魔王さんのガチペット

メグル

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番外編1 ●●が怖い執事長の話

エルフの国(3)

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 イルズ様が森の王様の伴侶?
 しかも、抱く側?
 いよいよ理解が追い付かない。
 人間と結婚?
 同じ種族同士で、種族の繁栄と安寧のために、より安心できる者と共にあるのが結婚だろう?
 異種族……しかも、あまりに存在の異なる人間と?
 は?
 しかも、抱かれる?
 人間をかわいがるためにそばに置く……その延長で伴侶にするのは一〇〇歩譲って解らなくもない。
 しかし、抱かれる?
 エルフが?
 抱かれるなんて、そんな……辛いことを?
 解らない。
 だが……

「……自分たちが正しいと信じてきましたが、外に出るたびに不快な思いをしていましたし、今日も……ここまで話すつもりではありませんでした」
「そっか……嫌な所に踏み込んでごめんね」
「いえ。ライト様のような考えのペットがいると知れて嬉しかったです。私は……ずっと、他の国の考えは下等だと見下すことで自分たちは正当だと思うようにしていました。驕った考えだとは解っていたのに」

 理解はできないが、考え方の違いでイルズ様、森の王様が国際的な場面で居心地が悪かったことは、ライト様のお言葉でよく解った。
 私たちは、無意識のうちに否定し、傷つけていたのか……。
 理解はできないが、別にそれでこちらに不利益があるわけでもない。
 国際的な場では、もっとライト様のように広い視野を持たなければならないな。
 あぁ、やはりライト様は素晴らしい。
 多くのことを教えてくださる。
 ただただ楽しみだと思っていたエルフの国だが、しっかりと見分を広めることができた。
 この話は、どこまで外で話していいのか悩ましいが、ウオルタには聞かせてやろう。
 二人の会話と気づきを心の中でそっと書き留めたが……続くライト様のお言葉に、今聞いた言葉を全部忘れそうになるくらいのインパクトを受けた。

「抱かれるのって、すっごく気持ちいいから……避けている人、勿体ないなとは思う」
「……へ?」

 ……は?
 イルズ様が呆けた顔をするが、おそらく私もだ。
 は?
 抱かれるのが……いい?

「俺、魔王さんと初めてする時も一応確認したんだけど、魔王さんは俺を可愛がりたいって言うし、魔王さんは尽くされるよりも尽くしたい人だから今の関係が正解だと思っているけど……」
「……え? 確認?」

 イルズ様の呟きに心から同意する。
 魔王様相手に確認なんて……いや……すごいと言えば良いのか……。

「俺ばっかり気持ちいい思いさせてもらって申し訳ないなって思うこともあるかな」
「え……? え?」
「イルズちゃんは抱かれたことないの?」
「……ない、です」
「そっか。すっごく気持ちいいのに勿体ないね」

 気持ちいい?
 勿体ない?
 抱かれる側が?
 そんなこと、一度も思ったことが無い。
 私の経験がほぼ強姦だったからかもしれないが。
 今までの人間のペット様だって、魔王様とのセックスの後、辛そうだった。
 抱かれるのは辛いことだ。
 でもライト様が辛くないのは……お優しいから我慢しているのだと思っていた
 好きな人となら気持ちいいとはいうが、それは精神的なことで……ん?

 ライト様は魔王様に愛されているだけでなく、愛していらっしゃるから気持ちいいのか?
 あれ?
 考えれば考えるほどよく解らなくなってきた。

 だめだ、今日はもう、解らないことだらけで……

「……ローズウェルさん」
「え? あ、はい?」

 しまった。
 あまりに衝撃的で、頭の容量を超え、お二人の会話を聞けていなかった。
 執事としてあるまじきことではあるが、ライト様は少し不思議そうにするだけで、すぐにかわいい笑顔に戻った。

「……? イルズちゃんが手紙の宛先を教えてくれたから、俺のも教えたいんだけど……」
「あ、あぁ。でしたら、城の住所で……このように書いて頂ければライト様へ直接のお届けになります」

 慌てて手帳を取り出し、挟んでいた名刺にライト様用の宛先を書き足してお渡しする。
 
「いつでも連絡してね」
「はい」

 ライト様はもう私ではなくイルズ様の方に集中していた。
 執事として失態と言えるが……気にしないでいてくれるようだ。お優しい。
 私も、きちんと頭を切り替えないと。折角のエルフの国、大事なライト様の御付きなのだから。

 それに……

 今、いくら自分の頭の容量と時間を割いたとしても、解らないことは解らない気がした。
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