寄せ、成がくすくす笑った。
 
「えへへ……いい匂い」
 
 安心しきった声音に、胸がきゅんと疼く。
 
 ――なんで、こんなに可愛いんだ……?
 
 小さい頭を抱き寄せて、ぐうと唸る。
 押し倒して、めちゃくちゃにヤりたい衝動がこみ上げてくるが……愛情で、きちんと歯止めをかける。俺は、可愛い成に、無体はせん。官能小説じゃあるまいしな。
 牙が伸びて、うるさい口の中をもごもごしていると、成がはっと目を上げる。
 
「あのね、宏ちゃん」
「ん?」
「えと……続き、して欲しい……」
 
 耳元に、恥ずかしそうに囁かれた。
 思いかけない成からの誘いに、頭がカッと熱くなる。
 
「……えッ?」
「だって。宏ちゃんの、まだやろ? ……ぼく、まだ出来る」
 
 ぎゅっと身を寄せて、成はおずおずとお尻を揺らす。――滾ったままの俺のものが、やわらかい双丘に触れ、勢いを増した。
 
「ちょ……無理するな。直に治まるから!」
「だめっ。ぼく、今日はいっぱい、リラックスさせてあげたいねんっ。宏ちゃんの奥さんとして……!」
 
 成は、真っ赤な顔に決意を漲らせている。その背後に炎の幻が見えた。
 
「こら、まずいって! 俺がどれだけ我慢してると……!」
 
 焦る俺に、成は顔を寄せ――ちゅっと可愛らしいキスをした。
 
「我慢しないで。いっぱいして……」
 
 成は、キスを深くする。尖った牙が、ふにりと柔らかな唇に沈んだ瞬間……理性がドカンと噴火した。
 
 
 
 □□
 
「ぁう……」
 
 ベッドに横たわり、ぼくは呻く。
 傍らの宏ちゃんが、ぱたぱたと団扇で扇いでくれた。
 
「ごめんな。やりすぎちまって……」
「ううん……いいの。ぼくがお願いしたんやし」
 
 にっこりするぼくに、宏ちゃんがしゅんと眉を下げる。”さっき”までの激しさと打って変わった様子に、きゅんとしちゃう。
 
 ――……宏ちゃん、凄くエッチやった……
 
 二回目をお願いしてからの行為を思い出し、頬が赤らむ。
 お尻はおモチになっちゃったかってくらい、大きな手で捏ねられて、宏ちゃんので色々されちゃったん。それに……後ろにぴったりと押し付けて、たくさん出されて。中に貰ったみたいに、どきどきして……すごく感じちゃった。
 
「……っ」
 
 思い出しただけで腰が甘くざわめいて、恥ずかしくなる。「もう無理」って泣くくらいしたのに、いやらしい。
 
「ね、宏ちゃん……リラックスできた?」
 
 ぼくは、おほんと咳払いし、宏ちゃんに尋ねる。今回の、「目的」が果たせたか、確かめたくて。
 
「ああ。すごく」
「良かったぁ」
 
 ホッと息を吐く。宏ちゃんの顔は、たしかにスッキリして見えるかもしれない。

「お前のおかげだよ。うだうだ悩むよりぶつけろ、だと解った」
「ほんとう?」
 
 良くわからへんけど、ちょっとお役に立てたのかなって、嬉しくなる。ぼくは、ころんと寝返りをうち、大きな手を握った。
 
「小説、書けそう?」
「ああ。凄いのを書く」
「楽しみ!」
 
 心にぱっと花が咲いた。
 自信のある宏章先生の笑みが、何よりの報酬やなあって、ぼくもにっこりした。
 
 
 
 
 
 
 ◆おまけ
 
 
「先生、お疲れさまです! 相変わらずエロエロで最高でしたよ」
「ははは、良かったです。久々だったんで、牙が抜けてないかと心配だったんですが」
「いえいえ。新婚おさな妻を眠らせて調教、ぐっときました。でも、珍しくハッピーエンドでしたね。いつも病み系快楽堕ちなのに」
「そりゃ――僕も、結婚しましたからね。幸せなんですよ、最高に」
 
 
(完)
 
 
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