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番外編3 一番の●●
戦況報告(2)
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その日、軍事報告に来たのは我が軍の大将ではなかった。
竜角に真新しい傷がつき、鎧の肩が凹み、片手に医療用の魔法陣の布を被せた若い大佐だった。
「わが軍の……大型兵器が破壊されました」
「破壊?」
最近は敵国も「防御」できるようになって来たとは聞いていたが……急に?
だが、他国では真似できない攻撃魔法の大幅増幅と全方向への大規模攻撃が可能な武器だ。破壊までに恐らく多くの兵を削ったはずだ。
例えば、一基落とされたとしても、敵兵を一万削れたとすれば……。
「全一八基中の……一二基、破壊されました」
「……!?」
声も出なかった。
一八のうちの一二? 残りは六……しかも内二基はメンテナンスに時間がかかっているときく。
「なぜ? まさか、こちらの武器の術式を解明され、無力化されたのか?」
解析できないように解析防止魔法をかけたと聞いていたが……それしかない。
混乱した戦場でそこまでできる優秀な魔法士が敵国にいたなんて……。
「違います。もっと、物理的な破壊です。敵兵の、武器周辺への進軍を阻止できませんでした」
「……は?」
大型武器の攻撃力があって、なぜ近づけるんだ?
防御しながらの進軍は無理だ。
あの攻撃を無力化しながら近づけるとすれば……まさか……。
「まさか……黒髪の魔法か?」
強力な……すべての魔力的事象を無効化できる結界魔法を操れる黒髪が、直接魔法を兵にかければ……。
「魔王の国の、若い黒髪が戦場に来ました……っ!」
「魔王の……国の……」
どっちだ?
一番か?
二番か?
「数万の兵すべてに結界魔法を使われ、魔法攻撃は無効化。物理攻撃に頼るしかなくなり……」
そうなれば、兵の少ない我が国が劣勢になるのは解る。
しかし、数万の兵への結界魔法だぞ?
国境に張る結界と違って、動く者に、攻撃に耐えうるほどの高度な結界となると、数時間張り続けられるかどうか……。
「最初はおそらく、後方の砦からの援護魔法でしたが……途中から、黒髪が前線に上がってきたんです」
「前線に……?」
馬鹿だ。
黒髪が前線に出れば必ず狙われる。
後方の砦だとしても、魔力解析ですぐに刺客が放たれるのに、前線なんて……殺してくれと言っているようなものではないか。
「前線で魔法を使われると、効果の持続時間がけた違いで……結局、戦場に出していた大型武器が全て破壊され、大将の首が取られるまで、一度も攻撃魔法を使えませんでした……!」
「なっ……」
「生きて帰れたのは、私を含め五〇〇ほど。そして……破壊された大型武器は敵兵の手に渡ったので、武器内の魔法石も……武器の構造も、敵に……」
大佐が床にひれ伏す。
「申し訳ございません! 導王様からお預かりした大事な武器と兵士を……申し訳ございません!」
この若い大佐の上には、現場のトップである大将まで何人もの上官がいる。
それなのにこの男が来たということは……皆、亡くなったか動けない怪我なのだろう。
この男には、本来なら私に頭を下げるだけの責任はないのに。
竜角に真新しい傷がつき、鎧の肩が凹み、片手に医療用の魔法陣の布を被せた若い大佐だった。
「わが軍の……大型兵器が破壊されました」
「破壊?」
最近は敵国も「防御」できるようになって来たとは聞いていたが……急に?
だが、他国では真似できない攻撃魔法の大幅増幅と全方向への大規模攻撃が可能な武器だ。破壊までに恐らく多くの兵を削ったはずだ。
例えば、一基落とされたとしても、敵兵を一万削れたとすれば……。
「全一八基中の……一二基、破壊されました」
「……!?」
声も出なかった。
一八のうちの一二? 残りは六……しかも内二基はメンテナンスに時間がかかっているときく。
「なぜ? まさか、こちらの武器の術式を解明され、無力化されたのか?」
解析できないように解析防止魔法をかけたと聞いていたが……それしかない。
混乱した戦場でそこまでできる優秀な魔法士が敵国にいたなんて……。
「違います。もっと、物理的な破壊です。敵兵の、武器周辺への進軍を阻止できませんでした」
「……は?」
大型武器の攻撃力があって、なぜ近づけるんだ?
防御しながらの進軍は無理だ。
あの攻撃を無力化しながら近づけるとすれば……まさか……。
「まさか……黒髪の魔法か?」
強力な……すべての魔力的事象を無効化できる結界魔法を操れる黒髪が、直接魔法を兵にかければ……。
「魔王の国の、若い黒髪が戦場に来ました……っ!」
「魔王の……国の……」
どっちだ?
一番か?
二番か?
「数万の兵すべてに結界魔法を使われ、魔法攻撃は無効化。物理攻撃に頼るしかなくなり……」
そうなれば、兵の少ない我が国が劣勢になるのは解る。
しかし、数万の兵への結界魔法だぞ?
国境に張る結界と違って、動く者に、攻撃に耐えうるほどの高度な結界となると、数時間張り続けられるかどうか……。
「最初はおそらく、後方の砦からの援護魔法でしたが……途中から、黒髪が前線に上がってきたんです」
「前線に……?」
馬鹿だ。
黒髪が前線に出れば必ず狙われる。
後方の砦だとしても、魔力解析ですぐに刺客が放たれるのに、前線なんて……殺してくれと言っているようなものではないか。
「前線で魔法を使われると、効果の持続時間がけた違いで……結局、戦場に出していた大型武器が全て破壊され、大将の首が取られるまで、一度も攻撃魔法を使えませんでした……!」
「なっ……」
「生きて帰れたのは、私を含め五〇〇ほど。そして……破壊された大型武器は敵兵の手に渡ったので、武器内の魔法石も……武器の構造も、敵に……」
大佐が床にひれ伏す。
「申し訳ございません! 導王様からお預かりした大事な武器と兵士を……申し訳ございません!」
この若い大佐の上には、現場のトップである大将まで何人もの上官がいる。
それなのにこの男が来たということは……皆、亡くなったか動けない怪我なのだろう。
この男には、本来なら私に頭を下げるだけの責任はないのに。
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