魔王さんのガチペット

番外編２ ○○が好きなメイドと、誕生日祝いの話

約束（３）

「本当？ じゃあ、魔王さんも喜んでくれるよね？」
「はい！ 絶対にお喜びになると思います！ ……でも、このパンツはすでにとてもかわいいと思いますが……これをもっとかわいくして良いんですか！？」

　もっとレースを盛るとか？
　リボン……ビーズ……刺繍も入れて良いかな？
　面積は小さいけど、やりようはいくらでも……

「あ、これはもうこのまま履こうと思ってる。これに合わせる下着……寝間着？ やっぱり下着かな……？」
「合わせる？」
「うん。この世界、ベビードールってある？」
「べびーどーる？」

　ライト様の口から知らない単語が出てくる。
　ライト様には言語翻訳魔法がかかっているから、この世界にある概念なら単語が置き換わるはずだけど、されないということはないんだ。

「無いか……えっと、下着とネグリジェ……寝間着の中間みたいなもので……こういうの」

　ライト様がいつもテーブルに置いてある紙にペンを走らせる。
　相変わらず絵がお上手。
　そして……

「かわいい！」

　形は裾が広がった長めのキャミソール？
　でも、前が開くんだ？
　ひらひらしてかわいい！
　胸元のリボンや裾のフリルがかわいい！

「これね、このリボンをほどくとここが開いて、こっちのリボンだとここが開くようにしたいんだ。脱がせるときに、プレゼントの箱にかかったリボンをほどくような気持ちになるように」
「えぇぇぇぇぇ！ 発想までかわいい！」
「あ、俺のオリジナルじゃないよ？ 元の世界には、そういうのがあっただけ」
「でも、それを選んでくるライト様の……この……なんて言えば良いんだろう？ 魔王様を喜ばせたいみたいなのが……すごくかわいくて、胸がキュンとします！」
「照れるな……でも、そうなんだよね……魔王さんに喜ばれたい」

　ライト様は、ご自身で描かれた絵をじっと……愛しい魔王様を見つめる時のような目で眺める。
　あ……うん。
　かわいい。
　すごくかわいくて、力になりたい！

「絶対に喜ばれますよ！ これ、もっともっとかわいくしましょう！ レースつけて、刺繍して、宝石付けましょう！ 」
「宝石は大げさだけど……動くとふわふわ揺れたりキラキラ光ったりするような飾りは欲しいかな？」
「レースを、こう垂らすとか？ 光を反射する金の糸で刺繍するとか？」
「いいねそれ！ こういうこと？ 刺繍はバラがいいな。魔王さんバラ好きだから」

　赤い柔らかい生地に同じ色のレースを重ねて、金の糸でバラの刺繍……胸元のリボンは黒？ 私はピンクやクリーム色が良いと思うけど、魔王様の黒髪に合わせたお色選びかもしれないな。

「肩紐も、結ぶタイプにしたい。紐でいいけど……リボンにするとかわいすぎかな？」
「そんなことありません！ かわいいです！」
「じゃあリボン」

　楽しく話しながら、絵の中の「ベビードール」というお服はどんどんかわいくなっていく。
　楽しい……しかもこれなら簡単に作れる！ 

「じゃあ、もう少し長くして、その代わり透ける素材で……どう？」
「素敵です！」
「じゃあ。これでお願い。かなり魔王さん好みにできたよね？ 着て見せるのが楽しみだな」

　先日の異世界の衣装よりはシンプルで、私の好みだともっともっとリボンとレースを付けたいけど……うん。充分かわいい！ こんな寝間着？ 下着？ 見たことが無い！
　特別感があっていいなぁ。

「素敵なお誕生日プレゼントになりますね！」
「うん」