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番外編3 一番の●●
ライト様(1)
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オファを連れて参加した、会議後のパーティー。
主催の魔王の隣には、最初は、いつものような美形が立っていると思った。
だが、すぐにいつもと同じではないことが解った。
「ライト、もう少し近くにいろ」
「うん」
ライト? 名前か?
いつものように「ニマ」ではないのか?
それにあの笑顔……何でもない時にあそこまでかわいく笑うのか?
どうにも目が離せなくて、ついチラチラと気にしていると、その後も新しいペットはかわいかった。
「あ、魔王さん」
「ん? どうした、ライト?」
「折角のお揃いのブローチが斜めに……はい、直った。かっこいい」
「あぁ。ありがとうライト」
「ふふっ。折角かっこいい魔王さんだから、見た目もちゃんとしないと勿体ないし。……お話の邪魔をしてごめんなさい」
人前で、あんな風に触れてくれるのか?
おそろいのブローチ……自然に「かっこいい」なんて誉め言葉……。
しかも、何と呼んだ?
魔王さん?
魔王様ではなく?
話し方もまるで友だち相手のようだ。
なんだあれは。かわいすぎる。
私もオファにあんな風に接してもらいたい。
あぁ、しかも魔王の……あの、褒められて謙遜しているようで自慢げな顔!
悔しい……。
「魔王さん。ずっと立ってるの疲れちゃった」
「あぁ、気が利かなくて悪かったな。すぐに椅子を用意……」
「魔王さんの膝、座っちゃダメ?」
「ひ……ざ?」
「お行儀悪い?」
「いいに決まっているだろう! かわいいなぁ、ライトは……!」
はぁ? なんだあれ?
人前であんなに甘えてくれるなんて……。
「くそ、うらやましい……」
私もオファにあんな風にしてもらいたい。
いつもクソ真面目な魔王の顔がデレデレに蕩けているのを、いつもとは違う種類の苛立ちを覚えながら眺めていたが……もう他の来賓は挨拶が済んだか。
私も行かないわけにはいかない。
まぁいい。
うちのオファだって間近で見れば目が眩むほどかわいいんだ。
「オファ、そろそろ挨拶に行こう。緊張していると思うが、最初の挨拶さえすれば、あとは無理に話さなくていい。私の横でかわいく笑っていてくれ」
「……はい」
恥ずかしがって前髪を降ろしたままの、オファの柔らかい頭が上下に揺れた。
途中で乾杯用のワイングラスを受け取って王座へ進むと、私のパーティー用のローブと同じ紺色のローブを着たオファは、私に隠れるように半歩遅れてついて来てくれる。
あ、この縋られている感じ、いいな……なんて思ううちに王座の前にたどり着いた。
「これはこれは。素敵なペットで、妬けてしまうな」
「導王……」
他の来賓相手の時とは違って、魔王が嫌そうな顔をする。
平和ボケした笑顔を向けられるよりこの方が張り合いがあっていい。
「私もちょうど新しいペットを迎えたところなんだ。ほら、ご挨拶しなさい」
斜め後ろにいたオファの背中をそっと押して、魔王の前に出す。
緊張しているのか、少し震えていて……申し訳ないが、ちょっとかわいい。
「あ、あ、あ、あ、あの、ペットの、オファです」
うんうん。人間からすれば怖くて緊張する魔王の前で、上手に挨拶できたな。えらい!
城に帰ったらたっぷり褒めてやろう……そんなのんきなことを考えていて、オファの様子がおかしいことに気が付けなかった。
「よ、よろしくおねがいしますっ!」
……え?
「わっ!」
オファの手にあったワイングラスが傾き、魔王の膝の上に座ったライト様にかかる。
ライト様の銀色の服に、ワインの深紅は良く目立って……え? オファ?
「あ、あ、も、もうしわけございません!」
手の動きはぎこちなかったし、頭を下げるのは早すぎる。
まさか……わざとか?
