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第27話 プレゼント(1)
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「そろそろ誕生日だよね? プレゼント、なにが欲しい?」
「え?」
伊月さんのセックスが上達して三回目のデート。
もうエッチの時間かな? というタイミングで、ソファに並んで座った伊月さんが俺の顔を覗き込む。
昨日、ファンクラブ用の誕生日記念カードの写真を撮ったから「そろそろ誕生日だな」という意識はあったけど……家族はいつもスルーだし、友達はいないし、プライベートで誕生日を祝ってもらうことなんて無いので、恋人にこんなことを言われるなんて考えもしなかった。
「え……っと……特に欲しい物はないです。伊月さん、いつも俺が欲しいって言う前になんでも買ってくれるから」
「生活や仕事に必要そうなものはね」
季節の小物や家電、取材や舞台挨拶などのための仕事用のちょっといい私服、レッスンや役作りに必要なトレーニング用のウエアや道具、イヤホン、タブレット、曲や映像コンテンツ……欲しいなと思うと自分で手に入れる前に伊月さんが用意してくれていることがほとんどだ。
スマホで使えるようにしてもらっているカードや交通系ICも遠慮なく使わせてもらっているし、生活に「足りない」ものはない。
「恋人の誕生日にあげるものの定番と言えばアクセサリーや腕時計かな? 財布なんかの常に持ち歩くものもいいよね?」
ドラマや映画の知識しかないけど、伊月さんの提案は恋人へのプレゼントとしては妥当だと思うし、俺も欲しくないわけではない。
ただ……
「どれでも嬉しいですけど、仕事柄身につけられないこともあるかもしれないので……」
意味深なアクセサリーを付けてテレビに出られるわけがないし、仕事中は時計や財布はマネージャーに預かってもらうから、身に着けている時間は……もしかしたら遠野さんの方が長くなるかもしれない。
「悩ましいね。でも、アオくんの希望が特にないなら俺が勝手に悩んで選んでいい?」
「はい。お任せしてしまってすみません」
「いいよ。こういうことで頭を悩ませるのはすごく楽しい」
伊月さんは本当に楽しそうで……でも、これ、うかつだったかな。
何か指定する方がよかった?
ヤバいプレゼントが来たらどうしよう。家とか、車とか、ものすごく重い物、来ないよね?
「当日、楽しみにしていてね、アオくん」
「あ、はい……」
一応、引き攣らない笑顔で頷けたはずだ。
◆
誕生日の翌々週。
とある映画の現場で、機材の調整なんかもあって「二時間くらい待機です! すみません!」と言われてしまった。
二時間か、どうしようかな……他の出演者の様子をうかがうと、主役のサイコパス探偵役で事務所の先輩でもあるベテラン俳優兼歌手の月島さんが大きなあくびをした。
「二時間なら俺、控室で寝させてもらう。昨日、深夜までレコーディングだったから……悪いけどギリギリまで起こさないで」
「了解です!」
「お疲れ様です!」
いつもなら俺もそう。
コンディションを整えたり、次の仕事の準備をしたり、この撮影の台本を読みこんだり。
でも、今日は……
「ねぇねぇ! 二時間あったら討伐クエスト二ついけるよね?」
「余裕だと思うよ。期間限定の武器をコンプしたいからSランクの方に行きたいな」
ご両親が超大御所俳優でこの映画が俳優デビューとなったまだ高校生のシュウトくんと、俺より三歳年上の人気アイドルグループ「five×ten」のセンターを務めているフユキさんが、マネージャーさんから携帯ゲーム機を受け取りながら撮影所の隅に置かれたベンチへ腰かける。
シュウトくんは少し天然のかわいい系、フユキさんは朝の番組のコメンテーターも務めるしっかりしたインテリ系。タイプの違う二人だけど、休憩時間は一緒のことが多い。
理由は今、二人が受け取ったゲーム機。
二人とも、日本中で流行っているモンスター討伐系ゲームにハマっているからだ。
「あ、私も混ぜて。仕事が詰まっていて限定クエスト全然できていないの」
「もちろんですよ!」
「ぜひぜひ」
俺たちより十歳近く年上のベテラン女優、上川ナツコさんもその輪に入る。
見た目はおしとやかな清楚系美女なのに、ゲームやアニメが好きな人で、そういう親しみやすいところが人気らしく、SNSのフォロワーは日本の女性芸能人で一番多い。
仕事仲間として、三人とも尊敬しているし、仲良くしておきたい人たちだ。
