157 / 409
第6章 二人の話
第156話 愛される(2)
しおりを挟む
「皆、ありがとう!」
魔王さんがよく響く声を上げて……そうだ、俺もお礼言いたい!
「ありがとう!」
俺も魔王さんと同じように声をかけるけど……国民のみんなの声も大きくて届いている気がしない。
顔を見せるだけでも喜んでくれているからこれでいいのかもしれないけど、感謝とか、すごく幸せなこととか、魔王さんが大好きで嬉しいこととか沢山伝えたいよね。
……そうだ!
「ねぇ、魔王さん。俺のいた世界でこういう時にすることしていい?」
「あぁ」
それが何かなんて言っていないのに、魔王さんは全肯定してくれる。
もう、こういう所も好き。
「魔王さん……」
「え?」
首に回していた手を片方離して、魔王さんの頬に沿える。
「大好き」
「っ……!」
ゆっくり、集まった人たちにも見えるように唇を近づけて……重ねるだけだけど、ちょっと長めにキスをする。
式典でしなかったから。
誓いのキスの代わり。
「ん……」
「ふ……」
キスをしている間に、沢山上がっていた大きな声が止まって、代わりにざわざわと感嘆かどよめきのような反応が俺たちに向けられる。
伝わったかな? 俺の気持ち。俺たちの仲の良さ。
「……はぁ」
ゆっくり唇を離して国民のみんなの方を向くと……小さくてよく見えないけど、たぶん皆「うっとり」した視線を俺たちに向けてくれていた。
幸せのお裾分け、できたかな?
「あ、ラ、ライト……!」
俺が国民のみんなの方を向いているうちに、至近距離の魔王さんの息が……あれ? なんか。めちゃくちゃ興奮してない?
「あ、か、かわいい……人前で、唇にキスをしてくれるなんて……かわいい!」
「ん?」
そんなに喜ぶこと?
人前でキスしたこと無かったっけ?
そういえば、頬へのキスだけだったかな?
別に魔王さんを喜ばせるつもりでしたんじゃないんだけど……喜んでくれたのは嬉しいけど。
戸惑っているうちに、国民のみんなのザワザワも大きくなっていく。
「か、かわいい!」
「うっわぁ。かっわいー……」
「え? え? かわいすぎじゃない?」
「かわいい」
「かわいすぎ」
「かわいい、マジでかわいい……」
「あんなにかわいいなんて、信じられない」
「かわいい」
「はぁ……かわいくて……どう言っていいのか……かわいい」
「かわいいし……えっと……かわいい」
「かわいい」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、かわいい!」
「か、っわ、い……!」
「んんんんん、か、かわ、っ!」
「かわいい!」
あれ?
……なんか、伝えたいこととは違うことが伝わってない?
まぁ。
これはこれで、いいか。
「ライト、ライトは、本当にかわいい。とてもかわいい、かわいい!」
「ん、ちょっ、魔王さん、ん、ふふっ」
魔王さんが俺の体を片手で抱えなおし、頭を思い切り撫でてくれる。
「かわいいし、良い子で……かわいいなぁ……かわいい」
完全に「よしよし、いいこでちゅね~! かわいいでちゅね~!」ってテンションのかわいがり方だな。
結局こういう扱い?
でも、まぁ……
「ライト、かわいい、大好きだ。かわいい……ライト……あぁ、ライト……!」
「ん、魔王さん、俺も大好き」
魔王さんが、国民のみんなが、蕩けそうに幸せそうな笑顔だからいいや。
だって、俺も幸せだし。
「ライト……」
ずっと他人からの愛が欲しい人生だった。
一つの大きな愛も、沢山の小さな愛も、全部欲しかった。
「愛している。一生、ライトのことを愛すると誓う」
愛が欲しかった。
愛がもらえた。
それは何よりも嬉しいことなのに……。
「魔王さん」
誰かを愛することもすごく幸せで……愛されることに慣れていないこのかわいい魔王さんのこと、もっともっと愛してあげたくなった。
「俺も愛しているよ。一生、魔王さんのこと愛するって誓う」
二人で微笑みあった後、もう一度、今度はお互いに顔を近づけて誓いのキスをした。
魔王さんがよく響く声を上げて……そうだ、俺もお礼言いたい!
「ありがとう!」
俺も魔王さんと同じように声をかけるけど……国民のみんなの声も大きくて届いている気がしない。
顔を見せるだけでも喜んでくれているからこれでいいのかもしれないけど、感謝とか、すごく幸せなこととか、魔王さんが大好きで嬉しいこととか沢山伝えたいよね。
……そうだ!
