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第二章~プロポーズ~
八十一話
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朝日の差し込む寝室で、ぼくはベッドで半身を起こし、宏兄と向かい合っていた。
「食べられるようになって、良かった」
宏兄は、たまごのお粥を掬いながら、笑う。ぼくは、ゆっくりと飲みこんでから、頷いた。
「うん。すっごい美味しい」
「良かった。おかわりあるからな」
「ありがとう……」
宏兄の差し出した、もうひとさじのお粥に、ぱくりと食いつく。すると、宏兄はますます嬉しそうに、目尻を下げた。
「……もぐ」
ぼくは、もくもくと頬を動かしながら、宏兄を窺い見た。いつもの穏やかな、お兄ちゃんみたいな笑顔。
――ぼく……宏兄に、プロポーズされたんよね……?
昨夜のことは、まるで、夢みたい。
だって。――お見合いするって言ったら、宏兄が「結婚しよう」って言ってくれて。なんか、勢いでぎゅってして、キスとか……いっぱい、されちゃったなんて。
――『可愛い』
熱い目に見つめられたことを思い出し、「あわわ」と内心で転げまわる。恥ずかしくて、頬がかっかした。
「どうした、熱かったか?」
宏兄は、不思議そうに首を傾げてる。
「あ……へいきっ」
ぼくは、慌てて首を振った。宏兄は、「そうか」とほほ笑んでいる。
――宏兄……本当にふつうやなあ……
あの、キスとか……宏兄はどう思ってるんやろ、と気になっちゃう。
宏兄は大人やから、ぼくみたいにオロオロせえへんってことなんやろか。
「宏兄。おかわり、もらっていい?」
「ああ! 食え、食え」
もんもんと考えてるうちに、お腹がますます減ってきちゃった。おかわりをお願いすると、宏兄は嬉しそうにお鍋からお粥を注いでくれる。
「あーん」
「もぐ……おいしぃ」
ほかほかのたまご粥の、やわらかな味わいに頬が緩む。おなかがじんわりと温まって、食べれば食べるほど、元気が出るみたいやった。
宏兄は、とても温かな眼差しで、見守ってくれてる。
――どっからどう見ても、いつもの宏兄や……やっぱり、昨日のは幻やったのかも……?
ぼくは、内心で首を捻った。
「ごちそうさまでしたっ」
「お粗末さん」
ぼくは、笑顔で手を合わせた。宏兄は、空っぽのお鍋と食器を片付けて、にこにこしてる。
「たくさん食えたな。えらいぞ」
「えへへ。つい美味しくて……」
食欲が戻ってきたから、全快も目前やと思う。宏兄もそれを知ってて、嬉しそうにしてくれるから……ぼくも嬉しかった。
「なあ、成。ちょっといいか」
お薬を飲んで、ひとごこちついたとき、宏兄が穏やかに尋ねる。
「どうしたの?」
「今日、お前との婚姻をセンターへ申し込みに行ってくる」
ぼくは思わず、湯飲みを取り落としかけた。宏兄を凝視する。
「ええっ!? ま、ま、待って。幻と違ったんっ……?」
「何だよ、幻って。俺は、お前と本気で結婚したいと思ってるぞ」
どこまでも真剣な声音に、「ひええ」と悲鳴を上げる。
――ゆ、夢やなかったんや……!
そう思うと、頬がかあっと燃えるのを感じた。嬉しくなったけど……ぼくは、ぶんぶんと頭を振る。
「あ……あかんよっ。ぼく、宏兄とは、結婚出来ひんて……」
「なんで。俺が嫌いか?」
「き、嫌いじゃない!」
悲し気に言われて、慌てて否定する。宏兄を、嫌いになるはずがなかった。
「宏兄のことは、ずっと大好きやで。でも……ぼく、宏兄のことは、ずっとお兄ちゃんやと思って来たし。宏兄だって、そうやろ?」
「……」
「食べられるようになって、良かった」
宏兄は、たまごのお粥を掬いながら、笑う。ぼくは、ゆっくりと飲みこんでから、頷いた。
「うん。すっごい美味しい」
「良かった。おかわりあるからな」
「ありがとう……」
宏兄の差し出した、もうひとさじのお粥に、ぱくりと食いつく。すると、宏兄はますます嬉しそうに、目尻を下げた。
「……もぐ」
ぼくは、もくもくと頬を動かしながら、宏兄を窺い見た。いつもの穏やかな、お兄ちゃんみたいな笑顔。
――ぼく……宏兄に、プロポーズされたんよね……?
昨夜のことは、まるで、夢みたい。
だって。――お見合いするって言ったら、宏兄が「結婚しよう」って言ってくれて。なんか、勢いでぎゅってして、キスとか……いっぱい、されちゃったなんて。
――『可愛い』
熱い目に見つめられたことを思い出し、「あわわ」と内心で転げまわる。恥ずかしくて、頬がかっかした。
「どうした、熱かったか?」
宏兄は、不思議そうに首を傾げてる。
「あ……へいきっ」
ぼくは、慌てて首を振った。宏兄は、「そうか」とほほ笑んでいる。
――宏兄……本当にふつうやなあ……
あの、キスとか……宏兄はどう思ってるんやろ、と気になっちゃう。
宏兄は大人やから、ぼくみたいにオロオロせえへんってことなんやろか。
「宏兄。おかわり、もらっていい?」
「ああ! 食え、食え」
もんもんと考えてるうちに、お腹がますます減ってきちゃった。おかわりをお願いすると、宏兄は嬉しそうにお鍋からお粥を注いでくれる。
「あーん」
「もぐ……おいしぃ」
ほかほかのたまご粥の、やわらかな味わいに頬が緩む。おなかがじんわりと温まって、食べれば食べるほど、元気が出るみたいやった。
宏兄は、とても温かな眼差しで、見守ってくれてる。
――どっからどう見ても、いつもの宏兄や……やっぱり、昨日のは幻やったのかも……?
ぼくは、内心で首を捻った。
「ごちそうさまでしたっ」
「お粗末さん」
ぼくは、笑顔で手を合わせた。宏兄は、空っぽのお鍋と食器を片付けて、にこにこしてる。
「たくさん食えたな。えらいぞ」
「えへへ。つい美味しくて……」
食欲が戻ってきたから、全快も目前やと思う。宏兄もそれを知ってて、嬉しそうにしてくれるから……ぼくも嬉しかった。
「なあ、成。ちょっといいか」
お薬を飲んで、ひとごこちついたとき、宏兄が穏やかに尋ねる。
「どうしたの?」
「今日、お前との婚姻をセンターへ申し込みに行ってくる」
ぼくは思わず、湯飲みを取り落としかけた。宏兄を凝視する。
「ええっ!? ま、ま、待って。幻と違ったんっ……?」
「何だよ、幻って。俺は、お前と本気で結婚したいと思ってるぞ」
どこまでも真剣な声音に、「ひええ」と悲鳴を上げる。
――ゆ、夢やなかったんや……!
そう思うと、頬がかあっと燃えるのを感じた。嬉しくなったけど……ぼくは、ぶんぶんと頭を振る。
「あ……あかんよっ。ぼく、宏兄とは、結婚出来ひんて……」
「なんで。俺が嫌いか?」
「き、嫌いじゃない!」
悲し気に言われて、慌てて否定する。宏兄を、嫌いになるはずがなかった。
「宏兄のことは、ずっと大好きやで。でも……ぼく、宏兄のことは、ずっとお兄ちゃんやと思って来たし。宏兄だって、そうやろ?」
「……」
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