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番外編1 ●●が怖い執事長の話
怖いこと
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※ライトの影響で幸せを手に入れる話。
※少しシリアスなシーンも出てきますが、激甘ハッピーエンドです。
※後半、ライトもきちんと活躍します。
私にとって「愛される」ということは怖いことだ。
まず、この顔。
所謂「人間顔」と言われるかわいい顔のせいで、今までに一方的な愛を沢山向けられてきた。
こんなことを言えば「モテるなんて羨ましい」という反応もあるかもしれない。
しかし、一方的な愛は暴力と同じだと思う。楽しいものではない。
そしてもう一つ。
私の仕事である「城付きの執事長」の業務の中に、魔王様のペット様のお世話というのがある。
三年ごとに入れ替わるペット様は、多少の差異はあるものの、皆さまとても可愛らしく、従順で、仕事としては楽だ。
ただ、どのペット様も魔族に対して「恐れ多い」……明け透けに言ってしまえば「強い存在だから怖い」と感じているのが見て取れた。
委縮してしまう魔族……しかも魔族の王である魔王様に愛されている姿は、あまり幸せそうには見えなかった。
魔王様のことを尊敬しているし、素晴らしい方だと解っているし、感謝はしていると皆さまおっしゃるが……「愛されて楽しい」とはどなたもおっしゃらなかった。
三〇〇年、そういうペット様の姿を間近で見て来たから。
自分へ、一方的な愛情をさんざんぶつけられてきたから。
私は「愛される」ということを良い意味で受け取れていなかった。
だから、私には伴侶も恋人もいない。
いるのは……
「ローズウェル、愛している」
「人前ですよ。でも……ありがとう」
人前で恋人の振りをしてくれる、ウオルタという親友だけだった。
◆
私の考えが大きく変わった切っ掛けは、お城に新しいペット様である「ライト様」をお迎えしたことだった。
「聞いてくださいよ! ローズウェルさん!!」
午後の休憩時間。
執事とメイドの詰め所で、大テーブルの一番奥の端にメイドのリリリさん、隣に私が腰掛けた瞬間、リリリさんが口を開く。
とろけそうな笑顔で。
「今朝のライト様、すごかったんですよ! 今日のパンって魔王様がお好きなパンじゃないですか? 朝食をお持ちした瞬間に『あ、今日はこのパン? だったら夕食の時に俺のお皿にちょっと多めに乗せて置いてくれる? 魔王さん、自分のお皿から食べるよりも、俺が食べきれないから助けてって言う方が美味しく感じるみたいだから』って!」
「なるほど、そうやって食の細い魔王様にたくさん召し上がって頂くわけですね」
「そうなんです! 天才ですよね! お優しいですよね! なにより……」
「本当に今日も……」
「「ライト様かわいすぎる!」」
二人でライト様のかわいさに悶絶していると、少し離れた場所に座る他のメイドや執事も笑顔でうんうんと頷く。
「はぁ。ライト様、本当にかわいい……私、実家で飼っているペットが世界一かわいいと思うんですが……うちの子が一番だと思うんですが……それは譲れないんですが……ライト様、かわいい……」
ライト様が来られる前は、実家へ帰るたびにペットの人間のかわいいエピソードを仕入れてきて休憩時間中に自慢していたリリリさんがこんなことを言うなんて……いや、気持ちはよく解る。
ライト様は規格外にかわいいのだ。
まず、顔がかわいい。
私自身、人間系のかわいい顔だと昔から言われているが、その何十倍もかわいい。
整っていて、華やかで、引き込まれるような凄味のある、魔族の脳神経を痺れさせるような黄金比の顔立ち。
自分のかわいさをよく理解されていて、磨き上げる努力を惜しまないところ。
かわいく見える角度や表情も理解されているようで、常にかわいいところをみせてくださるのもかわいい。
本当にかわいい。奇跡のかわいさだと思う。
ライト様は異世界から召喚させて頂いた方で、「魔王様の好みに一番合う外見」を選んで召喚したのだから、当然と言えば当然だが、それにしてもかわいい。
このかわいさなら、黙って座っているだけでペットとしての役割は充分、というレベルなのに……。
なんと、内面までかわいい!