でも、俺は友達を作ることに慣れていなくて、こういう時に仲が悪くなることはなかったけど「仕事仲間」以上の距離感になることはなかった。
だけど今日は……
「え?」
伊月さんのセックスが上達して三回目のデート。
もうエッチの時間かな? というタイミングで、ソファに並んで座った伊月さんが俺の顔を覗き込む。
昨日、ファンクラブ用の誕生日記念カードの写真を撮ったから「そろそろ誕生日だな」という意識はあったけど……家族はいつもスルーだし、友達はいないし、プライベートで誕生日を祝ってもらうことなんて無いので、恋人にこんなことを言われるなんて考えもしなかった。
「え……っと……特に欲しい物はないです。伊月さん、いつも俺が欲しいって言う前になんでも買ってくれるから」
「生活や仕事に必要そうなものはね」
季節の小物や家電、取材や舞台挨拶などのための仕事用のちょっといい私服、レッスンや役作りに必要なトレーニング用のウエアや道具、イヤホン、タブレット、曲や映像コンテンツ……欲しいなと思うと自分で手に入れる前に伊月さんが用意してくれていることがほとんどだ。
スマホで使えるようにしてもらっているカードや交通系ICも遠慮なく使わせてもらっているし、生活に「足りない」ものはない。
「恋人の誕生日にあげるものの定番と言えばアクセサリーや腕時計かな? 財布なんかの常に持ち歩くものもいいよね?」
ドラマや映画の知識しかないけど、伊月さんの提案は恋人へのプレゼントとしては妥当だと思うし、俺も欲しくないわけではない。
ただ……
「どれでも嬉しいですけど、仕事柄身につけられないこともあるかもしれないので……」
意味深なアクセサリーを付けてテレビに出られるわけがないし、仕事中は時計や財布はマネージャーに預かってもらうから、身に着けている時間は……もしかしたら遠野さんの方が長くなるかもしれない。
「悩ましいね。でも、アオくんの希望が特にないなら俺が勝手に悩んで選んでいい?」
「はい。お任せしてしまってすみません」
「いいよ。こういうことで頭を悩ませるのはすごく楽しい」
伊月さんは本当に楽しそうで……でも、これ、うかつだったかな。
何か指定する方がよかった?
ヤバいプレゼントが来たらどうしよう。家とか、車とか、ものすごく重い物、来ないよね?
「当日、楽しみにしていてね、アオくん」
「あ、はい……」
一応、引き攣らない笑顔で頷けたはずだ。
◆
誕生日の翌々週。
とある映画の現場で、機材の調整なんかもあって「二時間くらい待機です! すみません!」と言われてしまった。
二時間か、どうしようかな……他の出演者の様子をうかがうと、主役のサイコパス探偵役で事務所の先輩でもあるベテラン俳優兼歌手の月島さんが大きなあくびをした。
「二時間なら俺、控室で寝させてもらう。昨日、深夜までレコーディングだったから……悪いけどギリギリまで起こさないで」
「了解です!」
「お疲れ様です!」
いつもなら俺もそう。
コンディションを整えたり、次の仕事の準備をしたり、この撮影の台本を読みこんだり。
でも、今日は……
「ねぇねぇ! 二時間あったら討伐クエスト二ついけるよね?」
「余裕だと思うよ。期間限定の武器をコンプしたいからSランクの方に行きたいな」
ご両親が超大御所俳優でこの映画が俳優デビューとなったまだ高校生のシュウトくんと、俺より三歳年上の人気アイドルグループ「five×ten」のセンターを務めているフユキさんが、マネージャーさんから携帯ゲーム機を受け取りながら撮影所の隅に置かれたベンチへ腰かける。
シュウトくんは少し天然のかわいい系、フユキさんは朝の番組のコメンテーターも務めるしっかりしたインテリ系。タイプの違う二人だけど、休憩時間は一緒のことが多い。
理由は今、二人が受け取ったゲーム機。
二人とも、日本中で流行っているモンスター討伐系ゲームにハマっているからだ。
「あ、私も混ぜて。仕事が詰まっていて限定クエスト全然できていないの」
「もちろんですよ!」
「ぜひぜひ」
俺たちより十歳近く年上のベテラン女優、上川ナツコさんもその輪に入る。
見た目はおしとやかな清楚系美女なのに、ゲームやアニメが好きな人で、そういう親しみやすいところが人気らしく、SNSのフォロワーは日本の女性芸能人で一番多い。
仕事仲間として、三人とも尊敬しているし、仲良くしておきたい人たちだ。
でも、俺は友達を作ることに慣れていなくて、こういう時に仲が悪くなることはなかったけど「仕事仲間」以上の距離感になることはなかった。
だけど今日は……
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