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第8章 その後の二人 / 嫉妬と未来の話
報告(1)
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東の国へ行った翌日。
昨日の出来事を魔王さん一人で話すのは辛いかなと思って執務室についていった。
執務室にはファイさんとローズウェルさん、あと、昨日護衛をしてくれた騎士さん達と騎士団長さんが待っていた。
「心配をかけたな、実は……」
少し心配だったけど、魔王さんは落ち着いた声で、昨日の出来事を淡々と話し始めた。
……執務机ではなく、ソファの方に座って俺を膝に横抱きにした状態だけど。
「……それは……東の国に正式な抗議を入れなければいけませんな!」
魔王さんが昨日の出来事を包み隠さず報告すると、ファイさんが、普段の穏やかな様子から想像もつかないくらい怒ってくれた。これはこれで嬉しいことだと思うんだけど、魔王さんはずっと俺の頭を撫でながらではあるものの冷静だった。
「抗議は必要ない。それに、山の国が落ち着くまで……または東の国に黒髪が生まれるまで、俺が魔術協力をしてやることに決めた」
「はぁ!? こんなことをされて、助けてやるというのですか!? 御心は立派ですが、無礼をはたらいてきた国に対してお優しすぎます!」
ファイさんが叫ぶ横で、ローズウェルさんも騎士団長さんもうんうんと深く頷いている。
そうだよね。俺もどちらかと言うとそっち派。でも……
「もちろんタダとは言わない。俺が魔術協力をする際に協力料に加えて口止め料や慰謝料を上乗せするし、次の会議では俺の議案を通すのに協力してもらう。必ず東の王の票が俺につくとすれば色々とやりやすいだろう?」
魔王さんって本当に王様だよね。
こういうところも好き。
「しかし……」
「東の国の民を見捨てろというのか?」
うんうん。こういうところも好き。
「立派です。とても立派なお考えですが……されたことを考えると……」
「……はぁ。折角ライトが忘れさせてくれたんだ。蒸し返さないでくれ。俺もあまり引きずりたくない」
魔王さんが本当に嫌そうに吐き捨てると、ファイさんが慌てて頭を下げた。
「あ……は、はい! 配慮が足りませんでした! 以後、慎みます。それに……ライト様、ありがとうございます!」
「ん? 俺は魔王さんとイチャイチャしただけだよ? ね?」
「あぁ。ライトがかわいいからだな」
微妙に会話がかみ合っていないんだけど、みんな、魔王さんがご機嫌なのでほっとしたようだった。
「細かい会議の内容は、明日にでも書記からの書簡が届くだろう。今回は特に大きな話はないが、穀物の関税の話と、南の共有港に関しては国内でも対応が必要だ。後日専門家を呼んで会議をしよう」
「承知致しました」
「俺からは以上だが……ライトからは何かあるか?」
「俺? うーん。普通にお友だちと楽しく観光してきただけだからなぁ。あ、そうだ。これいいでしょう? 魔王さんとおそろい!」
今日はいつものシンプルなスタンドカラーのシャツなので、服の上に着けてきた黒い石のネックレスを見せると、ファイさんが少しだけ近づいて表情を和らげた。
「ほう! とても良い物ですね! 体内の魔力循環が良くなりそうです。国内では取れない素材ですし、加工も……素晴らしい! 見た目も機能もライト様にピッタリかと!」
買い物を褒められるのって嬉しいよね。俺が自慢げに笑うと、魔王さんも自分の服の襟元に指を入れて、服の下に身に着けてくれていたお揃いのネックレスをみんなに見せる。
「俺の分も、ライトがわざわざ自分の小遣いで買ってくれたんだ。お揃いだし、体にも良いだろうと」
「なんと!」
ファイさんの明るい叫び声に続いて、ローズウェルさんと騎士団長さんが手で顔を覆いながら呻いた。
「っ、か、かわいい……おそろいなんて……」
「かわいいいぃぃ……わざわざ自分の小遣いでこんな高価なものを……」
「「「天使!」」」
魔王さんの健康は俺の健康だし、俺がそれなりにお金の余裕があることはみんな知っているのにね。
でも、三人の反応がこんなにいいなら、今度の新聞の日記、この話にしよう。
昨日の出来事を魔王さん一人で話すのは辛いかなと思って執務室についていった。
執務室にはファイさんとローズウェルさん、あと、昨日護衛をしてくれた騎士さん達と騎士団長さんが待っていた。
「心配をかけたな、実は……」
少し心配だったけど、魔王さんは落ち着いた声で、昨日の出来事を淡々と話し始めた。
……執務机ではなく、ソファの方に座って俺を膝に横抱きにした状態だけど。
「……それは……東の国に正式な抗議を入れなければいけませんな!」
魔王さんが昨日の出来事を包み隠さず報告すると、ファイさんが、普段の穏やかな様子から想像もつかないくらい怒ってくれた。これはこれで嬉しいことだと思うんだけど、魔王さんはずっと俺の頭を撫でながらではあるものの冷静だった。
「抗議は必要ない。それに、山の国が落ち着くまで……または東の国に黒髪が生まれるまで、俺が魔術協力をしてやることに決めた」
「はぁ!? こんなことをされて、助けてやるというのですか!? 御心は立派ですが、無礼をはたらいてきた国に対してお優しすぎます!」
ファイさんが叫ぶ横で、ローズウェルさんも騎士団長さんもうんうんと深く頷いている。
そうだよね。俺もどちらかと言うとそっち派。でも……
「もちろんタダとは言わない。俺が魔術協力をする際に協力料に加えて口止め料や慰謝料を上乗せするし、次の会議では俺の議案を通すのに協力してもらう。必ず東の王の票が俺につくとすれば色々とやりやすいだろう?」
魔王さんって本当に王様だよね。
こういうところも好き。
「しかし……」
「東の国の民を見捨てろというのか?」
うんうん。こういうところも好き。
「立派です。とても立派なお考えですが……されたことを考えると……」
「……はぁ。折角ライトが忘れさせてくれたんだ。蒸し返さないでくれ。俺もあまり引きずりたくない」
魔王さんが本当に嫌そうに吐き捨てると、ファイさんが慌てて頭を下げた。
「あ……は、はい! 配慮が足りませんでした! 以後、慎みます。それに……ライト様、ありがとうございます!」
「ん? 俺は魔王さんとイチャイチャしただけだよ? ね?」
「あぁ。ライトがかわいいからだな」
微妙に会話がかみ合っていないんだけど、みんな、魔王さんがご機嫌なのでほっとしたようだった。
「細かい会議の内容は、明日にでも書記からの書簡が届くだろう。今回は特に大きな話はないが、穀物の関税の話と、南の共有港に関しては国内でも対応が必要だ。後日専門家を呼んで会議をしよう」
「承知致しました」
「俺からは以上だが……ライトからは何かあるか?」
「俺? うーん。普通にお友だちと楽しく観光してきただけだからなぁ。あ、そうだ。これいいでしょう? 魔王さんとおそろい!」
今日はいつものシンプルなスタンドカラーのシャツなので、服の上に着けてきた黒い石のネックレスを見せると、ファイさんが少しだけ近づいて表情を和らげた。
「ほう! とても良い物ですね! 体内の魔力循環が良くなりそうです。国内では取れない素材ですし、加工も……素晴らしい! 見た目も機能もライト様にピッタリかと!」
買い物を褒められるのって嬉しいよね。俺が自慢げに笑うと、魔王さんも自分の服の襟元に指を入れて、服の下に身に着けてくれていたお揃いのネックレスをみんなに見せる。
「俺の分も、ライトがわざわざ自分の小遣いで買ってくれたんだ。お揃いだし、体にも良いだろうと」
「なんと!」
ファイさんの明るい叫び声に続いて、ローズウェルさんと騎士団長さんが手で顔を覆いながら呻いた。
「っ、か、かわいい……おそろいなんて……」
「かわいいいぃぃ……わざわざ自分の小遣いでこんな高価なものを……」
「「「天使!」」」
魔王さんの健康は俺の健康だし、俺がそれなりにお金の余裕があることはみんな知っているのにね。
でも、三人の反応がこんなにいいなら、今度の新聞の日記、この話にしよう。
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