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第9章 その後の世界 / 新しい仲間と遊びの話
楽しいデートの締めくくり(1)
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「……」
「……」
魔王さんに抱き着く手の力を強めると、魔王さんは俺の体をしっかりと抱きかかえたままお城の廊下を進み、階段を上り……俺の部屋が近付くにつれて早足になっていく。
――タッタッタッタッ、バタン!
最後はほとんど走っているのと変わらないスピードで、俺の部屋に飛び込んだ。
「着いた」
「ん……ありがとう」
部屋に入って、洗面所の近くでそっと地面に下してくれた。
「顔も服もべたべた。はやくくっつきたいけど、洗ってからね?」
「あぁ。しかし……ふっ」
魔王さんがべたべたになった俺の顔と服、自分のシャツを見下ろして息を漏らした。
……俺も。
「ふ、ふは! ははっ!」
「っふ、ふふふっ!」
笑っちゃうよね?
俺たち、一〇代の若い子みたいに余裕なさ過ぎて、それに……
「上手く隠せたな」
「うん。ギリギリだったけど。魔王さんの『酔ってしまった』も上手かったね」
「そうだな。ローズウェルたちに心配をかけたことは申し訳なく思うが……とっさの言い訳にしては我ながら上手くいった」
今日一日付き添ってくれたみんなには本当に申し訳ない。でも、悪戯が成功したような楽しさがある。
魔王さんは真面目だから落ち込んでしまわないか心配だったけど、大丈夫そうでよかった。
「まだ成人したての頃に、一番様とこっそり隠し持っていた酒を飲んで二日酔いになった日を思い出したな。確か、俺が家庭教師の課題ができなくて明け方まで一番様に教えてもらって寝不足に、なんて言い訳をして午前中を寝て過ごして……この時に酔い覚ましの魔法を覚えたんだ」
魔王さん、仕事に対しては真面目だけど、私生活はちょっと遊び心というか、やんちゃというか、真面目なだけじゃないんだよね。こういう一面も、人間らしくて好き。……魔族だけど。
これは多分、一番様のおかげかな。最近、思い出を話すことが増えると同時に、自分の黒髪もあまり嫌だと思わなくなってきたみたいだし、よかったな。
「普段は真面目に誰よりも働いているんだ。たまの休みには羽目を外してもバチは当たらないだろう」
「そうだね。真面目ばっかりじゃ息が詰まっちゃうし……王様らしい真面目でかっこいい魔王さんと、俺にだけ見せてくれるプライベートの魔王さん、差が大きい方がいろいろな顔が見られて楽しいし」
こんな汚れた顔で言っても締まらないかなと思うけど、魔王さんは嬉しそうに俺の頬を撫でてくれた。
「あぁ。俺もライトのいろいろな顔を見たい。しかし……自分のもので汚れている顔は、あまり見たくは……いや……まぁ……興奮しなくもないが……」
「ふふっ、そうなんだ?」
乾き始めている頬を魔王さんの手に摺り寄せると、わかりやすく「たまらん!」って顔をしてくれる。
「ライトはどんな顔もかわいいのだから、仕方がないだろう」
「もう。 俺のこと喜ばせすぎ。我慢できないな~。急いで準備してくるから、魔王さんはベッドで待っていて」
「あぁ」
好かれているな、好きだな、と毎日思ってはいるんだけど……
「デートってすごいな」
今日は俺も魔王さんも、特に浮かれていると思う。
「……」
魔王さんに抱き着く手の力を強めると、魔王さんは俺の体をしっかりと抱きかかえたままお城の廊下を進み、階段を上り……俺の部屋が近付くにつれて早足になっていく。
――タッタッタッタッ、バタン!
最後はほとんど走っているのと変わらないスピードで、俺の部屋に飛び込んだ。
「着いた」
「ん……ありがとう」
部屋に入って、洗面所の近くでそっと地面に下してくれた。
「顔も服もべたべた。はやくくっつきたいけど、洗ってからね?」
「あぁ。しかし……ふっ」
魔王さんがべたべたになった俺の顔と服、自分のシャツを見下ろして息を漏らした。
……俺も。
「ふ、ふは! ははっ!」
「っふ、ふふふっ!」
笑っちゃうよね?
俺たち、一〇代の若い子みたいに余裕なさ過ぎて、それに……
「上手く隠せたな」
「うん。ギリギリだったけど。魔王さんの『酔ってしまった』も上手かったね」
「そうだな。ローズウェルたちに心配をかけたことは申し訳なく思うが……とっさの言い訳にしては我ながら上手くいった」
今日一日付き添ってくれたみんなには本当に申し訳ない。でも、悪戯が成功したような楽しさがある。
魔王さんは真面目だから落ち込んでしまわないか心配だったけど、大丈夫そうでよかった。
「まだ成人したての頃に、一番様とこっそり隠し持っていた酒を飲んで二日酔いになった日を思い出したな。確か、俺が家庭教師の課題ができなくて明け方まで一番様に教えてもらって寝不足に、なんて言い訳をして午前中を寝て過ごして……この時に酔い覚ましの魔法を覚えたんだ」
魔王さん、仕事に対しては真面目だけど、私生活はちょっと遊び心というか、やんちゃというか、真面目なだけじゃないんだよね。こういう一面も、人間らしくて好き。……魔族だけど。
これは多分、一番様のおかげかな。最近、思い出を話すことが増えると同時に、自分の黒髪もあまり嫌だと思わなくなってきたみたいだし、よかったな。
「普段は真面目に誰よりも働いているんだ。たまの休みには羽目を外してもバチは当たらないだろう」
「そうだね。真面目ばっかりじゃ息が詰まっちゃうし……王様らしい真面目でかっこいい魔王さんと、俺にだけ見せてくれるプライベートの魔王さん、差が大きい方がいろいろな顔が見られて楽しいし」
こんな汚れた顔で言っても締まらないかなと思うけど、魔王さんは嬉しそうに俺の頬を撫でてくれた。
「あぁ。俺もライトのいろいろな顔を見たい。しかし……自分のもので汚れている顔は、あまり見たくは……いや……まぁ……興奮しなくもないが……」
「ふふっ、そうなんだ?」
乾き始めている頬を魔王さんの手に摺り寄せると、わかりやすく「たまらん!」って顔をしてくれる。
「ライトはどんな顔もかわいいのだから、仕方がないだろう」
「もう。 俺のこと喜ばせすぎ。我慢できないな~。急いで準備してくるから、魔王さんはベッドで待っていて」
「あぁ」
好かれているな、好きだな、と毎日思ってはいるんだけど……
「デートってすごいな」
今日は俺も魔王さんも、特に浮かれていると思う。
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