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第9章 その後の世界 / 新しい仲間と遊びの話
雇用(2)
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「あとは、この城で受け入れられるかどうかだが……」
魔王さんがエンラキさんの方を向くと、エンラキさんは手元の分厚い冊子を慌ててめくっていた。
「少々お待ちください! ……この場合、人間の村の中での人間同士の雇用契約と、お城の中での雇用契約、どちらを適用したらいいのか……そもそも国外からの就労なので、国籍……人間の国籍変更って飼い主……あれ? 飼い主がいない場合……えっと……どうしたら……」
人間の村の中では、小さな商いだけど雇用関係があるし、いけるんじゃないかと思ったけど……思ったより難しい? 元の世界でも海外で働こうと思うと簡単ではないから、仕方がないか。
つい、不安が顔に出てしまった。
「……あ!」
エンラキさんが俺の顔を見て表情を引き締めた。
「お見苦しいところをお見せして申し訳ございません。私の法律理解不足です!」
「エンラキさん……」
「現行の法律では人間が人間の村以外で働くのは『魔族とのペット契約』を前提としていて、前例がありません。ですが、断言できます。禁止されていることではありません!」
できるんだ!
「禁止ではありませんが、書類上どう扱えばいいかがこの場で即答できません。いったん持ち帰り、役所としての回答をさせていただきます」
エンラキさんは俺たちの考えを否定せずに、しっかり聞いて、しっかりと前向きに検討してくれていて……人間の俺たちに対等に向き合ってくれているのがわかる。中途半端なことを言わないところ、信頼できる。
俺、エンラキさんのこういうところ好き。
「ありがとう。お仕事増やしてごめんね」
「いえ、これが私の仕事ですし、こういう権利は保証されるべきですから。今後の人間のためにも、今のうちにきちんとフォーマットを作っておくべきです……むしろ、今までなかったのがおかしいですよね……」
最後は少し独り言みたいだったけど、俺を安心させようと笑顔になってくれた。
俺って本当に周りの人に恵まれているな。
「魔王様とライト様がご希望されていて、法律上の問題がないのであれば反対することはありません」
ファイさんは一応納得してくれた様子で安心した。あとは……
「一つ、よろしいでしょうか」
いつも通りのクールな表情のローズウェルさんが、一歩前に出た。
「ライト様が私的に雇用されるのですから、私に口を出す権利はありません。ですが、城で働くというのは魔王の国の中枢で働くということです。マナーや教養、心構えについては他の勤め人と同じように身に着けていただく必要があると考えます」
執事長らしい考えだけど、それはそうだと思う。俺の秘書だけど、働く場所はお城だもんね?
「これらの指導は、人間だから、ライト様の秘書だからと特別扱いせず、他の魔族と平等にさせていただきたいです」
厳しいことを言っているようだけど、この世界の常識なら「雇用って言ってもペットとかわらない」とただかわいがるだけになりそうなのにね。
ローズウェルさん、「同僚」扱いしようとしてくれているんだ?
嬉しいな。
「はい! もちろんです! 皆様と同じように働けるよう、精一杯励みますので、ご指導よろしくお願いいたします!」
イユリちゃんも嬉しいんだと思う、しっかりと頭を下げたけど、顔は笑顔だった。
「共にライト様を支えていく仲間ができて嬉しく思います」
お。ローズウェルさんがこういう場で表情を和らげるのは珍しい。
その横で騎士団長さんが「……い、いいのか? ローズウェルの仕事が増え……いや、将来的には秘書業務が減るということか? だったら喜ばしいな」と声に出さなくても考えていることが全部わかる表情でローズウェルさんを見ていた。
この感じなら、お城の人たちはみんな、大丈夫そうかな?
どう働いてもらうか、お城でどう生活してもらうか、他の魔族さんたちにどう接してもらうか、考えないといけないことはたくさんあるけど、イユリちゃんに関してはなんとかなりそう。
直近の問題としては……
「……」
「……?」
なんだろうな。
魔王さんは間違いなく俺の味方をしてくれているみたいなのに。
ふとした瞬間に表情が曇る。昨夜もどのタイミングだったかな? 表情が曇る瞬間があった。
前例のない話で困るとか感覚が理解できないとかではなくて、もっと「悲しい」とか「悔しい」とかそんな感じっぽい。
魔王さん繊細だからなぁ……なにが引っかかっているんだろう?
んー……あ! 俺が魔王さんよりイユリちゃんをかわいがるとか、人間同士の方が仲良くなるとか心配してる?
そんなこと、絶対にありえないのに!
俺、魔王さん以上に距離を詰めたい人なんていないのに!