通常のペット様であれば一番体が竦むであろう初対面の謁見の間でも、堂々と魔王様とお話をされた。
魔王様を「でっかくてカッコイイ」と笑顔で褒めた瞬間など、かわいすぎて床に崩れ落ちそうだった。
それに、騎士団長との会話も見事な切り返しだった。あいつがライト様に迫った時には、私が間に入って止めなければと思ったのに……。ファイさんやドーラルさんが間に入ってはいたが、ほとんどライト様一人であの場を収めていた。
頭の回転の速さにも驚いたが……なによりも、魔族が怖くないようで驚いた。
その後も、魔王様のことを怖がることなく、歴代のどのペット様よりもなついていた。
一緒に夕食をお召し上がりになったり、魔王様を喜ばせるために人間の村から様々な物を取り寄せたり、魔王様が喜ぶように服装や髪型を整えたり……。
日に日に、魔王様とライト様の距離が縮まるのを、側で見て嬉しく思う反面、ずっと不安だった。
魔王様は歴代のどのペット様よりもライト様を愛しているし、ライト様も魔王様に愛されることが嬉しそうで……それはまるで奇跡のような光景で……。
だからこそ、不安だった。
どんなにかわいくても、どんなに魔王様を愛していても、近々、ライト様は苦しむことになる。
ライト様がお城に来てくださってから約一〇日。そろそろだ。
「……ローズウェルさん、そろそろお薬の用意しておいた方が良いですよね?」
「そうですねリリリさん。私もマッサージの本を読み返しておこうと思います」
不安に思っているのは私だけではなかった。
リリリさんや、他の城仕えの魔族みんなが不安だった。
ライト様はおそらく、数日以内に……魔王様とセックスをされることになるからだ。
※少しシリアスなシーンも出てきますが、激甘ハッピーエンドです。
※後半、ライトもきちんと活躍します。
私にとって「愛される」ということは怖いことだ。
まず、この顔。
所謂「人間顔」と言われるかわいい顔のせいで、今までに一方的な愛を沢山向けられてきた。
こんなことを言えば「モテるなんて羨ましい」という反応もあるかもしれない。
しかし、一方的な愛は暴力と同じだと思う。楽しいものではない。
そしてもう一つ。
私の仕事である「城付きの執事長」の業務の中に、魔王様のペット様のお世話というのがある。
三年ごとに入れ替わるペット様は、多少の差異はあるものの、皆さまとても可愛らしく、従順で、仕事としては楽だ。
ただ、どのペット様も魔族に対して「恐れ多い」……明け透けに言ってしまえば「強い存在だから怖い」と感じているのが見て取れた。
委縮してしまう魔族……しかも魔族の王である魔王様に愛されている姿は、あまり幸せそうには見えなかった。
魔王様のことを尊敬しているし、素晴らしい方だと解っているし、感謝はしていると皆さまおっしゃるが……「愛されて楽しい」とはどなたもおっしゃらなかった。
三〇〇年、そういうペット様の姿を間近で見て来たから。
自分へ、一方的な愛情をさんざんぶつけられてきたから。
私は「愛される」ということを良い意味で受け取れていなかった。
だから、私には伴侶も恋人もいない。
いるのは……
「ローズウェル、愛している」
「人前ですよ。でも……ありがとう」
人前で恋人の振りをしてくれる、ウオルタという親友だけだった。
◆
私の考えが大きく変わった切っ掛けは、お城に新しいペット様である「ライト様」をお迎えしたことだった。
「聞いてくださいよ! ローズウェルさん!!」
午後の休憩時間。
執事とメイドの詰め所で、大テーブルの一番奥の端にメイドのリリリさん、隣に私が腰掛けた瞬間、リリリさんが口を開く。
とろけそうな笑顔で。
