魔王さんのガチペット

回路メグル

文字の大きさ
上 下
180 / 409
第7章 その後の二人 / 魔力切れと覚悟の話

12日目(4)

しおりを挟む
「はい。『魔王が魔力切れなんて起こしたら、天使のようにかわいいライト様が苦しむんだぞ! 馬鹿か!? 何のために専属化したんだ! この無責任な飼い主め! こんなクズ組織のテロくらい防げなくてどうする!』と」
「あー……」
「更に『魔王を助けたんじゃない。ライト様が苦しんでいるだろうから助けたんだ。それに、クズ組織だが一応うちの国民による攻撃だからな。王の義務としてだ。勘違いするなよ! 治療費は請求するからな!』とのことです」
「うーん」

 俺のことを心配してくれているわけで……でも……反応に困る。

「また、導王様のペットのオファ様からも『魔王様がとても恐ろしい姿で驚きました。このように醜いお姿でライト様の隣に立つだなんてライト様のファンとして許せません。ライト様にふさわしい美しいお姿にお戻りいただくまでは、こちらの国にいていただきます』と……こちらとしても、人型を保てない状況での移動は負担が大きいので、滞在させて頂けるなら願っても無いことなのですが……」
「そうだよね、ありがたいことだし、俺を心配してくれているし、治療費を払うのは当然だし……」
「はい……」
「感謝しないと、ねー……」
「はい……」

 俺もローズウェルさんも、苦笑いを浮かべるしかなかった。

「あ、そうだ。俺の体の違和感って、魔王さんの中に導王様の魔力が入っているから?」
「そうです。魔力回復薬による違和感もあるかもしれませんが、おそらく導王様の魔力付与の方が違和感が強いはずです。推計ですが、現在三〇パーセントほど導王様の魔力が混ざった状態ですので、あと数日は違和感があるかもしれません。魔王様が回復するにつれて、導王様の魔力は薄まり……抜けきった頃には魔王様も結解業務に戻れるのではないでしょうか」
「ん? 魔力沢山もらったらすぐに動けるんじゃないの?」
「いえ、えっと……」

 ローズウェルさんが少し言葉に詰まると、赤髪の魔族さんが申し訳なさそうに続けてくれた。

「魔力回復薬や他人の魔力で体を満たすと、生命維持や簡単な魔法使用には問題ないのですが……人型の維持や大きな魔法を使うには、自分の魔力が回復しないといけませんので……」
「それって……もしかして……?」

 ローズウェルさんと赤髪の魔族さんが顔を見合わせた後、やはり申し訳なさそうに口を開く。

「結解魔法が使用できるほど回復し、残りの結解張替え作業を行ってから帰城するとなると……」
「あと一〇日以上かかると思われます」
「え!?」

 一〇日?
 そんなに?
 ずっと寂しくて、でも、やっと、魔王さんに会えると思ったのに……そんなにまだ会えないの?

「……俺が、会いに行くとか……無し?」
「すみません、ライト様が城外に出て頂くための結解の変更や、警備のことを考えると……人員の余裕が……」
「あ、うん。そうだよね。ごめん、みんな忙しくて大変な時に我儘言って……!」
「我儘だなんて、そんな!」
「そうですよ! 専属ペットとして当然の気持ちです!」

 専属……?
 ん?
 俺、魔王さんと会えなくて寂しいことばかり気にしていたけど……。

「それに、専属化が解除されるにはまだまだ余裕がありますが……」

 そうだ。
 魔王さんの魔力切れも大変だけど……。
 俺に注いでもらった魔王さんの魔力もどんどん薄まっていくわけで……。

 専属化のリスクとして、何度も何度も、魔王さんからも、ローズウェルさんからも、エンラキさんからも、他の人からも、しつこいくらいに言われていた。

「ライト様には、頑張って頂かないといけないかもしれません」

 精神的にももう寂しいのに……体も、魔王さんを求めるようになるんだよね?
 やばい。
 こういうリスクも覚悟していたけど……。
 俺……耐えられる?
 だって、俺、俺……ただでさえ、魔王さんが恋しくて恋しくて、仕方が無いのに。

しおりを挟む
感想 117

あなたにおすすめの小説

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

花屋の息子

きの
BL
ひょんなことから異世界転移してしまった、至って普通の男子高校生、橘伊織。 森の中を一人彷徨っていると運良く優しい夫婦に出会い、ひとまずその世界で過ごしていくことにするが___? 瞳を見て相手の感情がわかる能力を持つ、普段は冷静沈着無愛想だけど受けにだけ甘くて溺愛な攻め×至って普通の男子高校生な受け の、お話です。 不定期更新。大体一週間間隔のつもりです。 攻めが出てくるまでちょっとかかります。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

処理中です...