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番外編3 一番の●●
ただのライト様ファン(2)
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執務室で、月に二回だけとるようになった魔王の国の新聞を広げる。
「……変わらないのか……」
ライト様は、三年経っても魔王のペットだった。
少し前から、魔王の国の新聞でライト様の日記風コラムの掲載も始まって、その中で「死ぬまで魔王さんのペットっていう契約だから、国民のみんな、これからもよろしくね!」と書いてあったから知ってはいたが……。
本当に三年経ってもペットはライト様だった。
死ぬまで……そうか。魔王もやっと飼い主の責任というのが解ったのか。
喜ばしいことだが……。
「クソ……今までは三年で放り出していたくせに! 素敵な子が来たとたん態度を変えるとは……!」
魔王に腹が立つ。
しかしそれ以上に、あの頑固な魔王の意識を変えたライト様はすごい。
ますますライト様のことが好きになった。
「はぁ、それに……今回もかわいい……」
月に二回掲載されるライト様の日記風コラム。
今回は「お風呂の話」だ。
三年間ペットをした報酬に、部屋に風呂を作ってもらったと。
そして、「そのままでもいいけど、バラの花やアロマオイルを入れるとリラックスして気持ちいいからオススメ」か……バラの花とライト様……いい匂いのするライト様……わぁ、かわいい。
天才の発想だ。
あとは……「でも、一番のリラックスアイテムは魔王さん! 抱きかかえてもらいながら入るとすごく落ち着く」か……相手が魔王だというのは癪だが、飼い主で落ち着くなんて、もう、かわいいなぁ!
「はぁ……かわいい……」
この記事はいつも通り切り抜いてスクラップブックに貼ろう。
ハサミを取り出すために、執務机の角に置いてある文具入れに手を伸ばした。
この文具入れは、ライト様のかわいらしいお顔が描いてある箱だ。
元々はライト様が異世界で食べていたものを再現したお菓子が入っていた箱で、オファと二人で「甘いのに塩のコクがあって奥深い味だ!」と感動しながら食べた後、勿体なくて箱が捨てられず……文具入れになった。
味が三種あってそれぞれ一箱ずつ買ったので、別の味の箱はオファのアクセサリー入れと、私とオファ共有のライト様グッズ置き場に飾る用になっている。
「この菓子も、今月からの追加の輸入が決まったからな……また食べられる」
ここ数十年、魔王の国のものを輸入するなんて無かったのに。
ライト様関連だけは、私が個人的に欲しいということもあって、国民も興味があるという声があって、大々的に輸入することになった。
この菓子、きっと何度も何度も買うだろうな。
かわいすぎて箱が捨てられないだろうから……部屋が箱だらけになるな。あぁ、困った。
――コンコン
楽しい悩みに頭を捻っていると、執務室のドアがノックされた。
「導王様!」
入ってきたのはオファだった。
ライト様のご助言から二年以上。
生活を見直したお陰か、成長して体質が変わったのか、肌はすっかりきれいになった。
肌がきれいになって自信がついたのか、前髪で顔を隠すことはなくなり、よく笑う様になり、私の目を見て、顔を近づけて話してくれる。
正直、めっちゃくちゃにかわいい。
元々一〇〇点満点にかわいかったのに、最近は一〇〇〇点満点にかわいい。
そして、目の前のオファはいつも以上にいい笑顔だ。
これは……ライト様関連だな?
「注文していたお服が届いたんです!」
「お服……あれか!?」
「はい! ライト様ご着用の……」
オファが後ろ手に隠していた服を広げながら私に向ける。
「魔王さん大好きTシャツです!」
「おぉ……!」
ライト様の日記で読んでから、なんとかわいい発想の服なのだろうと気になっていたあのお服!
