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第9章 その後の世界 / 新しい仲間と遊びの話
しつこい(2)
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「俺がもういいって言っているのに、しつこい。そんなに何度も言われたら、折角納得したのに、もっと魔王さんを怒らないといけないのかなって思っちゃうよ? 俺、大好きな魔王さんのこと怒りたくないのに」
「あ、す、すまない!」
「ほら、また謝るし! このやり取りのせいでイチャイチャする時間がもう三〇分減った。最悪」
「あ、あ、すまな……いや、その……」
しゅんとしちゃった。胸が痛いけど……気持ち、切り替えてもらわないと。
「俺は、お兄ちゃんって感じの俺よりも、魔王さんのペットで、伴侶のかわいい俺の方が気に入っているんだけど? 魔王さんは?」
「もちろんだ! 俺のペットのライトはかわいい! こんなにかわいいのに俺のペットだと思うとかわいくてかわいくてたまらない!」
「でしょ? だったら、どうしようもないこと反省するよりも、俺が今ここで、この世界で、魔王さんと一緒にいる時間をもっと楽しめるように考えて? 謝るくらいなら責任取って俺を幸せにして?」
「あ……そう……だな。あぁ、そうだ。ライトの言うとおりだ!」
やっと魔王さんが悲しそうな顔じゃなくなった。
「ハグ」
「あぁ!」
よしよし。両手を広げればすぐに抱きしめてくれるし、もう大丈夫かな。
俺も、慣れない表情から笑顔に戻ろう。
「ライト、もっとかわいがりたい。俺にできることはないか? ライトはどうしたら喜ぶんだ?」
「もう十分かわいがってもらっているけど……」
ちょうどいい。折角だし我儘も言っておくか。
「ねぇ、魔王さん。デートしたい」
「……デート?」
「お城の外で、デート」
「城の外……」
「視察とかお仕事じゃなくて、普通の恋人みたいなデートね?」
魔王さんの自由時間ってすごく少なくて、月に数回午後に時間が取れるだけ。時間がないし、立場もあるからか、デートはお城の敷地内ばかり。中庭とか、美術品を納めているお部屋とか、厩舎とか……ほとんどはお部屋デートだけど。
たまに外に出ることはあるけど、それは自由時間のデートではなくて、「国際会議」とか「魔法技術大会の視察」とか「遠方の農地の視察」とか「新しい村長の就任式に出席」なんていうお仕事のおでかけに俺がくっついて行くだけ。ちょっとだけその土地の珍しい観光地に行けたり、美味しいご飯屋さんに行けることもあるけど、だいたいがローズウェルさんたちが手配してくれた場所に行くってだけ。護衛の騎士さんだけでなく、新聞記者さんが同行することも多い。楽しいけど、デートではない。魔王さんもお仕事の顔の時が多い。
だから、ちゃんとしたデートをしてみたいんだよね。
時間も場所も限られるし準備も大変そうだから、今まで何となく言い出せなかったけど……
「城下町なら魔王さんの結界があって、住む人も制限されていて安全なんでしょう?」
「あぁ、城下町でいいのか。それなら、できなくはない。事前に行く場所を決め、移動は馬車、護衛が後ろにつくなら、だが」
王様だもんね。それくらいの制限は予想の範囲内。
「事前に場所を決めるってことは、魔王さんが事前にデートプランを考えてくれるってことだよね? どこに連れて行ってくれるんだろう? 楽しみ!」
「あ……俺が、ライトを喜ばせるためのプランを、考える……?」
魔王さんが呆然としながらつぶやく。デートプランなんて考えたことないよね?
できないかな?
「なんて……なんて責任重大で楽しい悩みだ!」
魔王さんの目がキラッキラに輝いた。
よしよし。これで魔王さんの頭の中は俺でいっぱい。しかも「すまないライト」ではなくて「大好きなライトを喜ばせるぞ!」でいっぱいのはず。
絶対にこの方がいいよね?
「ライトに食べさせたいもの、見せたいもの、ライトが楽しめそうなもの……」
「着ていく服も決めてね?」
「そうか! それも重要だな!」
俺が横にいるのに、俺のことで頭がいっぱいで俺が見えていない魔王さんって新鮮。
これはこれで楽しいけど……
「魔王さん」
「ん?」
魔王さんの首に腕をまわして顔を覗き込む。
「デートも楽しみだけど、今、一緒にいてイチャイチャできる時間が減るから、考えるのは後にして?」
「あ……あ、あぁ! そうだな!」
「昨日、くっつけなかった分……ね?」
「あぁ」
魔王さんの表情はもう明るくて、いつも通りの幸せな時間を過ごした。
ちょっとキツイ言い方をしちゃったけど、ちゃんと魔王さんを笑顔にできてよかった。
ずっとしたかったデートもできるし。
結果的にはよかったよね?
魔王さん、これからも不安になっちゃうことはあると思うけど、すぐに笑顔にしてあげるからね?
「あ、す、すまない!」
「ほら、また謝るし! このやり取りのせいでイチャイチャする時間がもう三〇分減った。最悪」
「あ、あ、すまな……いや、その……」
しゅんとしちゃった。胸が痛いけど……気持ち、切り替えてもらわないと。
「俺は、お兄ちゃんって感じの俺よりも、魔王さんのペットで、伴侶のかわいい俺の方が気に入っているんだけど? 魔王さんは?」
「もちろんだ! 俺のペットのライトはかわいい! こんなにかわいいのに俺のペットだと思うとかわいくてかわいくてたまらない!」
「でしょ? だったら、どうしようもないこと反省するよりも、俺が今ここで、この世界で、魔王さんと一緒にいる時間をもっと楽しめるように考えて? 謝るくらいなら責任取って俺を幸せにして?」
「あ……そう……だな。あぁ、そうだ。ライトの言うとおりだ!」
やっと魔王さんが悲しそうな顔じゃなくなった。
「ハグ」
「あぁ!」
よしよし。両手を広げればすぐに抱きしめてくれるし、もう大丈夫かな。
俺も、慣れない表情から笑顔に戻ろう。
「ライト、もっとかわいがりたい。俺にできることはないか? ライトはどうしたら喜ぶんだ?」
「もう十分かわいがってもらっているけど……」
ちょうどいい。折角だし我儘も言っておくか。
「ねぇ、魔王さん。デートしたい」
「……デート?」
「お城の外で、デート」
「城の外……」
「視察とかお仕事じゃなくて、普通の恋人みたいなデートね?」
魔王さんの自由時間ってすごく少なくて、月に数回午後に時間が取れるだけ。時間がないし、立場もあるからか、デートはお城の敷地内ばかり。中庭とか、美術品を納めているお部屋とか、厩舎とか……ほとんどはお部屋デートだけど。
たまに外に出ることはあるけど、それは自由時間のデートではなくて、「国際会議」とか「魔法技術大会の視察」とか「遠方の農地の視察」とか「新しい村長の就任式に出席」なんていうお仕事のおでかけに俺がくっついて行くだけ。ちょっとだけその土地の珍しい観光地に行けたり、美味しいご飯屋さんに行けることもあるけど、だいたいがローズウェルさんたちが手配してくれた場所に行くってだけ。護衛の騎士さんだけでなく、新聞記者さんが同行することも多い。楽しいけど、デートではない。魔王さんもお仕事の顔の時が多い。
だから、ちゃんとしたデートをしてみたいんだよね。
時間も場所も限られるし準備も大変そうだから、今まで何となく言い出せなかったけど……
「城下町なら魔王さんの結界があって、住む人も制限されていて安全なんでしょう?」
「あぁ、城下町でいいのか。それなら、できなくはない。事前に行く場所を決め、移動は馬車、護衛が後ろにつくなら、だが」
王様だもんね。それくらいの制限は予想の範囲内。
「事前に場所を決めるってことは、魔王さんが事前にデートプランを考えてくれるってことだよね? どこに連れて行ってくれるんだろう? 楽しみ!」
「あ……俺が、ライトを喜ばせるためのプランを、考える……?」
魔王さんが呆然としながらつぶやく。デートプランなんて考えたことないよね?
できないかな?
「なんて……なんて責任重大で楽しい悩みだ!」
魔王さんの目がキラッキラに輝いた。
よしよし。これで魔王さんの頭の中は俺でいっぱい。しかも「すまないライト」ではなくて「大好きなライトを喜ばせるぞ!」でいっぱいのはず。
絶対にこの方がいいよね?
「ライトに食べさせたいもの、見せたいもの、ライトが楽しめそうなもの……」
「着ていく服も決めてね?」
「そうか! それも重要だな!」
俺が横にいるのに、俺のことで頭がいっぱいで俺が見えていない魔王さんって新鮮。
これはこれで楽しいけど……
「魔王さん」
「ん?」
魔王さんの首に腕をまわして顔を覗き込む。
「デートも楽しみだけど、今、一緒にいてイチャイチャできる時間が減るから、考えるのは後にして?」
「あ……あ、あぁ! そうだな!」
「昨日、くっつけなかった分……ね?」
「あぁ」
魔王さんの表情はもう明るくて、いつも通りの幸せな時間を過ごした。
ちょっとキツイ言い方をしちゃったけど、ちゃんと魔王さんを笑顔にできてよかった。
ずっとしたかったデートもできるし。
結果的にはよかったよね?
魔王さん、これからも不安になっちゃうことはあると思うけど、すぐに笑顔にしてあげるからね?
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