「ねぇ、魔王さん。俺のいた世界でこういう時にすることしていい?」
「あぁ」
それが何かなんて言っていないのに、魔王さんは全肯定してくれる。
もう、こういう所も好き。
「魔王さん……」
「え?」
首に回していた手を片方離して、魔王さんの頬に沿える。
「大好き」
「っ……!」
ゆっくり、集まった人たちにも見えるように唇を近づけて……重ねるだけだけど、ちょっと長めにキスをする。
式典でしなかったから。
誓いのキスの代わり。
「ん……」
「ふ……」
キスをしている間に、沢山上がっていた大きな声が止まって、代わりにざわざわと感嘆かどよめきのような反応が俺たちに向けられる。
伝わったかな? 俺の気持ち。俺たちの仲の良さ。
「……はぁ」
ゆっくり唇を離して国民のみんなの方を向くと……小さくてよく見えないけど、たぶん皆「うっとり」した視線を俺たちに向けてくれていた。
幸せのお裾分け、できたかな?
「あ、ラ、ライト……!」
俺が国民のみんなの方を向いているうちに、至近距離の魔王さんの息が……あれ? なんか。めちゃくちゃ興奮してない?
「あ、か、かわいい……人前で、唇にキスをしてくれるなんて……かわいい!」
「ん?」
そんなに喜ぶこと?
人前でキスしたこと無かったっけ?
そういえば、頬へのキスだけだったかな?
別に魔王さんを喜ばせるつもりでしたんじゃないんだけど……喜んでくれたのは嬉しいけど。
戸惑っているうちに、国民のみんなのザワザワも大きくなっていく。
「か、かわいい!」
「うっわぁ。かっわいー……」
「え? え? かわいすぎじゃない?」
「かわいい」
「かわいすぎ」
「かわいい、マジでかわいい……」
「あんなにかわいいなんて、信じられない」
「かわいい」
「はぁ……かわいくて……どう言っていいのか……かわいい」
「かわいいし……えっと……かわいい」
「かわいい」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、かわいい!」
「か、っわ、い……!」
「んんんんん、か、かわ、っ!」
「かわいい!」
あれ?
……なんか、伝えたいこととは違うことが伝わってない?
まぁ。
これはこれで、いいか。
「ライト、ライトは、本当にかわいい。とてもかわいい、かわいい!」
「ん、ちょっ、魔王さん、ん、ふふっ」
魔王さんが俺の体を片手で抱えなおし、頭を思い切り撫でてくれる。
「かわいいし、良い子で……かわいいなぁ……かわいい」
完全に「よしよし、いいこでちゅね~! かわいいでちゅね~!」ってテンションのかわいがり方だな。
結局こういう扱い?
でも、まぁ……
「ライト、かわいい、大好きだ。かわいい……ライト……あぁ、ライト……!」
「ん、魔王さん、俺も大好き」
魔王さんが、国民のみんなが、蕩けそうに幸せそうな笑顔だからいいや。
だって、俺も幸せだし。
「ライト……」
ずっと他人からの愛が欲しい人生だった。
一つの大きな愛も、沢山の小さな愛も、全部欲しかった。
「愛している。一生、ライトのことを愛すると誓う」
愛が欲しかった。
愛がもらえた。
それは何よりも嬉しいことなのに……。
「魔王さん」
誰かを愛することもすごく幸せで……愛されることに慣れていないこのかわいい魔王さんのこと、もっともっと愛してあげたくなった。
「俺も愛しているよ。一生、魔王さんのこと愛するって誓う」
二人で微笑みあった後、もう一度、今度はお互いに顔を近づけて誓いのキスをした。
224
お気に入りに追加
3,562
あなたにおすすめの小説
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
【完結】マジで滅びるんで、俺の為に怒らないで下さい
白井のわ
BL
人外✕人間(人外攻め)体格差有り、人外溺愛もの、基本受け視点です。
村長一家に奴隷扱いされていた受けが、村の為に生贄に捧げられたのをきっかけに、双子の龍の神様に見初められ結婚するお話です。
攻めの二人はひたすら受けを可愛がり、受けは二人の為に立派なお嫁さんになろうと奮闘します。全編全年齢、少し受けが可哀想な描写がありますが基本的にはほのぼのイチャイチャしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる