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番外編3 一番の●●
友だち
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劣等感はあったが、一番はどちらが裕福でどちらが貧しいなど気にせず対等に話す男だったので、友だち付き合いを続けることができた。
……気にしないからこそ、無邪気で無神経な発言もあって、勝手に私が気にしてしまうこともあったが……基本的には気の良い友人で、国際会議や式典で顔を合わせる際にはよく話したし何度か食事や「遊び」に行った。
魔王の国で国際会議が開かれるときには、前日から城に泊めてもらって、一番オススメの店の子を呼んで……しっかり遊んだ後は、二人きりで一晩中酒を片手に話をした。
ベッドに胡坐をかいて、寝間着で酒を飲むというような行儀の悪いことが、楽しくて仕方が無かった。
「導王様はあの御年でまだ、結界魔法を御一人で……? すごい方だな。魔王様も一五年前までは御一人でされていたが、最近は俺が手伝っている。正直、あれを一人でなんてゾっとする」
「導王様だって平気でされているわけではない。とても魔法の上手い方だが……結界を張り替えた後の憔悴しきった様子で、私も覚悟はしている」
「結界魔法は黒髪以外に手伝えないから仕方ないが……はぁ、せめて魔力の回復薬があればな」
「黒髪用は難しいだろう。だが……あれば欲しいな」
「次王、お前そういうの得意だろう? 作ってくれよ。俺も欲しい」
「今は他の研究で忙しいが……お前に高値で売りつけられるなら、作ってみても良いな」
「おいおい、そこは友だち割引するところじゃないのか?」
「友だちのお前の願いだから、作って分けてやるんだぞ?」
もう、お互いを「友だち」と言うのにも慣れた。
態度も、話し方も、話すことも、何一つ遠慮せず、心からリラックスできる相手になっていた。
「……なら、仕方がないな。その代わり、飲みやすい薬にしてくれよ? 俺好みのぶどう味とか、チョコレート味とか」
一番の手には、甘いワインの瓶が握られている。
屈強な体に似合わず、甘党なことは……どこまで知られているのだろう。
「パーティーでは苦いエールも美味そうに飲む癖に」
「友だちの前では格好つけるのが面倒だ」
一番は、私の前では苦い酒ではなく甘い酒、渋いお茶ではなくホットチョコレートを飲む。
だから……
「まぁ、そうだな」
「ん?」
おそらく、人前では初めてだろう。
腰近くまで伸ばした自慢の黒髪を一つに束ねて、後頭部で巻いてまとめた。
「歴代の導王様たちが、皆同じ髪型をされていて、黒髪は貴重な魔力媒体の材料にもなるから伸ばしてはいるが……正直に言えば邪魔だ。友だちの前で格好つけるのは面倒だ」
「……! そうか! なんだ、そういう髪型も似合うな。男前が上がったぞ? 俺には負けるが」
「そこの姿見を見て来い。きっと勝敗が変わる。それにしても……お前も魔王様もなぜ短くするんだ? 勿体ないだろう?」
いざという時に、自分の魔力が枯渇してきた時に、黒髪を媒体にして魔法を使うこともできる。
他国の……山の王なんかも、後ろで束ねてはいたが長く伸ばしていた。
一般的に、黒髪は伸ばしておくものだと思うが……。
「いや、あぁ……」
一番は少し歯切れの悪い返事をした後、「まぁ、いいか」と呟いて、少しだけ声を潜めた。
「歴代の魔王や魔王候補は、定期的に切った髪を首都の結界の媒体に使っているんだ。どうしても城に近い場所は狙われやすいだろう?」
防衛上の機密を……いや、それよりも、国民のために使っているということか……?
自分のために、伸ばしておく方が安心なはずの、折角の黒髪を……。
「もう少しくらいは伸ばせるけどな。俺は短い方が似合うし……この結界があるから首都の人気が高く、家賃が高騰しているのは悩ましい所なのだが」
少し真面目な顔で呟いた後、一番の口角が上がる。
「まぁ、俺はこれでいい。長いとエッチの時に邪魔だ」
「くそ……否定できないところが辛い」
「ははっ!」
「ふ、はは!」
私が舌打ちをすると、一番が声を出して笑ったので、釣られて笑い声が出た。
酒が回って、寝間着でベッドの上という楽なシチュエーションで、気心の知れた友だちの前で……こんなにリラックスできる時間なんて人生で何度あるだろう?
