226 / 409
第8章 その後の二人 / 嫉妬と未来の話
報告(2)
しおりを挟む
「あと、これはお城のみんなにお土産。前に、ほら。ギルドマスターさんが送ってくれて美味しかったところのお菓子。東の国限定販売のものを多めに、いろいろ買って来たからみんなで適当に分けてね?」
ソファの前のテーブルに箱を一〇個くらい置いていたからバレバレかなと思ったのに、ファイさんたちはまた大声をあげながら感動してくれた。
「こんなにたくさん!」
「お城の人数一〇〇人くらいだよね? 一人二~三個当たると思うんだけど……」
「はい! 充分な数ですし、みんな喜びます!」
「うぅ、城の者のことまで……ライト様は優しさの塊か?」
俺としては、いつもお世話になっているし、元の世界でいうと「出張に行ってきました。部署のみんなへお土産です」くらいの気持ちなのになぁ……俺の職業柄「出張」は違う意味だし部署とかなかったけど。
騎士団長さん、感激しすぎ……あ。
「あ、そうそう。騎士団長さん」
「どうした?」
俺が魔王さんの膝に乗ったまま騎士団長さんを手招きすると、甲冑をガチャガチャ鳴らしながら近づいて、視線を合わすように跪いてくれた。
「東の国で、ドワーフの装飾武器……だっけ? すごい武器のギャラリーに行ったんだけどね」
「あぁ、噂に聞く有名なギャラリーだな。俺も機会があれば一度見て見たいと思っている」
あのギャラリー、本当に騎士とか兵士には人気なんだ?
じゃあ、ちょうどいい。
「そこで、人気商品が何か聞いたら『魔王の国の伝説の武器のミニチュアです』って紹介されてね……」
「伝説の……まさか……」
騎士団長さんの笑顔が引きつる。
「ブルードラゴンソードだっけ? 護衛の騎士さん達に聞いたら、騎士団長さんのおじいちゃんがもらった武器だっていうからビックリした! 詰め所に飾ってあるんだよね? 観に行っていい?」
「あ、あぁ。そういうことか。好きに見に来ればいい。刃を零してあるから持ってみてもかまわないぞ」
「うん。じゃあ後で行くね。……ってわけで、はい。これは騎士団長さんへ特別にあげる」
ポケットに入れて置いた鎖付きのミニチュアを取り出し、騎士団長さんに差し出した。
「え? あ……っ……!?」
「ふふっ、ビックリした?」
騎士団長さんは俺の手に乗ったミニチュアの剣を凝視した後、思い切り首を振った。
「あ……こ、これは……いや、こんなもの、もらえない、もらう資格がない!」
資格が無い、か。
騎士さんたちが言う通り遠慮しているんだ?
「え? ただのお土産のミニチュアだよ?」
「……だが……それは、俺には……」
うーん。強情。
ここは、ちょっとずるいけど……。
「あ、そっか……いらないもの、無理に押し付けちゃだめだよね? ……俺、お土産選ぶセンス無かったね。ごめん……」
「あ……あ、いや、違うんだ、あ、そんな……」
俺がしおらしく俯くと、騎士団長さんは慌てて首を振る。
「この前の遠征の時、魔王さんのことしっかり護ってくれたお礼もかねて、次もしっかり護ってねって……お願いもあって、買って来たんだけど……余計なお世話だったね。ごめんね?」
魔王さんの名前まで出すと、騎士団長さんは更に慌てる。
「あ、や、そんな! 余計なわけがない! ライト様の、優しさも、お気持ちも、素晴らしいし、物も、素晴らしいし、その、う、嬉しい!」
お、きた!
「じゃあ、もらってくれる!?」
「あ……そ、それは……その」
俺が満面の笑みで顔を上げると、騎士団長さんは少しひるんで……背後の騎士さん達の方を向いた。
「いい……のだろうか」
騎士さんたちに聞いちゃうんだ?
