283 / 346
最終章〜唯一の未来〜
二百八十二話
しおりを挟む
ぼく達は、原稿展の開催される軌跡社に向かった。
開催中は駐車場がいっぱいになるので、少し離れた二十四時間パーキングに車を停めて、歩いていく。
「どうしよ。生原稿、緊張してきた……」
どきどきと高鳴る胸を押さえると、宏ちゃんが眉を上げた。
「何でだよー。お前もよく知ってるだろ?」
「知ってるけど、違うのっ」
ヒグラシの声のする道を、散歩がてら行けば、すぐに看板が見えてきた。
「いらっしゃいま、せ……?」
「大人二枚ください」
受付のお姉さんが、宏ちゃんを見てぎょっとした顔にならはる。宏ちゃんは何食わぬ顔で、指を二本たてた。
入り口で入場料を払い、整理券と目録をもらうと、駐車場まで伸びた列の最後に並ぶ。暑さ対策のため、順路沿いに張られたテントの下のお客さんたちの顔は、汗に濡れながらも期待に輝いている。
ぼくもわくわくしながら、宏ちゃんにくっついて目録を開いた。
「楽しみやねえ。どこが気になる?」
「そうだなあ。俺はフグマンボウ先生のとこかな」
「あっ、いいよね! たしか、新しい画集も出るんやんな」
フグマンボウ先生は、幻想的な作風のイラストレーターさんで、全章の表紙を描いてくれてはる人なん。最近は、大人向けの絵本も描いてはってね、ぼくも大好き。
――軌跡社は桜庭先生をはじめ、素敵なクリエイターさんが沢山いらっしゃるもんね。まわり切れるかなあ。
真剣に目録を眺めていると、汗ばんだ頬がさあっと涼しくなる。宏ちゃんが、ハンディファンで風を送ってくれていた。
ぼくは、にこっとする。
「ありがと、宏ちゃん」
「いや」
宏ちゃんはぼくの肩を抱くと、そっと背を屈め、耳打ちした。
「人が多いから、俺から離れない様にな」
優しい声音から、抑制剤をやめているぼくへの心配が、伝わってくる。
――宏ちゃん、優しいな。
ぼくの体調では、本当は人の多い場所は避けるべきなんやと思う。でも、ぼくが楽しみにしていたから、無理を押して連れてきてくれたんよね。
ぼくは、小声で「大丈夫」と囁きかえした。
「香り止め、いやってくらい塗って来たから。宏ちゃんの時計も借りてるし」
真黒いがっしりした腕時計をつけた、手首を示す。宏ちゃんのお気に入り――今朝、「着けとけ」って巻いてくれたの。
アルファの私物を身に着けると、他の雄への牽制になるそうなん。番で仲良くしてると、オメガの危険が減るのはそのおかげなんやねえ。
「ね。仲良しの証」
にっこりすると、宏ちゃんも笑ってくれた。
またページをめくると、桜庭先生の作品目録が出てきた。……生原稿と、それにまつわる制作秘話。百井さんの雑記帳。気になる展示を次々とチエックする。
「……あっ!?」
ある展示を見て、ぼくは目を瞠った。
――さ、桜庭先生の、新作の先読み?! しかも、恋愛もの~!?
そんな原稿、ぼく知らない!
