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第7章 その後の二人 / 魔力切れと覚悟の話
翌日(2)
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あまりかわいくない顔はしたくないんだけど、誰かと深い関係になることに慣れていない魔王さんには優しく教えてあげたいんだけど……どうしてもだめ。ここはもう、正直に不機嫌を隠さずに顔を歪ませる。
「俺、専属化してもらうためにすっごく頑張ったし、すっごく覚悟決めて専属にしてもらったよね? 忘れちゃった?」
「忘れてなどいない! ライトが、とてもとても頑張ってくれた!」
「俺だけじゃないよ。周りの人も、国民のみんなも、いっぱい応援してくれて、たくさん俺の心配をしてくれて、こういうリスクも事前に何度も何度も俺に確認してくれた」
「あ……」
「俺も、反省しているんだけどね。俺が苦しいのを耐えるのは頑張ればいいだけだけど、周りの人が俺の心配やお世話で大変なのは、想定外だった。しんどいのも、すごくしんどかった。でも……」
魔王さんの悲しそうな顔を両手でつかんで、俺から視線を逸らせないようにする。
「でも、みんなが応援してくれているのに逃げたくない。それになにより……苦しいからって魔王さんと何百年もこれからずっと一緒にいられる幸せを手放すなんて嫌だから!」
「ライト……!」
「俺が魔王さんと一緒に居たいって気持ち、『しんどいからやっぱり無理~』って程度だと思ったの? 心外なんだけど?」
「あ、す、すまない、ライト……違うんだ。お前の、一瞬の苦しみでも、俺は……申し訳なくて……」
「ふぅ……」
そうだよね。大好きなペットの俺が苦しそうなら反射的に言っちゃうよね。
仕方ない。だったら……
「……俺、もっともっと魔王さんをかわいがってあげないとだめなんだなぁ」
「え?」
もう言いたいことも言い切ったし、ふっと笑顔に戻ると、魔王さんはちゃんと俺から目線を反らさないまま大きく開いた目を瞬かせる。
「魔王さんの魔力切れは辛かったけど、魔王さんのしんどさを共有できて嬉しかった。これでもっと魔王さんのこと解ってあげられるし、労ってあげるのを頑張ろうって気持ちになれた」
「ライト……」
「俺の中の魔王さんの魔力が枯渇した時は寂しくて欲しくて苦しかったけど……一日中ずっと魔王さんのことばっかり考えるのは、魔王さんのこと大好きだから当然と言うか……枯渇しなくても恋しかったから。それに……」
まだ驚いている魔王さんの唇を、ちょっといやらしく食むように啄んで……。
「魔王さんが、昨日のエッチな俺のこと、かわいいって言ってくれたから……たまには理性無くして魔王さん求めちゃうのも、楽しいかも」
「ライト……!」
「もちろん、魔王さんのことも心配だし、できるだけ、どっちの魔力切れにもならないで欲しいけど」
「ライト……」
「俺、魔王さんのこと大好きだから大丈夫……ってちゃんと魔王さんに解ってもらえるように、これからもっともっと俺が魔王さんのこと大好きなんだって伝えていくからね?」
「ライト……ライト……!」
魔王さん、もう俺の名前しか言えなくなっちゃった?
泣きそうだけど嬉しそう……感動? そんな顔してるからいいか。伝わったはず。
「魔王さん、大好き」
「あ……俺も、俺もだ、ライト。大好きだ……ライトが専属になってくれたことが人生最上の幸せで、もうこれ以上好きになることなんて無いと思ったのに……」
「もっと好きになった?」
「なった!」
魔王さんが力強く頷いてくれる。
そっか。もっと好きになっちゃうんだ?
専属化の時が人生の幸せのピークみたいに思えたけど、好きって気持ちの最高到達点だと思ったけど、そうじゃないんだ。まだまだ上があるんだ。
「ふふっ、よかった」
俺が笑顔になれば、魔王さんも笑顔になってくれる。
いいなぁ。
これから魔王さんとは何百年も一緒にいるんだよね。まだまだこれから色々なことがあるんだろうけど、幸せも好きももっと上があると思うと……。
「俺と魔王さんなら、良いことも悪いことも……ん?」
良いことも悪いことも二人なら楽しく乗り越えて行ける……って言いかけて、これに近いフレーズがあったなと思い出した。
そうだ。
アレだ。
「……ねぇ魔王さん、俺がいた世界で、誰かと家族になる時に誓う言葉があるんだけど……」
「誓う?」
「うん。……病めるときも、健やかなるときも、悲しみのときも、喜びのときも、貧しいときも、富めるときも、これを愛し、これを慰め、これを助け、これを敬い、その命のある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「あぁもちろんだ! 誓う!」
俺の言葉に魔王さんは大きく頷いて、力強く誓ってくれた。
そっか。
これ、誓えちゃうんだ。
結婚の時の、誓いの言葉なのに。
でも、俺も……相手が魔王さんなら……。
「俺も、誓うよ」
少し顔を近づけて囁くと、魔王さんは嬉しそうに俺の唇を啄んで、優しく頭を撫でてくれた。
魔王さんの左手にも、俺とお揃いの指輪がはまっている。
……魔王さんは解っていないと思うけど、これが誓えるって、もう……ね?
俺って、魔王さんにとってそういうことだよね?