わざと、ライト様に……魔王のペットに、ワインをかけたのか?
主催の魔王の隣には、最初は、いつものような美形が立っていると思った。
だが、すぐにいつもと同じではないことが解った。
「ライト、もう少し近くにいろ」
「うん」
ライト? 名前か?
いつものように「ニマ」ではないのか?
それにあの笑顔……何でもない時にあそこまでかわいく笑うのか?
どうにも目が離せなくて、ついチラチラと気にしていると、その後も新しいペットはかわいかった。
「あ、魔王さん」
「ん? どうした、ライト?」
「折角のお揃いのブローチが斜めに……はい、直った。かっこいい」
「あぁ。ありがとうライト」
「ふふっ。折角かっこいい魔王さんだから、見た目もちゃんとしないと勿体ないし。……お話の邪魔をしてごめんなさい」
人前で、あんな風に触れてくれるのか?
おそろいのブローチ……自然に「かっこいい」なんて誉め言葉……。
しかも、何と呼んだ?
魔王さん?
魔王様ではなく?
話し方もまるで友だち相手のようだ。
なんだあれは。かわいすぎる。
私もオファにあんな風に接してもらいたい。
あぁ、しかも魔王の……あの、褒められて謙遜しているようで自慢げな顔!
悔しい……。
「魔王さん。ずっと立ってるの疲れちゃった」
「あぁ、気が利かなくて悪かったな。すぐに椅子を用意……」
「魔王さんの膝、座っちゃダメ?」
「ひ……ざ?」
「お行儀悪い?」
「いいに決まっているだろう! かわいいなぁ、ライトは……!」
はぁ? なんだあれ?
人前であんなに甘えてくれるなんて……。
「くそ、うらやましい……」
私もオファにあんな風にしてもらいたい。
いつもクソ真面目な魔王の顔がデレデレに蕩けているのを、いつもとは違う種類の苛立ちを覚えながら眺めていたが……もう他の来賓は挨拶が済んだか。
私も行かないわけにはいかない。
まぁいい。
うちのオファだって間近で見れば目が眩むほどかわいいんだ。
「オファ、そろそろ挨拶に行こう。緊張していると思うが、最初の挨拶さえすれば、あとは無理に話さなくていい。私の横でかわいく笑っていてくれ」
「……はい」
恥ずかしがって前髪を降ろしたままの、オファの柔らかい頭が上下に揺れた。
途中で乾杯用のワイングラスを受け取って王座へ進むと、私のパーティー用のローブと同じ紺色のローブを着たオファは、私に隠れるように半歩遅れてついて来てくれる。
あ、この縋られている感じ、いいな……なんて思ううちに王座の前にたどり着いた。
「これはこれは。素敵なペットで、妬けてしまうな」
「導王……」
他の来賓相手の時とは違って、魔王が嫌そうな顔をする。
平和ボケした笑顔を向けられるよりこの方が張り合いがあっていい。
「私もちょうど新しいペットを迎えたところなんだ。ほら、ご挨拶しなさい」
斜め後ろにいたオファの背中をそっと押して、魔王の前に出す。
緊張しているのか、少し震えていて……申し訳ないが、ちょっとかわいい。
「あ、あ、あ、あ、あの、ペットの、オファです」
うんうん。人間からすれば怖くて緊張する魔王の前で、上手に挨拶できたな。えらい!
城に帰ったらたっぷり褒めてやろう……そんなのんきなことを考えていて、オファの様子がおかしいことに気が付けなかった。
「よ、よろしくおねがいしますっ!」
……え?
「わっ!」
オファの手にあったワイングラスが傾き、魔王の膝の上に座ったライト様にかかる。
ライト様の銀色の服に、ワインの深紅は良く目立って……え? オファ?
「あ、あ、も、もうしわけございません!」
手の動きはぎこちなかったし、頭を下げるのは早すぎる。
まさか……わざとか?
わざと、ライト様に……魔王のペットに、ワインをかけたのか?
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