大慌てで、発売予定日を見て……「あっ」と息を飲む。
――六月の、原稿……
六月下旬の、立て込んでいた時期。……あのころは、宏ちゃんのお仕事も手伝えなくて。百井さんが大変苦労して、原稿の清書をして下さったって聞いた。
――『俺は、お前との婚約を破棄する』
ふいに、苦しい記憶が甦ってくる。
陽平とダメになっちゃって、行く当てもなかった。なんで、嫌なことって繰り返すんやろうって、怖くてたまらへんかった――
「成?」
「……!」
宏ちゃんが、ぼくを見つめている。ぼくの異変を、少しも見逃さない……探偵さんの目。
じわじわと、胸の奥が温かくなる。
――宏ちゃんが迎えに来てくれたから……今はほんとうに幸せや。
逞しい腕に、頬をくっつける。宏ちゃんのことだ。ぼくに思い出させたくなくて、言えなかったんやと思う。
だから、このブースは絶対に行こう、とペンで大きく丸を付けた。
宏ちゃんの作品が……宏ちゃんが、大好きやもの。
「わーっ、すごい。桜庭先生の区画、おっきい」
順番が回ってきて、会場内に入ったぼくは目を瞠る。順路で言うと、真ん中あたりにブースがあるようなのに、作品の表紙のポスターが入り口付近からも見えていた。
「宏ちゃん、はやく見に行こう」
「はいはい。はしゃぎすぎたら転ぶぞー」
ふんすと鼻息荒く手を引くと、宏ちゃんは喉を鳴らして笑う。
展示場は、ガラスケースに納められた原稿や、原画が順路を作っていて、こんなに素敵な道は通ったことが無いってくらい。ぼくと宏ちゃんは、人の流れに沿いながら、ゆっくりと鑑賞した。
「わあ。綺麗……」
撮影が禁止なので、みんな食い入るように眺めている。そういう熱気が心地よくて、一日中でも居たくなっちゃう。
「……すごいなあ」
生原稿に残る、作家さんの試行錯誤の跡。作品が売り出されるまでの過程を観て、感嘆の息が漏れる。本当に、宝石を磨くように幾人の手を渡り、丹精された作品が、ぼく達の元に届くんや、って。
あらためて、軌跡社の社員さんやクリエイターさん達の……宏ちゃんの努力の凄さを思い知る。
「うお、凄いめちゃくちゃ。読めねーよ」
「桜庭は天才だから、一発で書いてんのかと思ってた」
隣で、桜庭先生の原稿に見入っている学生さんたちを見て、頬がくすぐったくなる。
桜庭先生は、凄く速筆で知られる作家さんや。でも……さらりと書いているのを見たことがない。少しの空き時間にも、小さなノートに文章を書いて、試行錯誤を繰り返してる。
夜中にふと目が覚めると、寝床のテーブルでそっと書き物をしている背中を見たことも、一度や二度じゃなかった。
『成。悪いんだが、さっきの「無し」にしたとこ、これ足してくれるか?』
そう言って原稿用紙を渡される時の、申し訳なさそうな――でも、納得した顔を見るのが、何より好きだ。
努力家で、ひたむきで、ずっと真剣で。そんな宏ちゃんを、誰より尊敬してる。
「あー……成。そろそろ、次観るか?」
周りのお客さんの賛辞に、照れて居心地の悪そうな宏章先生に、満面の笑みで返す。
「じゃあ、新作の先行公開、行こっ」
「それは駄目だ」
「駄目!?」
ネタバレへの配慮か、少し離れて独立した区画を指さすと、宏ちゃんは笑顔で首を振った。
ぼくは、ぎょっとする。
「な、なんで? 行こうよっ」
て、手を引いても、根の生えたみたいに動かない。
「なんでもだ。まあ、恋愛ものは桜庭っぽくないし。どうでも良く無いか」
「良くなーいっ。日常パートが一番好きなの、知ってるやろっ」
大きな手を振って、(小声で)抗議していると、後ろから声をかけられる。
「せ……野江さん!」
案内役の腕章をつけた百井さんが、朗らかな笑みを浮かべていた。
開催中は駐車場がいっぱいになるので、少し離れた二十四時間パーキングに車を停めて、歩いていく。
「どうしよ。生原稿、緊張してきた……」
どきどきと高鳴る胸を押さえると、宏ちゃんが眉を上げた。
「何でだよー。お前もよく知ってるだろ?」
「知ってるけど、違うのっ」
ヒグラシの声のする道を、散歩がてら行けば、すぐに看板が見えてきた。
「いらっしゃいま、せ……?」
「大人二枚ください」
受付のお姉さんが、宏ちゃんを見てぎょっとした顔にならはる。宏ちゃんは何食わぬ顔で、指を二本たてた。
