魔王さんのガチペット

メグル

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第6章 二人の話

第156話 愛される(2)

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「皆、ありがとう!」

 魔王さんがよく響く声を上げて……そうだ、俺もお礼言いたい!

「ありがとう!」

 俺も魔王さんと同じように声をかけるけど……国民のみんなの声も大きくて届いている気がしない。
 顔を見せるだけでも喜んでくれているからこれでいいのかもしれないけど、感謝とか、すごく幸せなこととか、魔王さんが大好きで嬉しいこととか沢山伝えたいよね。
 ……そうだ!

「ねぇ、魔王さん。俺のいた世界でこういう時にすることしていい?」
「あぁ」

 それが何かなんて言っていないのに、魔王さんは全肯定してくれる。
 もう、こういう所も好き。

「魔王さん……」
「え?」

 首に回していた手を片方離して、魔王さんの頬に沿える。

「大好き」
「っ……!」
 
 ゆっくり、集まった人たちにも見えるように唇を近づけて……重ねるだけだけど、ちょっと長めにキスをする。
 式典でしなかったから。
 誓いのキスの代わり。

「ん……」
「ふ……」

 キスをしている間に、沢山上がっていた大きな声が止まって、代わりにざわざわと感嘆かどよめきのような反応が俺たちに向けられる。
 伝わったかな? 俺の気持ち。俺たちの仲の良さ。

「……はぁ」

 ゆっくり唇を離して国民のみんなの方を向くと……小さくてよく見えないけど、たぶん皆「うっとり」した視線を俺たちに向けてくれていた。
 幸せのお裾分け、できたかな?

「あ、ラ、ライト……!」

 俺が国民のみんなの方を向いているうちに、至近距離の魔王さんの息が……あれ? なんか。めちゃくちゃ興奮してない?

「あ、か、かわいい……人前で、唇にキスをしてくれるなんて……かわいい!」
「ん?」

 そんなに喜ぶこと?
 人前でキスしたこと無かったっけ? 
 そういえば、頬へのキスだけだったかな?
 別に魔王さんを喜ばせるつもりでしたんじゃないんだけど……喜んでくれたのは嬉しいけど。
 戸惑っているうちに、国民のみんなのザワザワも大きくなっていく。

「か、かわいい!」
「うっわぁ。かっわいー……」
「え? え? かわいすぎじゃない?」
「かわいい」
「かわいすぎ」
「かわいい、マジでかわいい……」
「あんなにかわいいなんて、信じられない」
「かわいい」
「はぁ……かわいくて……どう言っていいのか……かわいい」
「かわいいし……えっと……かわいい」
「かわいい」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、かわいい!」
「か、っわ、い……!」
「んんんんん、か、かわ、っ!」
「かわいい!」

 あれ?
 ……なんか、伝えたいこととは違うことが伝わってない?
 まぁ。
 これはこれで、いいか。

「ライト、ライトは、本当にかわいい。とてもかわいい、かわいい!」
「ん、ちょっ、魔王さん、ん、ふふっ」

 魔王さんが俺の体を片手で抱えなおし、頭を思い切り撫でてくれる。

「かわいいし、良い子で……かわいいなぁ……かわいい」

 完全に「よしよし、いいこでちゅね~! かわいいでちゅね~!」ってテンションのかわいがり方だな。
 結局こういう扱い?
 でも、まぁ……

「ライト、かわいい、大好きだ。かわいい……ライト……あぁ、ライト……!」
「ん、魔王さん、俺も大好き」

 魔王さんが、国民のみんなが、蕩けそうに幸せそうな笑顔だからいいや。
 だって、俺も幸せだし。

「ライト……」

 ずっと他人からの愛が欲しい人生だった。
 一つの大きな愛も、沢山の小さな愛も、全部欲しかった。

「愛している。一生、ライトのことを愛すると誓う」

 愛が欲しかった。
 愛がもらえた。
 それは何よりも嬉しいことなのに……。

「魔王さん」

 誰かを愛することもすごく幸せで……愛されることに慣れていないこのかわいい魔王さんのこと、もっともっと愛してあげたくなった。

「俺も愛しているよ。一生、魔王さんのこと愛するって誓う」

 二人で微笑みあった後、もう一度、今度はお互いに顔を近づけて誓いのキスをした。



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