185 / 409
第7章 その後の二人 / 魔力切れと覚悟の話
19~21日目
しおりを挟む
魔王さんが遠征に出かけて一九日目。
やっと一点の迷いもなく「元気」と言える体調になった。
違和感もないし、しんどさもない。
「魔王さんも全快ってことだよね。よかった……」
安心だし、食欲があるからご飯が美味しいし、無理しない程度の筋トレもできたし、まだ俺の中の魔王さんの魔力の枯渇は感じないし、絶好調。
ただ……先日もそうだったけど、体の心配がなくなると……
「魔王さん……」
寂しい。
早く会いたい。
恋しい。
魔王さん……。
そんなことばかり考えてしまった。
◆
魔王さんが遠征にでかけて二〇日目。
夕方ごろに連絡が入って、魔王さんは導王様のお城を出て、明日からお仕事の続きを始めるらしい。
体調で解っていたけど、お仕事できるくらい元気なのは嬉しいし、お仕事が終われば帰って来てくれるんだから、会える日へのカウントダウンだと思うと一層嬉しい。
でも……
「魔王さん……」
寂しい。
早く会いたい。
恋しい。
魔王さん……。
昨日も同じことを想っていたけど……。
「魔王さん……魔王さん……」
なんだろう。
昨日よりも……。
もっと寂しい。
もっと早く会いたい。
もっと恋しい。
魔王さん……魔王さん……魔王さん……!
◆
魔王さんが遠征に出かけて二一日目。
もう気のせいじゃない。
朝、起きた瞬間から頭の中が魔王さんでいっぱいだった。
「魔王さん……」
身体がしんどいわけじゃないからベッドから起き上がって、毎日のルーティンはこなすんだけど……。
「魔王さん……」
食事中も。
「魔王さん……」
筋トレをしていても。
「魔王さん……」
新聞を読んでいても。
「魔王さん……」
体調の経過観察をしてもらっていても。
ずっとずっと頭の中は魔王さんでいっぱいだった。
「ライト様……もしかして……」
夕食を運んできてくれたローズウェルさんに、普段通りの笑顔を向けたつもりだったけど……どうやら態度にも出ていたらしい。
「魔王様の魔力が、枯渇して……?」
心配そうに言われた言葉で、諦めがついた。
やっぱりそうだよね。
これ、気のせいじゃない。
寂しいからだけじゃない。
そういうことだよね。
「魔王さんが恋しい……」
会いたい。
顔が見たい。
声が聴きたい。
……それ以上に、体液注がれたい。
「っ、ライト様……!」
ローズウェルさんがなぜか顔を赤くする。
「そのお顔は……っ……そんなお顔は、見せては……」
「……? なに? 俺、変な顔してる?」
魔王さんに見せられないような、変な顔してる?
だったら嫌だな……でも、表情なんて気にする余裕ない。
どんな顔か自分で解らないけど、勝手にこの顔になるのに。
「……ご主人様が恋しくて、欲しくてたまらない、最高に……その……かわいい、ペットの顔、です……」
……?
じゃあ、いいんじゃないの?
なんで?
俺、なにか悪い?
戸惑いながら首をかしげると、ローズウェルさんは唇を噛みながら上を向いてしまう。
「っ……ライト様、普段はご自身がかわいすぎる自覚をもってらっしゃるのに……!」
「……俺、今、かわいすぎ?」
「はい。私だからギリギリ会話ができていますが、他の者だとかわいすぎて『かわいい』しか言えなくなるレベルです。しかもかわいいのに、かわいそうで……でも私が助けてあげられることが無くて……正直、心臓が色々な意味で痛いです」
なんか……あれ?
ローズウェルさんの言っていることがあまり頭に入らない。
とにかく俺のせいで辛いんだよね?
「ごめん……」
「うっ……あ、あやまらないで……ください。更にかわいそうかわいい……一番お辛いのは、ライト様なのに……くっ……少々、失礼します」
ローズウェルさんが一度俺に背を向けて、何度か深呼吸をする。
「ふぅーーーー……失礼いたしました」
あ、執事らしい顔に戻ってる。
プロだな。
「ライト様、気休め程度かもしれませんが、魔王様に魔力を込めた体液を送って頂くように手配します」
いいの!?
欲しい!
……っと、一瞬思ったけど……。
「欲しいけど、いいよ。我慢する。魔王さん、ただでさえ魔力を回復したてで大きなお仕事しないといけなくて大変なのに。俺に分けなくていい」
結解張るのって魔力の消費量多いらしいし……。
俺のために魔力使って魔王さんがしんどくなるの嫌だし。
「しかし……」
「魔王さん欲しいけど、迷惑かけるの嫌。それに、俺に魔力送ってもらう分、作業が遅れて帰ってくるの遅くなったら嫌。だから……ごめん。当分俺、こんなのかもしれないけど、ごめん」
「ライト様……うっ、ぐっ、か、か、か、かわ、くぁ、いい、かわいい……! こんなに欲しがっているのに、魔王様の、心配……こんな、いじらしい、かわいい、なんてかわいい、かっわいいい……!」
ローズウェルさんがここまでなるの、珍しい。
俺、もしかして想像よりやばい?
でも……魔王さんが帰ってくる予定まであと四日くらい?
耐えるしかない。
耐えるしかないけど……早く会いたい。
会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。
やっと一点の迷いもなく「元気」と言える体調になった。
違和感もないし、しんどさもない。
「魔王さんも全快ってことだよね。よかった……」
安心だし、食欲があるからご飯が美味しいし、無理しない程度の筋トレもできたし、まだ俺の中の魔王さんの魔力の枯渇は感じないし、絶好調。
ただ……先日もそうだったけど、体の心配がなくなると……
「魔王さん……」
寂しい。
早く会いたい。
恋しい。
魔王さん……。
そんなことばかり考えてしまった。
◆
魔王さんが遠征にでかけて二〇日目。
夕方ごろに連絡が入って、魔王さんは導王様のお城を出て、明日からお仕事の続きを始めるらしい。
体調で解っていたけど、お仕事できるくらい元気なのは嬉しいし、お仕事が終われば帰って来てくれるんだから、会える日へのカウントダウンだと思うと一層嬉しい。
でも……
「魔王さん……」
寂しい。
早く会いたい。
恋しい。
魔王さん……。
昨日も同じことを想っていたけど……。
「魔王さん……魔王さん……」
なんだろう。
昨日よりも……。
もっと寂しい。
もっと早く会いたい。
もっと恋しい。
魔王さん……魔王さん……魔王さん……!
◆
魔王さんが遠征に出かけて二一日目。
もう気のせいじゃない。
朝、起きた瞬間から頭の中が魔王さんでいっぱいだった。
「魔王さん……」
身体がしんどいわけじゃないからベッドから起き上がって、毎日のルーティンはこなすんだけど……。
「魔王さん……」
食事中も。
「魔王さん……」
筋トレをしていても。
「魔王さん……」
新聞を読んでいても。
「魔王さん……」
体調の経過観察をしてもらっていても。
ずっとずっと頭の中は魔王さんでいっぱいだった。
「ライト様……もしかして……」
夕食を運んできてくれたローズウェルさんに、普段通りの笑顔を向けたつもりだったけど……どうやら態度にも出ていたらしい。
「魔王様の魔力が、枯渇して……?」
心配そうに言われた言葉で、諦めがついた。
やっぱりそうだよね。
これ、気のせいじゃない。
寂しいからだけじゃない。
そういうことだよね。
「魔王さんが恋しい……」
会いたい。
顔が見たい。
声が聴きたい。
……それ以上に、体液注がれたい。
「っ、ライト様……!」
ローズウェルさんがなぜか顔を赤くする。
「そのお顔は……っ……そんなお顔は、見せては……」
「……? なに? 俺、変な顔してる?」
魔王さんに見せられないような、変な顔してる?
だったら嫌だな……でも、表情なんて気にする余裕ない。
どんな顔か自分で解らないけど、勝手にこの顔になるのに。
「……ご主人様が恋しくて、欲しくてたまらない、最高に……その……かわいい、ペットの顔、です……」
……?
じゃあ、いいんじゃないの?
なんで?
俺、なにか悪い?
戸惑いながら首をかしげると、ローズウェルさんは唇を噛みながら上を向いてしまう。
「っ……ライト様、普段はご自身がかわいすぎる自覚をもってらっしゃるのに……!」
「……俺、今、かわいすぎ?」
「はい。私だからギリギリ会話ができていますが、他の者だとかわいすぎて『かわいい』しか言えなくなるレベルです。しかもかわいいのに、かわいそうで……でも私が助けてあげられることが無くて……正直、心臓が色々な意味で痛いです」
なんか……あれ?
ローズウェルさんの言っていることがあまり頭に入らない。
とにかく俺のせいで辛いんだよね?
「ごめん……」
「うっ……あ、あやまらないで……ください。更にかわいそうかわいい……一番お辛いのは、ライト様なのに……くっ……少々、失礼します」
ローズウェルさんが一度俺に背を向けて、何度か深呼吸をする。
「ふぅーーーー……失礼いたしました」
あ、執事らしい顔に戻ってる。
プロだな。
「ライト様、気休め程度かもしれませんが、魔王様に魔力を込めた体液を送って頂くように手配します」
いいの!?
欲しい!
……っと、一瞬思ったけど……。
「欲しいけど、いいよ。我慢する。魔王さん、ただでさえ魔力を回復したてで大きなお仕事しないといけなくて大変なのに。俺に分けなくていい」
結解張るのって魔力の消費量多いらしいし……。
俺のために魔力使って魔王さんがしんどくなるの嫌だし。
「しかし……」
「魔王さん欲しいけど、迷惑かけるの嫌。それに、俺に魔力送ってもらう分、作業が遅れて帰ってくるの遅くなったら嫌。だから……ごめん。当分俺、こんなのかもしれないけど、ごめん」
「ライト様……うっ、ぐっ、か、か、か、かわ、くぁ、いい、かわいい……! こんなに欲しがっているのに、魔王様の、心配……こんな、いじらしい、かわいい、なんてかわいい、かっわいいい……!」
ローズウェルさんがここまでなるの、珍しい。
俺、もしかして想像よりやばい?
でも……魔王さんが帰ってくる予定まであと四日くらい?
耐えるしかない。
耐えるしかないけど……早く会いたい。
会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。
185
お気に入りに追加
3,596
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。
悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。
逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位
2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位
2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位
2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位
2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位
2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位
2024/08/14……連載開始
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる