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第7章 その後の二人 / 魔力切れと覚悟の話
12日目(4)
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「はい。『魔王が魔力切れなんて起こしたら、天使のようにかわいいライト様が苦しむんだぞ! 馬鹿か!? 何のために専属化したんだ! この無責任な飼い主め! こんなクズ組織のテロくらい防げなくてどうする!』と」
「あー……」
「更に『魔王を助けたんじゃない。ライト様が苦しんでいるだろうから助けたんだ。それに、クズ組織だが一応うちの国民による攻撃だからな。王の義務としてだ。勘違いするなよ! 治療費は請求するからな!』とのことです」
「うーん」
俺のことを心配してくれているわけで……でも……反応に困る。
「また、導王様のペットのオファ様からも『魔王様がとても恐ろしい姿で驚きました。このように醜いお姿でライト様の隣に立つだなんてライト様のファンとして許せません。ライト様にふさわしい美しいお姿にお戻りいただくまでは、こちらの国にいていただきます』と……こちらとしても、人型を保てない状況での移動は負担が大きいので、滞在させて頂けるなら願っても無いことなのですが……」
「そうだよね、ありがたいことだし、俺を心配してくれているし、治療費を払うのは当然だし……」
「はい……」
「感謝しないと、ねー……」
「はい……」
俺もローズウェルさんも、苦笑いを浮かべるしかなかった。
「あ、そうだ。俺の体の違和感って、魔王さんの中に導王様の魔力が入っているから?」
「そうです。魔力回復薬による違和感もあるかもしれませんが、おそらく導王様の魔力付与の方が違和感が強いはずです。推計ですが、現在三〇パーセントほど導王様の魔力が混ざった状態ですので、あと数日は違和感があるかもしれません。魔王様が回復するにつれて、導王様の魔力は薄まり……抜けきった頃には魔王様も結解業務に戻れるのではないでしょうか」
「ん? 魔力沢山もらったらすぐに動けるんじゃないの?」
「いえ、えっと……」
ローズウェルさんが少し言葉に詰まると、赤髪の魔族さんが申し訳なさそうに続けてくれた。
「魔力回復薬や他人の魔力で体を満たすと、生命維持や簡単な魔法使用には問題ないのですが……人型の維持や大きな魔法を使うには、自分の魔力が回復しないといけませんので……」
「それって……もしかして……?」
ローズウェルさんと赤髪の魔族さんが顔を見合わせた後、やはり申し訳なさそうに口を開く。
「結解魔法が使用できるほど回復し、残りの結解張替え作業を行ってから帰城するとなると……」
「あと一〇日以上かかると思われます」
「え!?」
一〇日?
そんなに?
ずっと寂しくて、でも、やっと、魔王さんに会えると思ったのに……そんなにまだ会えないの?
「……俺が、会いに行くとか……無し?」
「すみません、ライト様が城外に出て頂くための結解の変更や、警備のことを考えると……人員の余裕が……」
「あ、うん。そうだよね。ごめん、みんな忙しくて大変な時に我儘言って……!」
「我儘だなんて、そんな!」
「そうですよ! 専属ペットとして当然の気持ちです!」
専属……?
ん?
俺、魔王さんと会えなくて寂しいことばかり気にしていたけど……。
「それに、専属化が解除されるにはまだまだ余裕がありますが……」
そうだ。
魔王さんの魔力切れも大変だけど……。
俺に注いでもらった魔王さんの魔力もどんどん薄まっていくわけで……。
専属化のリスクとして、何度も何度も、魔王さんからも、ローズウェルさんからも、エンラキさんからも、他の人からも、しつこいくらいに言われていた。
「ライト様には、頑張って頂かないといけないかもしれません」
精神的にももう寂しいのに……体も、魔王さんを求めるようになるんだよね?
やばい。
こういうリスクも覚悟していたけど……。
俺……耐えられる?
だって、俺、俺……ただでさえ、魔王さんが恋しくて恋しくて、仕方が無いのに。
「あー……」
「更に『魔王を助けたんじゃない。ライト様が苦しんでいるだろうから助けたんだ。それに、クズ組織だが一応うちの国民による攻撃だからな。王の義務としてだ。勘違いするなよ! 治療費は請求するからな!』とのことです」
「うーん」
俺のことを心配してくれているわけで……でも……反応に困る。
「また、導王様のペットのオファ様からも『魔王様がとても恐ろしい姿で驚きました。このように醜いお姿でライト様の隣に立つだなんてライト様のファンとして許せません。ライト様にふさわしい美しいお姿にお戻りいただくまでは、こちらの国にいていただきます』と……こちらとしても、人型を保てない状況での移動は負担が大きいので、滞在させて頂けるなら願っても無いことなのですが……」
「そうだよね、ありがたいことだし、俺を心配してくれているし、治療費を払うのは当然だし……」
「はい……」
「感謝しないと、ねー……」
「はい……」
俺もローズウェルさんも、苦笑いを浮かべるしかなかった。
「あ、そうだ。俺の体の違和感って、魔王さんの中に導王様の魔力が入っているから?」
「そうです。魔力回復薬による違和感もあるかもしれませんが、おそらく導王様の魔力付与の方が違和感が強いはずです。推計ですが、現在三〇パーセントほど導王様の魔力が混ざった状態ですので、あと数日は違和感があるかもしれません。魔王様が回復するにつれて、導王様の魔力は薄まり……抜けきった頃には魔王様も結解業務に戻れるのではないでしょうか」
「ん? 魔力沢山もらったらすぐに動けるんじゃないの?」
「いえ、えっと……」
ローズウェルさんが少し言葉に詰まると、赤髪の魔族さんが申し訳なさそうに続けてくれた。
「魔力回復薬や他人の魔力で体を満たすと、生命維持や簡単な魔法使用には問題ないのですが……人型の維持や大きな魔法を使うには、自分の魔力が回復しないといけませんので……」
「それって……もしかして……?」
ローズウェルさんと赤髪の魔族さんが顔を見合わせた後、やはり申し訳なさそうに口を開く。
「結解魔法が使用できるほど回復し、残りの結解張替え作業を行ってから帰城するとなると……」
「あと一〇日以上かかると思われます」
「え!?」
一〇日?
そんなに?
ずっと寂しくて、でも、やっと、魔王さんに会えると思ったのに……そんなにまだ会えないの?
「……俺が、会いに行くとか……無し?」
「すみません、ライト様が城外に出て頂くための結解の変更や、警備のことを考えると……人員の余裕が……」
「あ、うん。そうだよね。ごめん、みんな忙しくて大変な時に我儘言って……!」
「我儘だなんて、そんな!」
「そうですよ! 専属ペットとして当然の気持ちです!」
専属……?
ん?
俺、魔王さんと会えなくて寂しいことばかり気にしていたけど……。
「それに、専属化が解除されるにはまだまだ余裕がありますが……」
そうだ。
魔王さんの魔力切れも大変だけど……。
俺に注いでもらった魔王さんの魔力もどんどん薄まっていくわけで……。
専属化のリスクとして、何度も何度も、魔王さんからも、ローズウェルさんからも、エンラキさんからも、他の人からも、しつこいくらいに言われていた。
「ライト様には、頑張って頂かないといけないかもしれません」
精神的にももう寂しいのに……体も、魔王さんを求めるようになるんだよね?
やばい。
こういうリスクも覚悟していたけど……。
俺……耐えられる?
だって、俺、俺……ただでさえ、魔王さんが恋しくて恋しくて、仕方が無いのに。
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