名前は「専属ペットと飼い主」だけど俺の中ではもう、魔王さんは……。
「愛しているよ、魔王さん」
「あぁ、俺もだ。愛している」
世界一愛しい家族の魔王さんと、また唇を重ねた。
これからも、俺と魔王さんの時間は長い。
でも、二人ならきっと、何でも幸せにできると思う。
「俺、専属化してもらうためにすっごく頑張ったし、すっごく覚悟決めて専属にしてもらったよね? 忘れちゃった?」
「忘れてなどいない! ライトが、とてもとても頑張ってくれた!」
「俺だけじゃないよ。周りの人も、国民のみんなも、いっぱい応援してくれて、たくさん俺の心配をしてくれて、こういうリスクも事前に何度も何度も俺に確認してくれた」
「あ……」
「俺も、反省しているんだけどね。俺が苦しいのを耐えるのは頑張ればいいだけだけど、周りの人が俺の心配やお世話で大変なのは、想定外だった。しんどいのも、すごくしんどかった。でも……」
魔王さんの悲しそうな顔を両手でつかんで、俺から視線を逸らせないようにする。
「でも、みんなが応援してくれているのに逃げたくない。それになにより……苦しいからって魔王さんと何百年もこれからずっと一緒にいられる幸せを手放すなんて嫌だから!」
「ライト……!」
「俺が魔王さんと一緒に居たいって気持ち、『しんどいからやっぱり無理~』って程度だと思ったの? 心外なんだけど?」
「あ、す、すまない、ライト……違うんだ。お前の、一瞬の苦しみでも、俺は……申し訳なくて……」
「ふぅ……」
そうだよね。大好きなペットの俺が苦しそうなら反射的に言っちゃうよね。
仕方ない。だったら……
「……俺、もっともっと魔王さんをかわいがってあげないとだめなんだなぁ」
「え?」
もう言いたいことも言い切ったし、ふっと笑顔に戻ると、魔王さんはちゃんと俺から目線を反らさないまま大きく開いた目を瞬かせる。
「魔王さんの魔力切れは辛かったけど、魔王さんのしんどさを共有できて嬉しかった。これでもっと魔王さんのこと解ってあげられるし、労ってあげるのを頑張ろうって気持ちになれた」
「ライト……」
「俺の中の魔王さんの魔力が枯渇した時は寂しくて欲しくて苦しかったけど……一日中ずっと魔王さんのことばっかり考えるのは、魔王さんのこと大好きだから当然と言うか……枯渇しなくても恋しかったから。それに……」
まだ驚いている魔王さんの唇を、ちょっといやらしく食むように啄んで……。
「魔王さんが、昨日のエッチな俺のこと、かわいいって言ってくれたから……たまには理性無くして魔王さん求めちゃうのも、楽しいかも」
「ライト……!」
「もちろん、魔王さんのことも心配だし、できるだけ、どっちの魔力切れにもならないで欲しいけど」
「ライト……」
「俺、魔王さんのこと大好きだから大丈夫……ってちゃんと魔王さんに解ってもらえるように、これからもっともっと俺が魔王さんのこと大好きなんだって伝えていくからね?」
「ライト……ライト……!」
魔王さん、もう俺の名前しか言えなくなっちゃった?
泣きそうだけど嬉しそう……感動? そんな顔してるからいいか。伝わったはず。
「魔王さん、大好き」
「あ……俺も、俺もだ、ライト。大好きだ……ライトが専属になってくれたことが人生最上の幸せで、もうこれ以上好きになることなんて無いと思ったのに……」
「もっと好きになった?」
「なった!」
魔王さんが力強く頷いてくれる。
そっか。もっと好きになっちゃうんだ?
専属化の時が人生の幸せのピークみたいに思えたけど、好きって気持ちの最高到達点だと思ったけど、そうじゃないんだ。まだまだ上があるんだ。
「ふふっ、よかった」
俺が笑顔になれば、魔王さんも笑顔になってくれる。
いいなぁ。
これから魔王さんとは何百年も一緒にいるんだよね。まだまだこれから色々なことがあるんだろうけど、幸せも好きももっと上があると思うと……。
「俺と魔王さんなら、良いことも悪いことも……ん?」
良いことも悪いことも二人なら楽しく乗り越えて行ける……って言いかけて、これに近いフレーズがあったなと思い出した。
そうだ。
アレだ。
「……ねぇ魔王さん、俺がいた世界で、誰かと家族になる時に誓う言葉があるんだけど……」
「誓う?」
「うん。……病めるときも、健やかなるときも、悲しみのときも、喜びのときも、貧しいときも、富めるときも、これを愛し、これを慰め、これを助け、これを敬い、その命のある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「あぁもちろんだ! 誓う!」
俺の言葉に魔王さんは大きく頷いて、力強く誓ってくれた。
そっか。
これ、誓えちゃうんだ。
結婚の時の、誓いの言葉なのに。
でも、俺も……相手が魔王さんなら……。
「俺も、誓うよ」
少し顔を近づけて囁くと、魔王さんは嬉しそうに俺の唇を啄んで、優しく頭を撫でてくれた。
魔王さんの左手にも、俺とお揃いの指輪がはまっている。
……魔王さんは解っていないと思うけど、これが誓えるって、もう……ね?
俺って、魔王さんにとってそういうことだよね?
名前は「専属ペットと飼い主」だけど俺の中ではもう、魔王さんは……。
「愛しているよ、魔王さん」
「あぁ、俺もだ。愛している」
世界一愛しい家族の魔王さんと、また唇を重ねた。
これからも、俺と魔王さんの時間は長い。
でも、二人ならきっと、何でも幸せにできると思う。
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