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第9章 その後の世界 / 新しい仲間と遊びの話
デート(4)
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シャツの話で思わず盛り上がってしまったけど、その後は俺も魔王さんも何着も何着もお互いを着せ替えて……
「魔王さん派手な色も似あう! この組み合わせもかっこいい! 絶対にまた着ているところが見たい!」
「うっ、このライトもかわいい! この服も天才的に似合う! この姿を一回しか見られないなんて嫌だ!」
今から着る服以外にも気に入った服がありすぎて……結局デート五回分くらいの服を買って店を出た。
魔王さんがかっこいいのが悪い。
魔王さんは「ライトがかわいいからだ」って言うけど。
そして……
「服が軽い。このような薄い布で外を歩くのは慣れないな」
お店から一歩外に出た魔王さんが自分の姿を見下ろす。
今日のデート用に魔王さんに着てもらった服は、さっきの白い半袖シャツとやや薄手の黒いテーラードジャケット。ベージュのストレートパンツにこげ茶色の革靴。
全部仕立てはいいけど、普段の装飾がついた黒詰襟やブーツ、マント姿に比べるとすごくスッキリして見える。
角がなければ、元の世界のオフィスカジュアル姿のサラリーマンでも通じそうだけど……こんなかっこいいサラリーマンはいないか。
「よく似合っているよ。いつもの服は王様らしくて素敵だけど、こういうシンプルな服を着ていると……魔王さんって地位とか関係なく素敵なんだなって思う」
「そ……そうか?」
「うん。首回りがすっきりしていてかっこいい顔が目立つし、しっかり鍛えた体のラインや厚みのおかげでシンプルな服が様になるのも素敵。姿勢がいいのも、足が長いのも、こういう服の方がわかりやすいよね。かっこいい。おそろいのアクセサリーが引き立つのもいいな」
「そうか……だが、その言葉、すべてライトに返す。お前の方が素敵だ」
「ふふっ、そう?」
俺の服装は白いTシャツに黒いテーラードジャケット。ベージュのストレートパンツにこげ茶の革靴……そう、ほぼ同じ。
「俺は似合っている、似合っていないより、おそろいなのが嬉しいな」
「……あぁ」
魔王さん、口元を手で覆っても照れてニヤついてるのバレバレだよ?
「普段もおそろいの小物は多いけど、これなら一目で俺たちが仲良しだってわかるからいいね」
式典で同じ服を着ることはあったけど、あれは公的な意味合いが大きかったから……オフのおそろいはただの「仲良し」でしかないよね?
「そうだな」
「だから、早く次の場所行こう? いろんな人に仲良しの俺たちを見てもらいたい!」
実はさっきから、お店の周りにはたくさんの人が集まっていて、「うわ、同じ格好をされている! 仲良しで素敵!」「ライト様、あいかわらずおかわいらしい!」なんて声が聞こえる。
店の前に魔王さん用の馬車が停まっているんだから、集まっちゃって当然だよね。馬車と一定距離を空けてくれているのはみんなのマナーがいいのか、魔王さんの結界なのか……どっちでもいいか。
俺は見られることが好きだけど、そろそろお店の迷惑になっちゃうだろうし。
「あぁ。ローズウェル、次の場所へ」
「はい、承知致しました」
魔王さんが周囲に集まった国民のみんなに、きちんと視線を向けて軽く手を上げて応えてから馬車に乗り込む。
堂々としていてかっこいい。私服なのに気品と威厳がある!
