89 / 368
第6章 二人の話
第156話 愛される(2)
しおりを挟む
「皆、ありがとう!」
魔王さんがよく響く声を上げて……そうだ、俺もお礼言いたい!
「ありがとう!」
俺も魔王さんと同じように声をかけるけど……国民のみんなの声も大きくて届いている気がしない。
顔を見せるだけでも喜んでくれているからこれでいいのかもしれないけど、感謝とか、すごく幸せなこととか、魔王さんが大好きで嬉しいこととか沢山伝えたいよね。
……そうだ!
「ねぇ、魔王さん。俺のいた世界でこういう時にすることしていい?」
「あぁ」
それが何かなんて言っていないのに、魔王さんは全肯定してくれる。
もう、こういう所も好き。
「魔王さん……」
「え?」
首に回していた手を片方離して、魔王さんの頬に沿える。
「大好き」
「っ……!」
ゆっくり、集まった人たちにも見えるように唇を近づけて……重ねるだけだけど、ちょっと長めにキスをする。
式典でしなかったから。
誓いのキスの代わり。
「ん……」
「ふ……」
キスをしている間に、沢山上がっていた大きな声が止まって、代わりにざわざわと感嘆かどよめきのような反応が俺たちに向けられる。
伝わったかな? 俺の気持ち。俺たちの仲の良さ。
「……はぁ」
ゆっくり唇を離して国民のみんなの方を向くと……小さくてよく見えないけど、たぶん皆「うっとり」した視線を俺たちに向けてくれていた。
幸せのお裾分け、できたかな?
「あ、ラ、ライト……!」
俺が国民のみんなの方を向いているうちに、至近距離の魔王さんの息が……あれ? なんか。めちゃくちゃ興奮してない?
「あ、か、かわいい……人前で、唇にキスをしてくれるなんて……かわいい!」
「ん?」
そんなに喜ぶこと?
人前でキスしたこと無かったっけ?
そういえば、頬へのキスだけだったかな?
別に魔王さんを喜ばせるつもりでしたんじゃないんだけど……喜んでくれたのは嬉しいけど。
戸惑っているうちに、国民のみんなのザワザワも大きくなっていく。
「か、かわいい!」
「うっわぁ。かっわいー……」
「え? え? かわいすぎじゃない?」
「かわいい」
「かわいすぎ」
「かわいい、マジでかわいい……」
「あんなにかわいいなんて、信じられない」
「かわいい」
「はぁ……かわいくて……どう言っていいのか……かわいい」
「かわいいし……えっと……かわいい」
「かわいい」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、かわいい!」
「か、っわ、い……!」
「んんんんん、か、かわ、っ!」
「かわいい!」
あれ?
……なんか、伝えたいこととは違うことが伝わってない?
まぁ。
これはこれで、いいか。
「ライト、ライトは、本当にかわいい。とてもかわいい、かわいい!」
「ん、ちょっ、魔王さん、ん、ふふっ」
魔王さんが俺の体を片手で抱えなおし、頭を思い切り撫でてくれる。
「かわいいし、良い子で……かわいいなぁ……かわいい」
完全に「よしよし、いいこでちゅね~! かわいいでちゅね~!」ってテンションのかわいがり方だな。
結局こういう扱い?
でも、まぁ……
「ライト、かわいい、大好きだ。かわいい……ライト……あぁ、ライト……!」
「ん、魔王さん、俺も大好き」
魔王さんが、国民のみんなが、蕩けそうに幸せそうな笑顔だからいいや。
だって、俺も幸せだし。
「ライト……」
ずっと他人からの愛が欲しい人生だった。
一つの大きな愛も、沢山の小さな愛も、全部欲しかった。
「愛している。一生、ライトのことを愛すると誓う」
愛が欲しかった。
愛がもらえた。
それは何よりも嬉しいことなのに……。
「魔王さん」
誰かを愛することもすごく幸せで……愛されることに慣れていないこのかわいい魔王さんのこと、もっともっと愛してあげたくなった。
「俺も愛しているよ。一生、魔王さんのこと愛するって誓う」
二人で微笑みあった後、もう一度、今度はお互いに顔を近づけて誓いのキスをした。
魔王さんがよく響く声を上げて……そうだ、俺もお礼言いたい!