今夜、しっかり誤解を解かないと。
魔王さんがエンラキさんの方を向くと、エンラキさんは手元の分厚い冊子を慌ててめくっていた。
「少々お待ちください! ……この場合、人間の村の中での人間同士の雇用契約と、お城の中での雇用契約、どちらを適用したらいいのか……そもそも国外からの就労なので、国籍……人間の国籍変更って飼い主……あれ? 飼い主がいない場合……えっと……どうしたら……」
人間の村の中では、小さな商いだけど雇用関係があるし、いけるんじゃないかと思ったけど……思ったより難しい? 元の世界でも海外で働こうと思うと簡単ではないから、仕方がないか。
つい、不安が顔に出てしまった。
「……あ!」
エンラキさんが俺の顔を見て表情を引き締めた。
「お見苦しいところをお見せして申し訳ございません。私の法律理解不足です!」
「エンラキさん……」
「現行の法律では人間が人間の村以外で働くのは『魔族とのペット契約』を前提としていて、前例がありません。ですが、断言できます。禁止されていることではありません!」
できるんだ!
「禁止ではありませんが、書類上どう扱えばいいかがこの場で即答できません。いったん持ち帰り、役所としての回答をさせていただきます」
エンラキさんは俺たちの考えを否定せずに、しっかり聞いて、しっかりと前向きに検討してくれていて……人間の俺たちに対等に向き合ってくれているのがわかる。中途半端なことを言わないところ、信頼できる。
俺、エンラキさんのこういうところ好き。
「ありがとう。お仕事増やしてごめんね」
「いえ、これが私の仕事ですし、こういう権利は保証されるべきですから。今後の人間のためにも、今のうちにきちんとフォーマットを作っておくべきです……むしろ、今までなかったのがおかしいですよね……」
最後は少し独り言みたいだったけど、俺を安心させようと笑顔になってくれた。
俺って本当に周りの人に恵まれているな。
「魔王様とライト様がご希望されていて、法律上の問題がないのであれば反対することはありません」
ファイさんは一応納得してくれた様子で安心した。あとは……
「一つ、よろしいでしょうか」
いつも通りのクールな表情のローズウェルさんが、一歩前に出た。
「ライト様が私的に雇用されるのですから、私に口を出す権利はありません。ですが、城で働くというのは魔王の国の中枢で働くということです。マナーや教養、心構えについては他の勤め人と同じように身に着けていただく必要があると考えます」
執事長らしい考えだけど、それはそうだと思う。俺の秘書だけど、働く場所はお城だもんね?
「これらの指導は、人間だから、ライト様の秘書だからと特別扱いせず、他の魔族と平等にさせていただきたいです」
厳しいことを言っているようだけど、この世界の常識なら「雇用って言ってもペットとかわらない」とただかわいがるだけになりそうなのにね。
ローズウェルさん、「同僚」扱いしようとしてくれているんだ?
嬉しいな。
「はい! もちろんです! 皆様と同じように働けるよう、精一杯励みますので、ご指導よろしくお願いいたします!」
イユリちゃんも嬉しいんだと思う、しっかりと頭を下げたけど、顔は笑顔だった。
「共にライト様を支えていく仲間ができて嬉しく思います」
お。ローズウェルさんがこういう場で表情を和らげるのは珍しい。
その横で騎士団長さんが「……い、いいのか? ローズウェルの仕事が増え……いや、将来的には秘書業務が減るということか? だったら喜ばしいな」と声に出さなくても考えていることが全部わかる表情でローズウェルさんを見ていた。
この感じなら、お城の人たちはみんな、大丈夫そうかな?
どう働いてもらうか、お城でどう生活してもらうか、他の魔族さんたちにどう接してもらうか、考えないといけないことはたくさんあるけど、イユリちゃんに関してはなんとかなりそう。
直近の問題としては……
「……」
「……?」
なんだろうな。
魔王さんは間違いなく俺の味方をしてくれているみたいなのに。
ふとした瞬間に表情が曇る。昨夜もどのタイミングだったかな? 表情が曇る瞬間があった。
前例のない話で困るとか感覚が理解できないとかではなくて、もっと「悲しい」とか「悔しい」とかそんな感じっぽい。
魔王さん繊細だからなぁ……なにが引っかかっているんだろう?
んー……あ! 俺が魔王さんよりイユリちゃんをかわいがるとか、人間同士の方が仲良くなるとか心配してる?
そんなこと、絶対にありえないのに!
俺、魔王さん以上に距離を詰めたい人なんていないのに!
今夜、しっかり誤解を解かないと。
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