じゃあ俺も。
「これから魔王さんとデートなんだ。いいでしょう? いってきます」
笑顔で手を振ると、周囲の人たちが一瞬息をのんで……
「……あ、あぁ、か、かわいい!」
「わざわざデート宣言していくなんて!」
「しかもあんなに楽しそうに!」
「自慢気なところがもう、もうぅ……ッ!」
「かっわいいいいいいいい!!!!!!」
国民のみんなの叫び声に近い歓声を聞きながら馬車に乗り込んだ。
俺、魔王さんを喜ばせるのも上手くなったけど、国民のみんなを喜ばせるのも上手くなったな。
「魔王さん派手な色も似あう! この組み合わせもかっこいい! 絶対にまた着ているところが見たい!」
「うっ、このライトもかわいい! この服も天才的に似合う! この姿を一回しか見られないなんて嫌だ!」
今から着る服以外にも気に入った服がありすぎて……結局デート五回分くらいの服を買って店を出た。
魔王さんがかっこいいのが悪い。
魔王さんは「ライトがかわいいからだ」って言うけど。
そして……
「服が軽い。このような薄い布で外を歩くのは慣れないな」
お店から一歩外に出た魔王さんが自分の姿を見下ろす。
今日のデート用に魔王さんに着てもらった服は、さっきの白い半袖シャツとやや薄手の黒いテーラードジャケット。ベージュのストレートパンツにこげ茶色の革靴。
全部仕立てはいいけど、普段の装飾がついた黒詰襟やブーツ、マント姿に比べるとすごくスッキリして見える。
角がなければ、元の世界のオフィスカジュアル姿のサラリーマンでも通じそうだけど……こんなかっこいいサラリーマンはいないか。
「よく似合っているよ。いつもの服は王様らしくて素敵だけど、こういうシンプルな服を着ていると……魔王さんって地位とか関係なく素敵なんだなって思う」
「そ……そうか?」
「うん。首回りがすっきりしていてかっこいい顔が目立つし、しっかり鍛えた体のラインや厚みのおかげでシンプルな服が様になるのも素敵。姿勢がいいのも、足が長いのも、こういう服の方がわかりやすいよね。かっこいい。おそろいのアクセサリーが引き立つのもいいな」
「そうか……だが、その言葉、すべてライトに返す。お前の方が素敵だ」
「ふふっ、そう?」
俺の服装は白いTシャツに黒いテーラードジャケット。ベージュのストレートパンツにこげ茶の革靴……そう、ほぼ同じ。
「俺は似合っている、似合っていないより、おそろいなのが嬉しいな」
「……あぁ」
魔王さん、口元を手で覆っても照れてニヤついてるのバレバレだよ?
「普段もおそろいの小物は多いけど、これなら一目で俺たちが仲良しだってわかるからいいね」
式典で同じ服を着ることはあったけど、あれは公的な意味合いが大きかったから……オフのおそろいはただの「仲良し」でしかないよね?
「そうだな」
「だから、早く次の場所行こう? いろんな人に仲良しの俺たちを見てもらいたい!」
実はさっきから、お店の周りにはたくさんの人が集まっていて、「うわ、同じ格好をされている! 仲良しで素敵!」「ライト様、あいかわらずおかわいらしい!」なんて声が聞こえる。
店の前に魔王さん用の馬車が停まっているんだから、集まっちゃって当然だよね。馬車と一定距離を空けてくれているのはみんなのマナーがいいのか、魔王さんの結界なのか……どっちでもいいか。
俺は見られることが好きだけど、そろそろお店の迷惑になっちゃうだろうし。
「あぁ。ローズウェル、次の場所へ」
「はい、承知致しました」
魔王さんが周囲に集まった国民のみんなに、きちんと視線を向けて軽く手を上げて応えてから馬車に乗り込む。
堂々としていてかっこいい。私服なのに気品と威厳がある!
じゃあ俺も。
「これから魔王さんとデートなんだ。いいでしょう? いってきます」
笑顔で手を振ると、周囲の人たちが一瞬息をのんで……
「……あ、あぁ、か、かわいい!」
「わざわざデート宣言していくなんて!」
「しかもあんなに楽しそうに!」
「自慢気なところがもう、もうぅ……ッ!」
「かっわいいいいいいいい!!!!!!」
国民のみんなの叫び声に近い歓声を聞きながら馬車に乗り込んだ。
俺、魔王さんを喜ばせるのも上手くなったけど、国民のみんなを喜ばせるのも上手くなったな。
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