そんなの……
「もちろんです、騎士団長!」
「団長の剣にそちらがついていると、私たちの現場での士気も上がります!」
「気が引き締まります!」
「ライト様がここまで言ってくださっていて、とてもかわいいんですから!」
最後のはよく解らないけど……騎士さんたちの言葉に後押しされるように、騎士団長さんがぎこちなく頷いた。
「……では、ありがたくいただく」
騎士団長さんはやっと俺の掌からミニチュアを持ち上げてくれて、表情も嬉しそうに緩めてくれた。
その後ろで、騎士さんはもっともっと嬉しそうに笑っていた。
ソファの前のテーブルに箱を一〇個くらい置いていたからバレバレかなと思ったのに、ファイさんたちはまた大声をあげながら感動してくれた。
「こんなにたくさん!」
「お城の人数一〇〇人くらいだよね? 一人二~三個当たると思うんだけど……」
「はい! 充分な数ですし、みんな喜びます!」
「うぅ、城の者のことまで……ライト様は優しさの塊か?」
俺としては、いつもお世話になっているし、元の世界でいうと「出張に行ってきました。部署のみんなへお土産です」くらいの気持ちなのになぁ……俺の職業柄「出張」は違う意味だし部署とかなかったけど。
騎士団長さん、感激しすぎ……あ。
「あ、そうそう。騎士団長さん」
「どうした?」
俺が魔王さんの膝に乗ったまま騎士団長さんを手招きすると、甲冑をガチャガチャ鳴らしながら近づいて、視線を合わすように跪いてくれた。
「東の国で、ドワーフの装飾武器……だっけ? すごい武器のギャラリーに行ったんだけどね」
「あぁ、噂に聞く有名なギャラリーだな。俺も機会があれば一度見て見たいと思っている」
あのギャラリー、本当に騎士とか兵士には人気なんだ?
じゃあ、ちょうどいい。
「そこで、人気商品が何か聞いたら『魔王の国の伝説の武器のミニチュアです』って紹介されてね……」
「伝説の……まさか……」
騎士団長さんの笑顔が引きつる。
「ブルードラゴンソードだっけ? 護衛の騎士さん達に聞いたら、騎士団長さんのおじいちゃんがもらった武器だっていうからビックリした! 詰め所に飾ってあるんだよね? 観に行っていい?」
「あ、あぁ。そういうことか。好きに見に来ればいい。刃を零してあるから持ってみてもかまわないぞ」
「うん。じゃあ後で行くね。……ってわけで、はい。これは騎士団長さんへ特別にあげる」
ポケットに入れて置いた鎖付きのミニチュアを取り出し、騎士団長さんに差し出した。
「え? あ……っ……!?」
「ふふっ、ビックリした?」
騎士団長さんは俺の手に乗ったミニチュアの剣を凝視した後、思い切り首を振った。
「あ……こ、これは……いや、こんなもの、もらえない、もらう資格がない!」
資格が無い、か。
騎士さんたちが言う通り遠慮しているんだ?
「え? ただのお土産のミニチュアだよ?」
「……だが……それは、俺には……」
うーん。強情。
ここは、ちょっとずるいけど……。
「あ、そっか……いらないもの、無理に押し付けちゃだめだよね? ……俺、お土産選ぶセンス無かったね。ごめん……」
「あ……あ、いや、違うんだ、あ、そんな……」
俺がしおらしく俯くと、騎士団長さんは慌てて首を振る。
「この前の遠征の時、魔王さんのことしっかり護ってくれたお礼もかねて、次もしっかり護ってねって……お願いもあって、買って来たんだけど……余計なお世話だったね。ごめんね?」
魔王さんの名前まで出すと、騎士団長さんは更に慌てる。
「あ、や、そんな! 余計なわけがない! ライト様の、優しさも、お気持ちも、素晴らしいし、物も、素晴らしいし、その、う、嬉しい!」
お、きた!
「じゃあ、もらってくれる!?」
「あ……そ、それは……その」
俺が満面の笑みで顔を上げると、騎士団長さんは少しひるんで……背後の騎士さん達の方を向いた。
「いい……のだろうか」
騎士さんたちに聞いちゃうんだ?
そんなの……
「もちろんです、騎士団長!」
「団長の剣にそちらがついていると、私たちの現場での士気も上がります!」
「気が引き締まります!」
「ライト様がここまで言ってくださっていて、とてもかわいいんですから!」
最後のはよく解らないけど……騎士さんたちの言葉に後押しされるように、騎士団長さんがぎこちなく頷いた。
「……では、ありがたくいただく」
騎士団長さんはやっと俺の掌からミニチュアを持ち上げてくれて、表情も嬉しそうに緩めてくれた。
その後ろで、騎士さんはもっともっと嬉しそうに笑っていた。
183
お気に入りに追加
3,562
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる