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第6章 二人の話
第153話 前日(2)
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「……私は、自分たちの幸せのためで……自国の国民にさえ理解してもらえればそれでいいと……古臭い魔族の理解なんて別に……」
「シン、素直に喜んで良いのではないですか?」
イルズちゃんが優しい笑顔を浮かべてシンくんの肩を抱く。
「イルズ……」
「あなたも種族が変わったんです。魔族だからなどと言わず、祝ってくれる人には素直に祝われましょう」
「あ……そうだな。すまない。俺の方がいつも頭が硬いな。驚いたんだ……まさか、こんなにもたくさんの魔族の国民が祝ってくれるとは……」
俺もビックリしたけどね。
手紙を取りまとめてくれた新聞社の人が言うには「特に年齢の若い魔族は考え方が柔軟ですよ。……黒歴史のような原始の時代や無駄な戦争を知らないからというのもありますが」ということらしい。
新しい世代が柔軟なのはいいことだよね。
「シンくん、イルズちゃん、改めて……皆からのおめでとう」
俺が紙袋を差し出すと、二人は素直に……笑顔で受け取ってくれた。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「俺も直接は言えていなかったな。おめでとう」
「魔王……ありがとう」
魔王さんが右手を差し出して、シンくんと握手をすると……ずっとざわざわしていた来賓の方から大きな声が聞こえた。
「おめでとうございます!」
「おめでとう、シン様!」
ギルドマスターさんとミチュチュちゃんだ。
二人は式にも儀式にも参加していたのに……優しいな。
……というか、多分俺たちの狙いを解ってくれているな。
「あ……お、おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
二人に釣られるように、他の魔族の来賓とそのペットちゃんたちも、少し戸惑いながら「おめでとうございます」と口にして、拍手もしていた。
よしよし。まだぎこちないけど、少しくらいは印象を変えられたんじゃないかな?
「ありがとう。今日は二人の祝いなんだから、もう充分だ。だが……」
シンくんは、好奇な視線が落ち着いた来賓の方をチラっと見たあと、人間になっても相変わらず美形な顔に含みのある笑顔を浮かべる。
「お陰で明日の式典も、居心地が良さそうだ。気遣いをありがとう。ライトくんにはいつも感心させられる」
「違うよ。折角この国に来てくれたんだから、魔族の国民のみんなを好きになって欲しいなって思っただけだよ」
……まぁ、シンくんが言うのも当たりなんだけどね?
俺が助けてもらった分、シンくんたちの関係をなるべく自然な物として受け入れてもらいたかったんだ。
「本当にライトくんは……」
シンくんがもう一度背後、紙袋に入った手紙、そして魔王さんの満足そうな顔を見てから俺に向き直る。
「世界を変えるには時間がかかる。だから、ライトくんのように優秀だとしても、寿命の短い人間には世界を変える力は無いと思っていたが……」
シンくんの表情は穏やかで、イルズちゃんとの未来を語っている時のようだった。
「これから時間がたっぷりできたライトくんになら、数百年後に皆の……世界中の魔族も、人間も、エルフも、他の種族も、意識を変えられてしまうかもしれないな」
「シンくん……」
「人間になった唯一の後悔は、それを見届けられないことかもしれない。いや……それを期待して死んでいけるのはとても夢があって楽しいな」
この人は……本当に国や世界のことを考えられる「王様」なんだな。
そんな人に期待されたら、ちょっと頑張らないとって思っちゃうよ?
