いつでも僕の帰る場所

高穂もか

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最終章〜唯一の未来〜

三百七話

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「あああ……っ!」
 
 貫かれる衝撃に、ぼくは悲鳴を上げた。
 
 ――入ってくる……!?
 
 狭い場所を押し拡げられ、すさまじい圧迫感が襲ってきた。宏ちゃんのが、ゆっくりと奥に沈んでくる。
 
「あ、あうぅ……!」
「成、凄く狭い……」
 
 ぼくの腰を抱え、宏ちゃんが熱い息を吐く。
 カーペットに投げ出した四肢が、ひとりでにぶるぶる震えてた。……”おまじない”の効果なのか、からだに力が入らへん。そのぶん、余計な抵抗も出来なくて、宏ちゃんのなすがまま貫かれちゃう。
 
「や、あああ……こわい……」
 
 お腹の中に、火があるみたいだ。
 熱くて、逞しくて……ぎちぎちに広げながら、宏ちゃんは悠々とぼくの中を占拠してく。……どれほど、宏ちゃんが手加減してくれていたか、思い知る。
 
 ――苦しいぃ……息が出来ないよぉ……!
 
 開きっぱなしの唇が、ひっひっ、と空を噛む。
 
「成、怖がるな……ゆっくり息をして……」
「あっ……ふぐぅ……」
「ほら、俺に合わせて。吸って、吐いて……な?」
 
 宏ちゃんが、汗と涙でぐしょぐしょの頬を包む。優しい声に導かれるよう、ぼくは必死に呼吸を繰り返した。はふはふと息を吐いているうちに……圧迫感に慣れて、腰がずんと甘く痺れてくる。
 
「ふああ……」
 
 本当にゆっくり、ゆっくりと腰が進んできて……ついに、最奥に高ぶりを感じた。
 
「あっ、あぁん……ひろちゃ……っ」
「ああ……こんなに奥まで、俺を受け入れてる……凄いよ、成」
 
 心から嬉しそうに、宏ちゃんが言う。
 
 ――ぼく、ちゃんと出来たんだ……
 
 胸のうちに、爆発的な安堵と喜びが溢れる。笑った拍子に、目尻から涙が伝い落ちた。
 
「嬉しいよう……だいすき、宏ちゃんっ」
「俺も、成を愛してるよ」
 
 涙に濡れた頬を、ちゅっちゅっと啄むようにキスされる。ぼく達はくすくす笑い合って、しばらくじっと抱きしめ合った。
 
 



 
「苦しくないか?」 
「あっ……は、い……」
 
 宏ちゃんは、ぼくが落ち着くまで抱きしめて、髪を撫でてくれていた。
 
 ――あったかい……
 
 広い背に手を回し、深いため息を吐く。
 抱きしめられて、密着する肌も。受け入れている場所も……隙間なくぴったりと寄り添ってる。こんなに近くに、宏ちゃんを感じたことない。
 
「んん……っ」
 
 それに……お腹の奥にある宏ちゃんの、火のような感触。奥まで貫かれる苦しさも、じんじんした熱が浸透してきて……そこから、甘い疼きが広がり始めた。
 じっとしているだけで、息が上がってしまう。
 
「ひろちゃ……もう、動いてぇ」
 
 未知の感覚が怖くて、宏ちゃんに乞う。
 
「いいの?」
「うんっ……宏ちゃんも、気持ち良くなってほしい……」
 
 背にまわした手に力を込めると、宏ちゃんが息を詰めた。圧迫感が強くなり、「あっ」と呻いた瞬間……ゆっくりと、腰が引かれ始める。
 
「ああっ」
「お前は……っ。何で、そんなに可愛いんだ……?」
 
 くちゅくちゅと、淫らな水音を立てながら、中が擦られる。甘い快感が腰骨を震わせて、ぼくはのけ反った。
 
「や、あっ、ああ……!」
「……痛くないな?」
「うん、うんっ……」
 
 セクシーな声に尋ねられ、夢中で頷く。
 痛くない。むしろ、圧迫感さえ心地好くて……ぼくは、どうかしちゃったのかなって、怖くなる。 
 狭い内側をかき乱すように、宏ちゃんが動くたび、汗が噴き出した。
 
「あっ……あぁっ!」
 
 初めてなのに、あんなに痛かったのに。
 はしたない声が、とめどなく部屋中に響いてしまう。宏ちゃんが覆いかぶさってきて、身体を折りたたまれると……ますます深くまで受け入れてしまう。
 
「ひろちゃ、あっ……あああっ……!」
 
 喜びが全身を駆け抜けて、蕾から蜜が噴き出した。
 
「可愛い……いっちゃったな」
 
 嬉しそうに囁かれ、恥ずかしさに頭を振る。
 と……白く汚れた胸に、大きな手が這う。つんと尖った先端を優しく摘まれて、涙が溢れた。ぬるぬると転がされて、激しく悶えてしまう。
 
「やああっ、そこはだめぇ……」
「どうして? 良さそうだけどな」
「ああ……っ」
 
 宏ちゃんは、とても楽しそうにぼくを奏でる。
 深くつながったまま、体のあちこちを愛撫されて……宏ちゃんのための楽器になったみたい。
 今まで、ふたりで重ねた夜のうち……今が一番、遠慮がない。
 
 ――あ。なにか、はじけちゃう……
 
 熱く堅いものが最奥を穿つたびに、お腹の奥に熱いうねりが起きる。目の前が真っ白になりそうで、怖くて……ふらふらと頭を振ると、宏ちゃんに抱きしめられた。
 
「成、愛してる……」
「……っ」
「側に居るから」
 
 熱い吐息が、唇に触れる。
 優しいキスに、恐怖が遠のいていく。

 ――一緒なら、だいじょうぶ……

 ぼくは、宏ちゃんに縋りついて、安堵の涙をこぼした。
 
「ひろにいちゃん、すき……もう、はなさないで……!」
 
 ゆらゆらと揺さぶられているうちに、熱い波に思考をさらわれて……もう自分が何を言っているのかわからない。やがて、幾度目かの、快楽の高みに追いやられたとき――
 
「……成!」
 
 宏ちゃんが低く呻いて、ぼくをきつく抱きしめた。
 体の奥で、熱い迸りを受けて――目の前が、真っ白になる。

「あああ……っ!」

 がくがくと震える体さえ檻のような腕に抱き留められ、叫びながら達してしまう。魂ごと放り出されるような感覚。噎せるほどの森の香りが、ぼくを繋ぎとめる。
 
「――もう離さない……お前は、俺のものだ」

 熱い、焦がれるような声を最後に、ぼくの意識は途切れた。

 
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