魔王さんのガチペット

メグル

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番外編3 一番の●●

人間(2)

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 人間の村に一回目の配給が行われた翌週、嘆願書を出してきた村長が、礼を述べにやって来た。
 仕事の手を止めるつもりは無かったので、対応は大臣に任せていたのだが……。

「失礼致します。人間の村の村長が……お礼に、美形の人間をペットとして献上したいと申しております」

 執務室にやって来たダリアラは、とても困惑した様子だった。
 正直、そういう申し出はあり得ると思っていた。
 魔王も近年、似た理由でペットを献上されていたからだ。
 ……国際会議のパーティーで見せびらかされたが、あのニマ様と言うペットはかわいかったな。
 好みではなかったが羨ましかった。
 だが……。

「復興に、魔法石の安定供給に、忙しくしている時期だ。ペットを飼う余裕はないな」

 飼ったとしても、贅沢をさせてやるとか、時間をかけて可愛がってやることはできない。
 かわいい人間のペットは……まぁ……興味はなくはないが……無責任なことはしたくなかった。

「……導王様は、その……豊満な人間がお好みですよね?」
「う……あ、まぁ……そうだな」

 おい、待て、なぜバレている?
 ……あぁ、そうか……戦争前に何度か出張サービスを利用した時の……くそ、そう言うのは黙っておいてくれ。

「村長曰く、導王様のお好みに合わせて、村で一番豊満なかわいい人間の男を選んできたと……いうのですが……その……」

 ダリアラは何とも言えない顔で首をひねる。
 ……王のそういう話は気まずいだろうが……それにしても様子がおかしい。

「解った。直接、私が話をしよう」
「申し訳ございません。よろしくお願い致します」

 頭を下げたダリアラと共に、応接室へと向かった。



「あぁ! 導王様! この度は私共人間のためにありがとうございます!」

 黒いジャケットを着た髪も髭も白い、年配に見える村長が椅子から立ち上がって頭を下げた。
 椅子の横に立っている灰色のローブ姿の青年も。

「……いや、国民を護るのが王の仕事だ。護れていない国民がいるのなら、手を差し伸べるだけだ」
「なんと……なんと立派な……あぁ、まさしく王の中の王でございます!」

 村長が感嘆の声を上げた後、横に立つ青年の背中にそっと手を添えた。

「私ども人間が魔族様に差し上げられるものなど、自らの体で癒しを感じて頂くことくらいしかありませんが……村で一番導王様のお好みにあう者を厳選してまいりました!」
「え?」

 この、くすんだ灰色のローブの青年が……?

「村の美形の中でも……」

 それは……そうかもしれない。魔族が好む美形で、その中でも少し素朴な感じがして美形の中でも私好みの美形だ。光の加減で黒にも見えるこげ茶のくせ毛も、もう少し長い方が好みではあるが、かわいいと思う。

「豊満な体がお好みと伺ったので、こちらのマティオラを献上させて頂きます」

 豊満?
 隣に立つダリアラを見るが、ダリアラもやはり困惑した顔だった。
 目の前の青年は、せいぜい「普通体形」……どちらかと言えばやせ型だった。背も、人間の青年であれば標準くらいか。
 人間の寿命が短いと言っても、ほんの一〇年も前には、もっともっとふくよかなかわいい子がいたではないか……と言いたかったが……。
 よく見れば、村長はもっともっと、ガリガリに痩せていた。
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