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第9章 その後の世界 / 新しい仲間と遊びの話
デート(1)
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デートの約束をしてから数日後の正午。
「ライト様、お時間です」
いつもなら昼食の時間だけど、部屋に入ってきたローズウェルさんは食事の乗ったワゴンと一緒ではない。
「うん」
今日はデートだから、お仕事終わりの魔王さんとお城の門で待ち合わせの約束をしている。
どこ行くのかな?
何日か前に魔王さんが「デートの予定を発表する」と言ってくれたけど、「別に教えてくれなくていいよ。仕事の予定じゃないんだから、次はどこかな~ってわくわくしながらついていきたい」と返せば、すごく嬉しそうに「なるほど、そうだな。その方がいい!」と言ってくれて、出発の時間と、俺の服や持ち物だけ教えてもらったんだけど……
「うーん……」
部屋を出る前に、数年前に魔王さんに買ってもらった姿見の前を横切る。
チラっと映ったのは、いつも通り美形の顔と、いつも通りゆるいハーフアップにした髪、魔王さんとおそろいの腕時計、シンプルな黒い石のネックレス、シンプルな指輪、いつも通りの白っぽいシャツとズボン。
「……」
美形だから、スタイルがいいから、何を着てもかっこいいという自信はあるけど……せっかくのデートなのに普段の部屋着と同じような格好。特別感、ないよね?
でも、魔王さんがこれでって言ったからなぁ……スポーツとか汚れるような遊びでもするのかな?
「やっぱりプランを聞いておけばよかったかな」
俺が自分のシャツの胸元を引っ張りながらつぶやくと、隣を歩くローズウェルさんがなぜか笑顔を深めた。
なんだろう。ローズウェルさんは執事だから、デートのプランを事前に聞いているんだよね?
そんな顔するなら、なんか楽しいことが待っているんだろう。
……あ!
「ライト」
お城の正面の扉を出ると、少し離れた門にいつもの黒い詰襟っぽい服を着た魔王さんが立っているのが見えて、先に気づいたのか笑顔で片手をあげてくれる。
「お待たせ」
「俺も今来たところだ」
駆け寄って魔王さんの腕に抱きつくと、「今からデートのカップル」って感じでいいな。
魔王さんと待ち合わせなんてしたことなかったから新鮮。
「時間が惜しい。早速出発しよう」
「うん。最初は……ごはん?」
「いや、その前に寄るところがある」
「へぇ、どこだろう? 楽しみ」
魔王さんに促されて、黒い金属製で、金の装飾が施された頑丈な馬車に乗り込む。魔王さんサイズの人が二人ずつ向かい合って座れるサイズの馬車で、座る部分はソファのように柔らかい布が張ってあり、クッションも置いてある。窓は小さ目だしカーテンも閉まっているけど、室内灯があるから暗くはない。
「では、予定通りに頼む」
「はい」
魔王さんが俺の横に座って、ローズウェルさんが扉を閉める。
そのままローズウェルさんは馬車の前の……運転席? なんていえばいいのかわからないけど馬の手綱を取ってくれて、護衛の騎士団長さんともう一人の騎士さんはそれぞれ馬に乗って馬車の両横についてくれている。
「はぁ……緊張する」
「なんで?」
「ライトが、俺の考えたデートプランを喜んでくれるかどうか、きちんと楽しませられるかどうか、心配だ」
こんな大きな体で、男前の顔で、そんなこと言っちゃうんだ。
「ふふっ。心配しなくても、魔王さんが一生懸命考えてくれたと思うと、もう楽しいよ」
「そうか……」
俺がご機嫌に笑ったからか、魔王さんの表情が少し緩んで、ちょうど馬車が走り始めた。
「楽しもうね」
「あぁ」
◆
五分くらいで馬車が停まった。
停まってから、少し時間をおいて扉が開く。
「……服屋さん?」
馬車を降りてすぐ、豪華な燕尾服やドレスが飾られた立派なガラスのショーケースが見えた。
元の世界でいう「テーラー」っぽい高級感のあるお店だ。
「あぁ。まずは今日のための服を選ぼう」
「今日のための……」
「城には王としての執務に必要な服、ペットとして着飾るための服しかない。デートに向く服というのがわからなかったから……共に選ぶところから始めたいと思ったんだ」
「……!」
だから、服装はいつも通りって言ったんだ?
魔王さん、ちゃんと考えてくれていたんだ?