真面目な話もする。
でも、馬鹿な話もする。
気を抜いて話ができる。
黒髪の王候補である私の一生で、「友だち」を作れることなどほとんどない。
その貴重な「友だち」が、一番だったことは……まぁ、幸運ではあるだろう。
……気にしないからこそ、無邪気で無神経な発言もあって、勝手に私が気にしてしまうこともあったが……基本的には気の良い友人で、国際会議や式典で顔を合わせる際にはよく話したし何度か食事や「遊び」に行った。
魔王の国で国際会議が開かれるときには、前日から城に泊めてもらって、一番オススメの店の子を呼んで……しっかり遊んだ後は、二人きりで一晩中酒を片手に話をした。
ベッドに胡坐をかいて、寝間着で酒を飲むというような行儀の悪いことが、楽しくて仕方が無かった。
「導王様はあの御年でまだ、結界魔法を御一人で……? すごい方だな。魔王様も一五年前までは御一人でされていたが、最近は俺が手伝っている。正直、あれを一人でなんてゾっとする」
「導王様だって平気でされているわけではない。とても魔法の上手い方だが……結界を張り替えた後の憔悴しきった様子で、私も覚悟はしている」
「結界魔法は黒髪以外に手伝えないから仕方ないが……はぁ、せめて魔力の回復薬があればな」
「黒髪用は難しいだろう。だが……あれば欲しいな」
「次王、お前そういうの得意だろう? 作ってくれよ。俺も欲しい」
「今は他の研究で忙しいが……お前に高値で売りつけられるなら、作ってみても良いな」
「おいおい、そこは友だち割引するところじゃないのか?」
「友だちのお前の願いだから、作って分けてやるんだぞ?」
もう、お互いを「友だち」と言うのにも慣れた。
態度も、話し方も、話すことも、何一つ遠慮せず、心からリラックスできる相手になっていた。
「……なら、仕方がないな。その代わり、飲みやすい薬にしてくれよ? 俺好みのぶどう味とか、チョコレート味とか」
一番の手には、甘いワインの瓶が握られている。
屈強な体に似合わず、甘党なことは……どこまで知られているのだろう。
「パーティーでは苦いエールも美味そうに飲む癖に」
「友だちの前では格好つけるのが面倒だ」
一番は、私の前では苦い酒ではなく甘い酒、渋いお茶ではなくホットチョコレートを飲む。
だから……
「まぁ、そうだな」
「ん?」
おそらく、人前では初めてだろう。
腰近くまで伸ばした自慢の黒髪を一つに束ねて、後頭部で巻いてまとめた。
「歴代の導王様たちが、皆同じ髪型をされていて、黒髪は貴重な魔力媒体の材料にもなるから伸ばしてはいるが……正直に言えば邪魔だ。友だちの前で格好つけるのは面倒だ」
「……! そうか! なんだ、そういう髪型も似合うな。男前が上がったぞ? 俺には負けるが」
「そこの姿見を見て来い。きっと勝敗が変わる。それにしても……お前も魔王様もなぜ短くするんだ? 勿体ないだろう?」
いざという時に、自分の魔力が枯渇してきた時に、黒髪を媒体にして魔法を使うこともできる。
他国の……山の王なんかも、後ろで束ねてはいたが長く伸ばしていた。
一般的に、黒髪は伸ばしておくものだと思うが……。
「いや、あぁ……」
一番は少し歯切れの悪い返事をした後、「まぁ、いいか」と呟いて、少しだけ声を潜めた。
「歴代の魔王や魔王候補は、定期的に切った髪を首都の結界の媒体に使っているんだ。どうしても城に近い場所は狙われやすいだろう?」
防衛上の機密を……いや、それよりも、国民のために使っているということか……?
自分のために、伸ばしておく方が安心なはずの、折角の黒髪を……。
「もう少しくらいは伸ばせるけどな。俺は短い方が似合うし……この結界があるから首都の人気が高く、家賃が高騰しているのは悩ましい所なのだが」
少し真面目な顔で呟いた後、一番の口角が上がる。
「まぁ、俺はこれでいい。長いとエッチの時に邪魔だ」
「くそ……否定できないところが辛い」
「ははっ!」
「ふ、はは!」
私が舌打ちをすると、一番が声を出して笑ったので、釣られて笑い声が出た。
酒が回って、寝間着でベッドの上という楽なシチュエーションで、気心の知れた友だちの前で……こんなにリラックスできる時間なんて人生で何度あるだろう?
真面目な話もする。
でも、馬鹿な話もする。
気を抜いて話ができる。
黒髪の王候補である私の一生で、「友だち」を作れることなどほとんどない。
その貴重な「友だち」が、一番だったことは……まぁ、幸運ではあるだろう。
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