魔王さんのガチペット

メグル

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第8章 その後の二人 / 嫉妬と未来の話

報告(2)

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「あと、これはお城のみんなにお土産。前に、ほら。ギルドマスターさんが送ってくれて美味しかったところのお菓子。東の国限定販売のものを多めに、いろいろ買って来たからみんなで適当に分けてね?」

 ソファの前のテーブルに箱を一〇個くらい置いていたからバレバレかなと思ったのに、ファイさんたちはまた大声をあげながら感動してくれた。

「こんなにたくさん!」
「お城の人数一〇〇人くらいだよね? 一人二~三個当たると思うんだけど……」
「はい! 充分な数ですし、みんな喜びます!」
「うぅ、城の者のことまで……ライト様は優しさの塊か?」

 俺としては、いつもお世話になっているし、元の世界でいうと「出張に行ってきました。部署のみんなへお土産です」くらいの気持ちなのになぁ……俺の職業柄「出張」は違う意味だし部署とかなかったけど。
 騎士団長さん、感激しすぎ……あ。

「あ、そうそう。騎士団長さん」
「どうした?」

 俺が魔王さんの膝に乗ったまま騎士団長さんを手招きすると、甲冑をガチャガチャ鳴らしながら近づいて、視線を合わすように跪いてくれた。

「東の国で、ドワーフの装飾武器……だっけ? すごい武器のギャラリーに行ったんだけどね」
「あぁ、噂に聞く有名なギャラリーだな。俺も機会があれば一度見て見たいと思っている」

 あのギャラリー、本当に騎士とか兵士には人気なんだ?
 じゃあ、ちょうどいい。

「そこで、人気商品が何か聞いたら『魔王の国の伝説の武器のミニチュアです』って紹介されてね……」
「伝説の……まさか……」

 騎士団長さんの笑顔が引きつる。

「ブルードラゴンソードだっけ? 護衛の騎士さん達に聞いたら、騎士団長さんのおじいちゃんがもらった武器だっていうからビックリした! 詰め所に飾ってあるんだよね? 観に行っていい?」
「あ、あぁ。そういうことか。好きに見に来ればいい。刃を零してあるから持ってみてもかまわないぞ」
「うん。じゃあ後で行くね。……ってわけで、はい。これは騎士団長さんへ特別にあげる」

 ポケットに入れて置いた鎖付きのミニチュアを取り出し、騎士団長さんに差し出した。

「え? あ……っ……!?」
「ふふっ、ビックリした?」

 騎士団長さんは俺の手に乗ったミニチュアの剣を凝視した後、思い切り首を振った。

「あ……こ、これは……いや、こんなもの、もらえない、もらう資格がない!」

 資格が無い、か。
 騎士さんたちが言う通り遠慮しているんだ?

「え? ただのお土産のミニチュアだよ?」
「……だが……それは、俺には……」

 うーん。強情。
 ここは、ちょっとずるいけど……。

「あ、そっか……いらないもの、無理に押し付けちゃだめだよね? ……俺、お土産選ぶセンス無かったね。ごめん……」
「あ……あ、いや、違うんだ、あ、そんな……」

 俺がしおらしく俯くと、騎士団長さんは慌てて首を振る。

「この前の遠征の時、魔王さんのことしっかり護ってくれたお礼もかねて、次もしっかり護ってねって……お願いもあって、買って来たんだけど……余計なお世話だったね。ごめんね?」

 魔王さんの名前まで出すと、騎士団長さんは更に慌てる。

「あ、や、そんな! 余計なわけがない! ライト様の、優しさも、お気持ちも、素晴らしいし、物も、素晴らしいし、その、う、嬉しい!」

 お、きた!

「じゃあ、もらってくれる!?」
「あ……そ、それは……その」

 俺が満面の笑みで顔を上げると、騎士団長さんは少しひるんで……背後の騎士さん達の方を向いた。

「いい……のだろうか」

 騎士さんたちに聞いちゃうんだ?
 そんなの……

「もちろんです、騎士団長!」
「団長の剣にそちらがついていると、私たちの現場での士気も上がります!」
「気が引き締まります!」
「ライト様がここまで言ってくださっていて、とてもかわいいんですから!」

 最後のはよく解らないけど……騎士さんたちの言葉に後押しされるように、騎士団長さんがぎこちなく頷いた。

「……では、ありがたくいただく」

 騎士団長さんはやっと俺の掌からミニチュアを持ち上げてくれて、表情も嬉しそうに緩めてくれた。
 その後ろで、騎士さんはもっともっと嬉しそうに笑っていた。

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