「シンくんの期待に応えられるかは解らないけど、俺は俺や周りの人が幸せになるように環境を整える努力は惜しまないよ」
「ほら、楽しいことになりそうじゃないか」
シンくんは期待の眼差しを俺に向け、それはそのまま魔王さんに向く。
「魔王、最高のペットを持ったな」
「俺にはもったいないほどだが……俺は今からライトに釣り合う男になるべく頑張ろうと思う」
「良い心がけだ。改めて、最高の二人に……おめでとう」
「ありがとう」
俺が最高だと思う二人からの祝福の言葉は、何よりも俺たちの関係への、今後への自信になった。
「シン、素直に喜んで良いのではないですか?」
イルズちゃんが優しい笑顔を浮かべてシンくんの肩を抱く。
「イルズ……」
「あなたも種族が変わったんです。魔族だからなどと言わず、祝ってくれる人には素直に祝われましょう」
「あ……そうだな。すまない。俺の方がいつも頭が硬いな。驚いたんだ……まさか、こんなにもたくさんの魔族の国民が祝ってくれるとは……」
俺もビックリしたけどね。
手紙を取りまとめてくれた新聞社の人が言うには「特に年齢の若い魔族は考え方が柔軟ですよ。……黒歴史のような原始の時代や無駄な戦争を知らないからというのもありますが」ということらしい。
新しい世代が柔軟なのはいいことだよね。
「シンくん、イルズちゃん、改めて……皆からのおめでとう」
俺が紙袋を差し出すと、二人は素直に……笑顔で受け取ってくれた。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「俺も直接は言えていなかったな。おめでとう」
「魔王……ありがとう」
魔王さんが右手を差し出して、シンくんと握手をすると……ずっとざわざわしていた来賓の方から大きな声が聞こえた。
「おめでとうございます!」
「おめでとう、シン様!」
ギルドマスターさんとミチュチュちゃんだ。
二人は式にも儀式にも参加していたのに……優しいな。
……というか、多分俺たちの狙いを解ってくれているな。
「あ……お、おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
二人に釣られるように、他の魔族の来賓とそのペットちゃんたちも、少し戸惑いながら「おめでとうございます」と口にして、拍手もしていた。
よしよし。まだぎこちないけど、少しくらいは印象を変えられたんじゃないかな?
「ありがとう。今日は二人の祝いなんだから、もう充分だ。だが……」
シンくんは、好奇な視線が落ち着いた来賓の方をチラっと見たあと、人間になっても相変わらず美形な顔に含みのある笑顔を浮かべる。
「お陰で明日の式典も、居心地が良さそうだ。気遣いをありがとう。ライトくんにはいつも感心させられる」
「違うよ。折角この国に来てくれたんだから、魔族の国民のみんなを好きになって欲しいなって思っただけだよ」
……まぁ、シンくんが言うのも当たりなんだけどね?
俺が助けてもらった分、シンくんたちの関係をなるべく自然な物として受け入れてもらいたかったんだ。
「本当にライトくんは……」
シンくんがもう一度背後、紙袋に入った手紙、そして魔王さんの満足そうな顔を見てから俺に向き直る。
「世界を変えるには時間がかかる。だから、ライトくんのように優秀だとしても、寿命の短い人間には世界を変える力は無いと思っていたが……」
シンくんの表情は穏やかで、イルズちゃんとの未来を語っている時のようだった。
「これから時間がたっぷりできたライトくんになら、数百年後に皆の……世界中の魔族も、人間も、エルフも、他の種族も、意識を変えられてしまうかもしれないな」
「シンくん……」
「人間になった唯一の後悔は、それを見届けられないことかもしれない。いや……それを期待して死んでいけるのはとても夢があって楽しいな」
この人は……本当に国や世界のことを考えられる「王様」なんだな。
そんな人に期待されたら、ちょっと頑張らないとって思っちゃうよ?
「シンくんの期待に応えられるかは解らないけど、俺は俺や周りの人が幸せになるように環境を整える努力は惜しまないよ」
「ほら、楽しいことになりそうじゃないか」
シンくんは期待の眼差しを俺に向け、それはそのまま魔王さんに向く。
「魔王、最高のペットを持ったな」
「俺にはもったいないほどだが……俺は今からライトに釣り合う男になるべく頑張ろうと思う」
「良い心がけだ。改めて、最高の二人に……おめでとう」
「ありがとう」
俺が最高だと思う二人からの祝福の言葉は、何よりも俺たちの関係への、今後への自信になった。
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