入り口で入場料を払い、整理券と目録をもらうと、駐車場まで伸びた列の最後に並ぶ。暑さ対策のため、順路沿いに張られたテントの下のお客さんたちの顔は、汗に濡れながらも期待に輝いている。
ぼくもわくわくしながら、宏ちゃんにくっついて目録を開いた。
「楽しみやねえ。どこが気になる?」
「そうだなあ。俺はフグマンボウ先生のとこかな」
「あっ、いいよね! たしか、新しい画集も出るんやんな」
フグマンボウ先生は、幻想的な作風のイラストレーターさんで、全章の表紙を描いてくれてはる人なん。最近は、大人向けの絵本も描いてはってね、ぼくも大好き。
――軌跡社は桜庭先生をはじめ、素敵なクリエイターさんが沢山いらっしゃるもんね。まわり切れるかなあ。
真剣に目録を眺めていると、汗ばんだ頬がさあっと涼しくなる。宏ちゃんが、ハンディファンで風を送ってくれていた。
ぼくは、にこっとする。
「ありがと、宏ちゃん」
「いや」
宏ちゃんはぼくの肩を抱くと、そっと背を屈め、耳打ちした。
「人が多いから、俺から離れない様にな」
優しい声音から、抑制剤をやめているぼくへの心配が、伝わってくる。
――宏ちゃん、優しいな。
ぼくの体調では、本当は人の多い場所は避けるべきなんやと思う。でも、ぼくが楽しみにしていたから、無理を押して連れてきてくれたんよね。
ぼくは、小声で「大丈夫」と囁きかえした。
「香り止め、いやってくらい塗って来たから。宏ちゃんの時計も借りてるし」
真黒いがっしりした腕時計をつけた、手首を示す。宏ちゃんのお気に入り――今朝、「着けとけ」って巻いてくれたの。
アルファの私物を身に着けると、他の雄への牽制になるそうなん。番で仲良くしてると、オメガの危険が減るのはそのおかげなんやねえ。
「ね。仲良しの証」
にっこりすると、宏ちゃんも笑ってくれた。
またページをめくると、桜庭先生の作品目録が出てきた。……生原稿と、それにまつわる制作秘話。百井さんの雑記帳。気になる展示を次々とチエックする。
「……あっ!?」
ある展示を見て、ぼくは目を瞠った。
――さ、桜庭先生の、新作の先読み?! しかも、恋愛もの~!?
そんな原稿、ぼく知らない!
大慌てで、発売予定日を見て……「あっ」と息を飲む。
――六月の、原稿……
六月下旬の、立て込んでいた時期。……あのころは、宏ちゃんのお仕事も手伝えなくて。百井さんが大変苦労して、原稿の清書をして下さったって聞いた。
――『俺は、お前との婚約を破棄する』
ふいに、苦しい記憶が甦ってくる。
陽平とダメになっちゃって、行く当てもなかった。なんで、嫌なことって繰り返すんやろうって、怖くてたまらへんかった――
「成?」
「……!」
宏ちゃんが、ぼくを見つめている。ぼくの異変を、少しも見逃さない……探偵さんの目。
じわじわと、胸の奥が温かくなる。
――宏ちゃんが迎えに来てくれたから……今はほんとうに幸せや。
逞しい腕に、頬をくっつける。宏ちゃんのことだ。ぼくに思い出させたくなくて、言えなかったんやと思う。
だから、このブースは絶対に行こう、とペンで大きく丸を付けた。
宏ちゃんの作品が……宏ちゃんが、大好きやもの。
「わーっ、すごい。桜庭先生の区画、おっきい」
順番が回ってきて、会場内に入ったぼくは目を瞠る。順路で言うと、真ん中あたりにブースがあるようなのに、作品の表紙のポスターが入り口付近からも見えていた。
「宏ちゃん、はやく見に行こう」
「はいはい。はしゃぎすぎたら転ぶぞー」
ふんすと鼻息荒く手を引くと、宏ちゃんは喉を鳴らして笑う。
展示場は、ガラスケースに納められた原稿や、原画が順路を作っていて、こんなに素敵な道は通ったことが無いってくらい。ぼくと宏ちゃんは、人の流れに沿いながら、ゆっくりと鑑賞した。
「わあ。綺麗……」
撮影が禁止なので、みんな食い入るように眺めている。そういう熱気が心地よくて、一日中でも居たくなっちゃう。
「……すごいなあ」
生原稿に残る、作家さんの試行錯誤の跡。作品が売り出されるまでの過程を観て、感嘆の息が漏れる。本当に、宝石を磨くように幾人の手を渡り、丹精された作品が、ぼく達の元に届くんや、って。
あらためて、軌跡社の社員さんやクリエイターさん達の……宏ちゃんの努力の凄さを思い知る。
「うお、凄いめちゃくちゃ。読めねーよ」
「桜庭は天才だから、一発で書いてんのかと思ってた」
隣で、桜庭先生の原稿に見入っている学生さんたちを見て、頬がくすぐったくなる。