「着る用と洗い替えと飾る用を買ったので、部屋着として毎日着ます!」
「あぁ、オファが着てもきっとかわいい! 楽しみだ!」
オファは嬉しそうにTシャツを抱きしめると「お仕事中にお邪魔してすみません。でも、一番に導王様に見せたかったんです」と嬉しいことを言ってくれながら執務室を出て行った。
あぁ、ライト様のお陰でオファがご機嫌で、いっぱい話してくれて、毎日が楽しい。
今夜は、きっととてもとてもご機嫌にあの部屋着を着たオファとイチャイチャできるな。
きっとかわいいなぁ……楽しみだなぁ……。
ただ……
「魔王さん大好き……か……」
ライト様ファンとしては正解なのだが、導王としては、オファの飼い主としては、複雑な気持ちだ……。
「……変わらないのか……」
ライト様は、三年経っても魔王のペットだった。
少し前から、魔王の国の新聞でライト様の日記風コラムの掲載も始まって、その中で「死ぬまで魔王さんのペットっていう契約だから、国民のみんな、これからもよろしくね!」と書いてあったから知ってはいたが……。
本当に三年経ってもペットはライト様だった。
死ぬまで……そうか。魔王もやっと飼い主の責任というのが解ったのか。
喜ばしいことだが……。
「クソ……今までは三年で放り出していたくせに! 素敵な子が来たとたん態度を変えるとは……!」
魔王に腹が立つ。
しかしそれ以上に、あの頑固な魔王の意識を変えたライト様はすごい。
ますますライト様のことが好きになった。
「はぁ、それに……今回もかわいい……」
月に二回掲載されるライト様の日記風コラム。
今回は「お風呂の話」だ。
三年間ペットをした報酬に、部屋に風呂を作ってもらったと。
そして、「そのままでもいいけど、バラの花やアロマオイルを入れるとリラックスして気持ちいいからオススメ」か……バラの花とライト様……いい匂いのするライト様……わぁ、かわいい。
天才の発想だ。
あとは……「でも、一番のリラックスアイテムは魔王さん! 抱きかかえてもらいながら入るとすごく落ち着く」か……相手が魔王だというのは癪だが、飼い主で落ち着くなんて、もう、かわいいなぁ!
「はぁ……かわいい……」
この記事はいつも通り切り抜いてスクラップブックに貼ろう。
ハサミを取り出すために、執務机の角に置いてある文具入れに手を伸ばした。
この文具入れは、ライト様のかわいらしいお顔が描いてある箱だ。
元々はライト様が異世界で食べていたものを再現したお菓子が入っていた箱で、オファと二人で「甘いのに塩のコクがあって奥深い味だ!」と感動しながら食べた後、勿体なくて箱が捨てられず……文具入れになった。
味が三種あってそれぞれ一箱ずつ買ったので、別の味の箱はオファのアクセサリー入れと、私とオファ共有のライト様グッズ置き場に飾る用になっている。
「この菓子も、今月からの追加の輸入が決まったからな……また食べられる」
ここ数十年、魔王の国のものを輸入するなんて無かったのに。
ライト様関連だけは、私が個人的に欲しいということもあって、国民も興味があるという声があって、大々的に輸入することになった。
この菓子、きっと何度も何度も買うだろうな。
かわいすぎて箱が捨てられないだろうから……部屋が箱だらけになるな。あぁ、困った。
――コンコン
楽しい悩みに頭を捻っていると、執務室のドアがノックされた。
「導王様!」
入ってきたのはオファだった。
ライト様のご助言から二年以上。
生活を見直したお陰か、成長して体質が変わったのか、肌はすっかりきれいになった。
肌がきれいになって自信がついたのか、前髪で顔を隠すことはなくなり、よく笑う様になり、私の目を見て、顔を近づけて話してくれる。
正直、めっちゃくちゃにかわいい。
元々一〇〇点満点にかわいかったのに、最近は一〇〇〇点満点にかわいい。
そして、目の前のオファはいつも以上にいい笑顔だ。
これは……ライト様関連だな?
「注文していたお服が届いたんです!」
「お服……あれか!?」
「はい! ライト様ご着用の……」
オファが後ろ手に隠していた服を広げながら私に向ける。
「魔王さん大好きTシャツです!」
「おぉ……!」
ライト様の日記で読んでから、なんとかわいい発想の服なのだろうと気になっていたあのお服!
「着る用と洗い替えと飾る用を買ったので、部屋着として毎日着ます!」
「あぁ、オファが着てもきっとかわいい! 楽しみだ!」
オファは嬉しそうにTシャツを抱きしめると「お仕事中にお邪魔してすみません。でも、一番に導王様に見せたかったんです」と嬉しいことを言ってくれながら執務室を出て行った。
あぁ、ライト様のお陰でオファがご機嫌で、いっぱい話してくれて、毎日が楽しい。
今夜は、きっととてもとてもご機嫌にあの部屋着を着たオファとイチャイチャできるな。
きっとかわいいなぁ……楽しみだなぁ……。
ただ……
「魔王さん大好き……か……」
ライト様ファンとしては正解なのだが、導王としては、オファの飼い主としては、複雑な気持ちだ……。
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