魔王さんのガチペット

メグル

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番外編3 一番の●●

人間(3)

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「初めまして、マティオラと申します。一八歳です。えっと、精一杯お仕えします! あと、あの、導王様のお望みには何でも応えます!」

 声も甘くてかわいいが、緊張なのか震えている。
 それに、ローブは上等だがとても古いもののようだ。
 肌も爪もボロボロ、髪も傷んでいる。
 昔来てもらったプロの男娼たちは、もっと自分の体を美しく磨いていたと思うが……。
 それに、どうにも態度が魔族に慣れていない。
 私と大臣が戸惑っているのが伝わったのだろう、村長が再び頭を下げた。

「本来なら……魔族様のお相手に慣れた者を献上すべきなのですが、戦争で男娼の需要が減り、魔族様のお相手に慣れた美しい人間がもういません。最初はご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんが、マティオラはとても賢く我慢強い子です。何でも、遠慮なく何でもお申し付けください!」

 そういうことか……。
 あぁ、私は王と言いながら、国民の暮らしの隅々まで見えていなかった。
 人間の主な仕事は、自分たちの小さな村の中での商売や自分たちの食い扶持分の農業と、魔族向けの男娼やペット派遣だ。
 戦争で魔族に余裕がなくなれば、魔族向けの仕事は無くなる。
 資源も回ってこない。インフラもボロボロ。
 村は貧しくなる。
 魔族への最低限の支援は行っていたが……属州は各街に任せていた。
 自分たち魔族のことで精一杯の街が、人間の面倒を見るとは思えない。

「……人間の村への支援が、必要だったな……」
「いえ! 人間は弱く、戦争で何のお役にも立てませんから……私たちは、魔族様のように、魔法も使えませんから……」

 そんな負い目を感じていたのか?
 完全に私の落ち度だ。
 人間という存在がいるのは解っていたではないか。
 魔王のペットをかわいいと思ったし、その……サービスは頼めていないが……定期的に、本で、世話にもなっているのに。

「いや、役に立つ」
「え?」
「お前たちのような、優しく、かわいい種族は……いてくれるだけで私たちも心が穏やかになれる。この国に、欠かせない」
「導王様……!」

 マティオラが大きな目を更に大きく開いた。瞳の色も髪色と同じか。
 素直にかわいいと思う。
 こんな存在を忘れていたなんて……どれほど心に余裕が無かったのだろう。
 この子が側にいてくれれば、私も……そして私以外の国民も、もう人間のことを忘れないかもしれない。
 心に、余裕が持てるかもしれない。
 ……決めた。

「マティオラ、戦後復興のため倹約しているから贅沢はさせてやれない。それに、私は仕事が忙しく、あまり可愛がってやれないかもしれない。それでも……かわいい人間が側にいてくれると、仕事のやる気が出そうだ。側にいてくれるか?」
「そ、そんな! 贅沢がしたくて来たわけではありません! ほんの少しでも……差し出がましいですが……癒しになれれば、嬉しく思います」
「……ありがとう。では、遠慮なくペットとして城に居てもらおう。私の隣の部屋が開いていたな? あそこをマティオラの部屋にしよう」
「はい! 承知致しました!」

 ダリアラもなぜか優しい笑顔で頷いた。

「村長、ありがたく頂く。それと、とても気に入ったから褒美だ。城の食糧庫から麦を持って帰れ」
「あ、ありがとうございます!」

 当分パンが薄くなるかもしれないが、仕方がない。
 どうしても、目の前のかわいい人間を側に置かないといけないと思った。

 同情や憐み、反省……そしてマティオラの覚悟を決めた顔。

 目の前の人間には、今までに出会ったかわいい人間たちとは違ったかわいさを感じた。
 
 それと……折角飼うのなら、あの魔王のペットに負けないくらいかわいく育てて、今度のパーティーでは魔王以上に目立ってやりたい……なんて対抗心も、少しはあった。
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