「ありがとう!」
俺も魔王さんと同じように声をかけるけど……国民のみんなの声も大きくて届いている気がしない。
顔を見せるだけでも喜んでくれているからこれでいいのかもしれないけど、感謝とか、すごく幸せなこととか、魔王さんが大好きで嬉しいこととか沢山伝えたいよね。
……そうだ!
「ねぇ、魔王さん。俺のいた世界でこういう時にすることしていい?」
「あぁ」
それが何かなんて言っていないのに、魔王さんは全肯定してくれる。
もう、こういう所も好き。
「魔王さん……」
「え?」
首に回していた手を片方離して、魔王さんの頬に沿える。
「大好き」
「っ……!」
ゆっくり、集まった人たちにも見えるように唇を近づけて……重ねるだけだけど、ちょっと長めにキスをする。
式典でしなかったから。
誓いのキスの代わり。
「ん……」
「ふ……」
キスをしている間に、沢山上がっていた大きな声が止まって、代わりにざわざわと感嘆かどよめきのような反応が俺たちに向けられる。
伝わったかな? 俺の気持ち。俺たちの仲の良さ。
「……はぁ」
ゆっくり唇を離して国民のみんなの方を向くと……小さくてよく見えないけど、たぶん皆「うっとり」した視線を俺たちに向けてくれていた。
幸せのお裾分け、できたかな?
「あ、ラ、ライト……!」
俺が国民のみんなの方を向いているうちに、至近距離の魔王さんの息が……あれ? なんか。めちゃくちゃ興奮してない?
「あ、か、かわいい……人前で、唇にキスをしてくれるなんて……かわいい!」
「ん?」
そんなに喜ぶこと?
人前でキスしたこと無かったっけ?
そういえば、頬へのキスだけだったかな?
別に魔王さんを喜ばせるつもりでしたんじゃないんだけど……喜んでくれたのは嬉しいけど。
戸惑っているうちに、国民のみんなのザワザワも大きくなっていく。
「か、かわいい!」
「うっわぁ。かっわいー……」
「え? え? かわいすぎじゃない?」
「かわいい」
「かわいすぎ」
「かわいい、マジでかわいい……」
「あんなにかわいいなんて、信じられない」
「かわいい」
「はぁ……かわいくて……どう言っていいのか……かわいい」
「かわいいし……えっと……かわいい」
「かわいい」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、かわいい!」
「か、っわ、い……!」
「んんんんん、か、かわ、っ!」
「かわいい!」
あれ?
……なんか、伝えたいこととは違うことが伝わってない?
まぁ。
これはこれで、いいか。
「ライト、ライトは、本当にかわいい。とてもかわいい、かわいい!」
「ん、ちょっ、魔王さん、ん、ふふっ」
魔王さんが俺の体を片手で抱えなおし、頭を思い切り撫でてくれる。
「かわいいし、良い子で……かわいいなぁ……かわいい」
完全に「よしよし、いいこでちゅね~! かわいいでちゅね~!」ってテンションのかわいがり方だな。
結局こういう扱い?
でも、まぁ……
「ライト、かわいい、大好きだ。かわいい……ライト……あぁ、ライト……!」
「ん、魔王さん、俺も大好き」
魔王さんが、国民のみんなが、蕩けそうに幸せそうな笑顔だからいいや。
だって、俺も幸せだし。
「ライト……」
ずっと他人からの愛が欲しい人生だった。
一つの大きな愛も、沢山の小さな愛も、全部欲しかった。
「愛している。一生、ライトのことを愛すると誓う」
愛が欲しかった。
愛がもらえた。
それは何よりも嬉しいことなのに……。
「魔王さん」
誰かを愛することもすごく幸せで……愛されることに慣れていないこのかわいい魔王さんのこと、もっともっと愛してあげたくなった。
「俺も愛しているよ。一生、魔王さんのこと愛するって誓う」
二人で微笑みあった後、もう一度、今度はお互いに顔を近づけて誓いのキスをした。
334
お気に入りに追加
3,673
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!
かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。
その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。
両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。
自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。
自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。
相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと…
のんびり新連載。
気まぐれ更新です。
BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意!
人外CPにはなりません
ストックなくなるまでは07:10に公開
3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。