桜庭先生は、凄く速筆で知られる作家さんや。でも……さらりと書いているのを見たことがない。少しの空き時間にも、小さなノートに文章を書いて、試行錯誤を繰り返してる。
夜中にふと目が覚めると、寝床のテーブルでそっと書き物をしている背中を見たことも、一度や二度じゃなかった。
『成。悪いんだが、さっきの「無し」にしたとこ、これ足してくれるか?』
そう言って原稿用紙を渡される時の、申し訳なさそうな――でも、納得した顔を見るのが、何より好きだ。
努力家で、ひたむきで、ずっと真剣で。そんな宏ちゃんを、誰より尊敬してる。
「あー……成。そろそろ、次観るか?」
周りのお客さんの賛辞に、照れて居心地の悪そうな宏章先生に、満面の笑みで返す。
「じゃあ、新作の先行公開、行こっ」
「それは駄目だ」
「駄目!?」
ネタバレへの配慮か、少し離れて独立した区画を指さすと、宏ちゃんは笑顔で首を振った。
ぼくは、ぎょっとする。
「な、なんで? 行こうよっ」
て、手を引いても、根の生えたみたいに動かない。
「なんでもだ。まあ、恋愛ものは桜庭っぽくないし。どうでも良く無いか」
「良くなーいっ。日常パートが一番好きなの、知ってるやろっ」
大きな手を振って、(小声で)抗議していると、後ろから声をかけられる。
「せ……野江さん!」
案内役の腕章をつけた百井さんが、朗らかな笑みを浮かべていた。
328
お気に入りに追加
1,402
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
Tally marks
あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。
カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。
「関心が無くなりました。別れます。さよなら」
✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。
✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。
✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。
✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。
✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません)
🔺ATTENTION🔺
このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。
そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。
そこだけ本当、ご留意ください。
また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい)
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。
➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
いっそあなたに憎まれたい
石河 翠
恋愛
主人公が愛した男には、すでに身分違いの平民の恋人がいた。
貴族の娘であり、正妻であるはずの彼女は、誰も来ない離れの窓から幸せそうな彼らを覗き見ることしかできない。
愛されることもなく、夫婦の営みすらない白い結婚。
三年が過ぎ、義両親からは石女(うまずめ)の烙印を押され、とうとう離縁されることになる。
そして彼女は結婚生活最後の日に、ひとりの神父と過ごすことを選ぶ。
誰にも言えなかった胸の内を、ひっそりと「彼」に明かすために。
これは婚約破棄もできず、悪役令嬢にもドアマットヒロインにもなれなかった、ひとりの愚かな女のお話。
この作品は小説家になろうにも投稿しております。
扉絵は、汐の音様に描いていただきました。ありがとうございます。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる