魔王さんのガチペット

第７章 その後の二人 / 魔力切れと覚悟の話

１０日目

　魔王さんが遠征にでかけて一〇日目。

　昨夜一人でしたおかげで、寂しさはつのったけど、体はスッキリした
　それに、体調がいいから魔王さんの調子も良さそう。

「あと四日……あとたった四日我慢すれば魔王さんに会える。会える……」

　自分に言い聞かせながらいつもの筋トレやストレッチをしていると、ローズウェルさんが珍しく昼過ぎに部屋にやって来た。
　
「ライト様、お手紙が届いていますよ」
「手紙？」

　ローズウェルさんが手紙を置いてくれた机に近づく。
　新聞社の仕事関係？
　シンくんとイルズちゃんから？
　ファンレターみたいなものはもっとたくさんまとめて渡されるし……。

「……？」

　ソファに座って手紙を手に取ると、宛名のところには住所も何もなく「ライトへ」とだけ書かれていた。
　俺のこと、呼び捨てにするのって誰だろう？
　俺に届く物には全部検査が入るから危ない物ではないと思うけど……。

「誰から……あ、もしかして……？」

　俺、察しが良いはずなんだけど……今までもらったことが無くて、やっと気が付いた。

「はい、魔王様からです。補給物資と入れ替えで戻された荷物に入っていました。……それでは、私はこれで失礼いたします」
「うん。ありがとう！」

　俺がもう手紙に夢中で、一人でゆっくり読みたいのが伝わっちゃったかな？
　ローズウェルさんは笑顔で部屋を出て行った。

「魔王さんから手紙をもらうなんて、初めてだ……！」

　俺は時々だけど、仕事が忙しい魔王さんの差し入れに、メモ程度の手紙を付けることはある。
　でも、魔王さんからもらったことは無い。
　離れるのは寂しいけど、手紙がもらえるなんて、こんな機会しかない！
　
「遠征、悪くないな」

　現金だけど、うきうきしながら封筒を開ける。
　中には文字がぎっしり詰まった白い便箋が二枚も入っている。
　マメだなぁ。
　お仕事忙しいはずなのに！

「えっと……『世界一かわいい大好きなライトへ』……うわ、ここでもう嬉しい！」

　手紙には、仕事が順調に進んでいる報告、魔力を使い過ぎてライトにもしんどい思いをさせたと思うという謝罪、クッキーが嬉しすぎて食べ過ぎてしまったという嬉しい話と感謝、そして……。

「もう、何回『かわいい』と『好き』って書くんだろう？」

　すべての内容の言葉の端々、入れられそうな場所全部に「かわいい」と「好き」が入っている。
　数えちゃおうかな……一、二、三、四、五……「かわいい」が二八回、「好き」が二九回か……。

「もう、魔王さん俺のこと好きすぎ！」

　思わずソファに倒れ込みながら、手紙にキスをする。
　この手紙も、俺の反応も甘すぎるよね？
　他人だったらドン引きされちゃうと思う。
　でも、いつも言われて嬉しい言葉が改めて……目で見える形になっているというのは、震えるほど嬉しかった。

　これはもう俺の宝物！
　残り四日、この手紙で乗り越えられる！

　この日だけで一〇〇回以上、手紙を読み返した。