魔王さんのガチペット

メグル

文字の大きさ
上 下
213 / 409
第8章 その後の二人 / 嫉妬と未来の話

パーティー(4)

しおりを挟む
「導王様、お手紙ではお伝えしたけど、この前は本当にありがとう。魔王さんを通じて、導王様の優しさや導王様の国の素晴らしい魔力回復薬の効果、体で感じたよ。すごく元気出た。導王様って、優しい人なんだね」
「え? あ、ライト様……! あ、それは、いや、国の長として、当然のことをしただけだ!」
「なかなかできないことだと思うよ? それにあの魔力回復薬って導王様が開発した、導王様の国にしかないものなんだよね? すごいなぁ。魔王さんのお城にも備蓄できたら安心なのに……」

 って、ファイさんが言っていたのを思い出したので言ってみたんだけど……。

「……ライト様に必要であれば、売ってやってもいいが……」
「いいの? ありがとう!」

 俺が素直に喜べば導王様は笑顔になって……

「いいのか、導王? 貴重な物だろう?」

 魔王さんが少し申し訳なさそうにすれば、導王様は得意げな顔になる。

「はっ、お前のためではない。ライト様のためだ。それに、黒髪がいる国は少ないからな。大量生産の手筈が整ったのに売り先が少ないから仕方なく売ってやるんだ! 魔力解析防止措置はするから、技術を盗もうとしても無駄だからな!」
「そうか。では、五〇〇ほど買い付けよう」
「え? いや、それは多すぎ……」
「大量生産できるのだろう?」
「うっ……」

 魔王さん、導王様の性格は解り切っているもんね? 交渉は任せて置こう。
 俺はその間に……

「オファちゃんも、この前はありがとう」
「ぴゃい! あ、は、はいぃ!」

 折角キレイになったのに、オファちゃん緊張しすぎだなぁ。
 でも、この反応はかわいくて好き。

「オファちゃん、会うたびにキレイになっていてびっくりする。頑張っているんだ? えらいなぁ」
「あ、ひゃ、あ、あ、あ、あ、ありがとうございます!」

 前のパーティーでは意地悪されたから仕返ししたけど、今日は別に怒っていないし、お礼を言うだけのつもりだったんだけど……。
 どうしようかな……。

「あ、あ、ら、ライト、様?」

 俺が黙って、じっと真剣な顔でオファちゃんの顔や髪を眺めると、オファちゃんは嬉しいと戸惑いがどっちも一〇〇%みたいな顔で唇を震わせる。

「オファちゃんって輪郭と頭の形がキレイだよね」
「へ?」
「髪の毛、短いのも似合いそう。輪郭がスッキリ見えるような髪型とか。あーでも、そうするとローブと合わないか……好き勝手言ってごめんね?」
「り、輪郭……髪……あ、っ、ひゃ、いえ、はい!」

 オファちゃんが自分の顔を両手で包み込みながら熱っぽい視線で俺を見てくれる。
 俺、嘘言ってないからね。
 俺と顔の系統は近いものの、健康的な美形のオファちゃんにはハーフアップより短い方が絶対に似合う。
 俺に対して、妄信的に憧れてくれるのは嬉しいんだけど……さっきのイユリちゃんもそうだけど、俺は俺の正解を目指しているだけだからね。

 あと、今日の反応があまりに良すぎて、この前のパーティーでちょっとやりすぎちゃったかなって反省も込めて……の、つもりだったんだけど……。
 あれ? オファちゃん?
 なんか益々「ライト様素敵……憧れちゃう!」って顔してない?

「わかった。では五〇を金一〇〇で買わせてもらう」

 俺たちがおしゃべりしている間に、魔王さんたちの交渉もまとまったようだ。

「無駄遣いするなよ。ライト様に負担がかかるようならすぐ使うんだぞ!」
「あぁ。心がける」

 導王様秘蔵の質のいい魔力回復薬が手に入るようで何より。
 さて、これでだいたいの参加者とはおしゃべりしたと思うけど……。

「ライト、そろそろ主催へのあいさつに行こう」
「あ、そうか」

 メインとのおしゃべりがまだだった。
 今日は東の王様が主役のはずなのに俺たちが目立って申し訳なかったな……と思いながら、途中で新しいワインのグラスを受け取りつつ、魔王さんと並んで東の王様の王座の前へと向かった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

処理中です...