「今朝のライト様、すごかったんですよ! 今日のパンって魔王様がお好きなパンじゃないですか? 朝食をお持ちした瞬間に『あ、今日はこのパン? だったら夕食の時に俺のお皿にちょっと多めに乗せて置いてくれる? 魔王さん、自分のお皿から食べるよりも、俺が食べきれないから助けてって言う方が美味しく感じるみたいだから』って!」
「なるほど、そうやって食の細い魔王様にたくさん召し上がって頂くわけですね」
「そうなんです! 天才ですよね! お優しいですよね! なにより……」
「本当に今日も……」
「「ライト様かわいすぎる!」」
二人でライト様のかわいさに悶絶していると、少し離れた場所に座る他のメイドや執事も笑顔でうんうんと頷く。
「はぁ。ライト様、本当にかわいい……私、実家で飼っているペットが世界一かわいいと思うんですが……うちの子が一番だと思うんですが……それは譲れないんですが……ライト様、かわいい……」
ライト様が来られる前は、実家へ帰るたびにペットの人間のかわいいエピソードを仕入れてきて休憩時間中に自慢していたリリリさんがこんなことを言うなんて……いや、気持ちはよく解る。
ライト様は規格外にかわいいのだ。
まず、顔がかわいい。
私自身、人間系のかわいい顔だと昔から言われているが、その何十倍もかわいい。
整っていて、華やかで、引き込まれるような凄味のある、魔族の脳神経を痺れさせるような黄金比の顔立ち。
自分のかわいさをよく理解されていて、磨き上げる努力を惜しまないところ。
かわいく見える角度や表情も理解されているようで、常にかわいいところをみせてくださるのもかわいい。
本当にかわいい。奇跡のかわいさだと思う。
ライト様は異世界から召喚させて頂いた方で、「魔王様の好みに一番合う外見」を選んで召喚したのだから、当然と言えば当然だが、それにしてもかわいい。
このかわいさなら、黙って座っているだけでペットとしての役割は充分、というレベルなのに……。
なんと、内面までかわいい!
通常のペット様であれば一番体が竦むであろう初対面の謁見の間でも、堂々と魔王様とお話をされた。
魔王様を「でっかくてカッコイイ」と笑顔で褒めた瞬間など、かわいすぎて床に崩れ落ちそうだった。
それに、騎士団長との会話も見事な切り返しだった。あいつがライト様に迫った時には、私が間に入って止めなければと思ったのに……。ファイさんやドーラルさんが間に入ってはいたが、ほとんどライト様一人であの場を収めていた。
頭の回転の速さにも驚いたが……なによりも、魔族が怖くないようで驚いた。
その後も、魔王様のことを怖がることなく、歴代のどのペット様よりもなついていた。
一緒に夕食をお召し上がりになったり、魔王様を喜ばせるために人間の村から様々な物を取り寄せたり、魔王様が喜ぶように服装や髪型を整えたり……。
日に日に、魔王様とライト様の距離が縮まるのを、側で見て嬉しく思う反面、ずっと不安だった。
魔王様は歴代のどのペット様よりもライト様を愛しているし、ライト様も魔王様に愛されることが嬉しそうで……それはまるで奇跡のような光景で……。
だからこそ、不安だった。
どんなにかわいくても、どんなに魔王様を愛していても、近々、ライト様は苦しむことになる。
ライト様がお城に来てくださってから約一〇日。そろそろだ。
「……ローズウェルさん、そろそろお薬の用意しておいた方が良いですよね?」
「そうですねリリリさん。私もマッサージの本を読み返しておこうと思います」
不安に思っているのは私だけではなかった。
リリリさんや、他の城仕えの魔族みんなが不安だった。
ライト様はおそらく、数日以内に……魔王様とセックスをされることになるからだ。
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