こんなの……こんなのって……
「すごい! 魔王さん天才! 大好き!」
「そ、そうか?」
嬉しそうな魔王さんの腕に抱き着つくと、ちょうどお店の扉が開いた。
「ライト様、お時間です」
いつもなら昼食の時間だけど、部屋に入ってきたローズウェルさんは食事の乗ったワゴンと一緒ではない。
「うん」
今日はデートだから、お仕事終わりの魔王さんとお城の門で待ち合わせの約束をしている。
どこ行くのかな?
何日か前に魔王さんが「デートの予定を発表する」と言ってくれたけど、「別に教えてくれなくていいよ。仕事の予定じゃないんだから、次はどこかな~ってわくわくしながらついていきたい」と返せば、すごく嬉しそうに「なるほど、そうだな。その方がいい!」と言ってくれて、出発の時間と、俺の服や持ち物だけ教えてもらったんだけど……
「うーん……」
部屋を出る前に、数年前に魔王さんに買ってもらった姿見の前を横切る。
チラっと映ったのは、いつも通り美形の顔と、いつも通りゆるいハーフアップにした髪、魔王さんとおそろいの腕時計、シンプルな黒い石のネックレス、シンプルな指輪、いつも通りの白っぽいシャツとズボン。
「……」
美形だから、スタイルがいいから、何を着てもかっこいいという自信はあるけど……せっかくのデートなのに普段の部屋着と同じような格好。特別感、ないよね?
でも、魔王さんがこれでって言ったからなぁ……スポーツとか汚れるような遊びでもするのかな?
「やっぱりプランを聞いておけばよかったかな」
俺が自分のシャツの胸元を引っ張りながらつぶやくと、隣を歩くローズウェルさんがなぜか笑顔を深めた。
なんだろう。ローズウェルさんは執事だから、デートのプランを事前に聞いているんだよね?
そんな顔するなら、なんか楽しいことが待っているんだろう。
……あ!
「ライト」
お城の正面の扉を出ると、少し離れた門にいつもの黒い詰襟っぽい服を着た魔王さんが立っているのが見えて、先に気づいたのか笑顔で片手をあげてくれる。
「お待たせ」
「俺も今来たところだ」
駆け寄って魔王さんの腕に抱きつくと、「今からデートのカップル」って感じでいいな。
魔王さんと待ち合わせなんてしたことなかったから新鮮。
「時間が惜しい。早速出発しよう」
「うん。最初は……ごはん?」
「いや、その前に寄るところがある」
「へぇ、どこだろう? 楽しみ」
魔王さんに促されて、黒い金属製で、金の装飾が施された頑丈な馬車に乗り込む。魔王さんサイズの人が二人ずつ向かい合って座れるサイズの馬車で、座る部分はソファのように柔らかい布が張ってあり、クッションも置いてある。窓は小さ目だしカーテンも閉まっているけど、室内灯があるから暗くはない。
「では、予定通りに頼む」
「はい」
魔王さんが俺の横に座って、ローズウェルさんが扉を閉める。
そのままローズウェルさんは馬車の前の……運転席? なんていえばいいのかわからないけど馬の手綱を取ってくれて、護衛の騎士団長さんともう一人の騎士さんはそれぞれ馬に乗って馬車の両横についてくれている。
「はぁ……緊張する」
「なんで?」
「ライトが、俺の考えたデートプランを喜んでくれるかどうか、きちんと楽しませられるかどうか、心配だ」
こんな大きな体で、男前の顔で、そんなこと言っちゃうんだ。
「ふふっ。心配しなくても、魔王さんが一生懸命考えてくれたと思うと、もう楽しいよ」
「そうか……」
俺がご機嫌に笑ったからか、魔王さんの表情が少し緩んで、ちょうど馬車が走り始めた。
「楽しもうね」
「あぁ」
◆
五分くらいで馬車が停まった。
停まってから、少し時間をおいて扉が開く。
「……服屋さん?」
馬車を降りてすぐ、豪華な燕尾服やドレスが飾られた立派なガラスのショーケースが見えた。
元の世界でいう「テーラー」っぽい高級感のあるお店だ。
「あぁ。まずは今日のための服を選ぼう」
「今日のための……」
「城には王としての執務に必要な服、ペットとして着飾るための服しかない。デートに向く服というのがわからなかったから……共に選ぶところから始めたいと思ったんだ」
「……!」
だから、服装はいつも通りって言ったんだ?
魔王さん、ちゃんと考えてくれていたんだ?
こんなの……こんなのって……
「すごい! 魔王さん天才! 大好き!」
「そ、そうか?」
嬉しそうな魔王さんの腕に抱き着つくと、ちょうどお店の扉が開いた。
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