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第6章 二人の話
第142話 大好き(2)
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「まだ何か不安があるなら、俺、頑張って取り除くよ?」
「ライト……」
魔王さんの頬にそっと手を添えると、魔王さんの手も俺の頬に触れる。
「俺ね、魔王さんが納得できていないのに眷属にしてもらっても嬉しくない」
……なんて口では言っているけど、俺、ズルいよね。
ここまで魔王さんの大切にしている国民を巻き込んで、する方向に誘導しているんだから。
もうここまでくれば、魔王さんは断りにくいってわかってる。
でもいいよね? 魔王さんだって、俺とずっと一緒にいたいって言ってくれたし。
俺、絶対に魔王さんを幸せにするし。
だから、これくらいのズルいのは見逃して欲しい。
「俺は……」
魔王さんが頬に触れていた手を背中に回して、かき抱くように俺の体を抱き寄せる。
身体が微かに震えて……肩口に埋まった魔王さんの顔が……あれ?
あれ?
魔王さん……?
泣いてる?
「俺は……王として……いや、王だから、皆に受け入れられていると思っていた。だが……こんなに国民に、部下に、慕われているとは……愛されているとは思っていなかった。ずっと誰からも無償の愛をもらえない、孤独な存在だと思っていた……」
「魔王さん……」
この三年、魔王さんとずっと一緒にいたからわかるよ。
家族がいなくて寂しかったよね。
俺がいなくなるのも怖かったよね。
魔王さんはずっと、寂しさと戦っていたんだよね。
労うように頭を撫でると、魔王さんは泣いていたことを誤魔化すことなく顔を上げた。
「みんなの好意に気付けたのも、愛される喜びを知れたのも、全てライトのお陰だ。ライト、お前を手放したくない。一生側にいて欲しい。お前がいない世界なんて考えられない。頼む俺の眷属に……いや、専属のペットになってくれ」
「うん。して」
懇願するような言葉に、一ミリも迷わず笑顔で頷くと、目元に涙を浮かべたまま魔王さんが幸せそうに笑ってくれた。
俺、愛されることが大好きで、愛されることに幸せを感じるんだけど……。
大好きな人にも、この幸せを感じてもらえるの……幸せだな。
◆
数日後、お城の議会で無事に法改正が決定して、「眷属化」の中でも同意がある場合は「専属化」と呼び分けるようになって、専属ペットの申請も大々的に始まった。
じゃあ、第一号は俺!
……と、意気込んでいたんだけど、施行日にすぐ登録できるように役所には問い合わせがたくさん入っていたらしく、第一号は一般市民のお家の七八歳のペットちゃんだそうだ。
七八歳までずっとずっと愛してもらえていいなぁ。
そして、第二号、第三号と続々と申請があるのだと、申請用紙をもらうために保険庁を訪れた時にエンラキさんが教えてくれた。
奥の応接室へ行くまでに見た窓口も事務室もみんな慌ただしく走り回っていて、先日来た時とは大違いだ。
「ごめんね。忙しくなっちゃって」
応接室で向かい合ったエンラキさんは、服の皺と目の下のクマが目立つ。
泊まり込みで仕事してるよね?
申し訳ない。
「確かに忙しいですね。新制度の運用にはまだ慣れていませんし、制度を悪用する者がいないとは限りませんから精査も慎重になります……しかし……」
エンラキさんは大きなため息をついた後、満面の笑みになった。
「申請に来るペットの方たちはみんな、とてもとても幸せそうなんです! ライト様、幸せなペットがたくさん増えます。ありがとうございます!」
「俺は……自分の幸せのために頑張っただけだよ」
口ではそう言ったけど……俺と同じで飼い主といい関係を築けているペットが沢山いるんだと思うと、俺と魔王さんのためにしたことではあったけど……頑張って良かったのかもしれないな。
「ライト様の頑張り、尊敬します。そして……ライト様の幸せを、心から願っています!」
エンラキさんがそう言って差し出してくれた書類を、両手でしっかり受け取った。
さぁ、いよいよ俺たちの番だ。
「ライト……」
魔王さんの頬にそっと手を添えると、魔王さんの手も俺の頬に触れる。
「俺ね、魔王さんが納得できていないのに眷属にしてもらっても嬉しくない」
……なんて口では言っているけど、俺、ズルいよね。
ここまで魔王さんの大切にしている国民を巻き込んで、する方向に誘導しているんだから。
もうここまでくれば、魔王さんは断りにくいってわかってる。
でもいいよね? 魔王さんだって、俺とずっと一緒にいたいって言ってくれたし。
俺、絶対に魔王さんを幸せにするし。
だから、これくらいのズルいのは見逃して欲しい。
「俺は……」
魔王さんが頬に触れていた手を背中に回して、かき抱くように俺の体を抱き寄せる。
身体が微かに震えて……肩口に埋まった魔王さんの顔が……あれ?
あれ?
魔王さん……?
泣いてる?
「俺は……王として……いや、王だから、皆に受け入れられていると思っていた。だが……こんなに国民に、部下に、慕われているとは……愛されているとは思っていなかった。ずっと誰からも無償の愛をもらえない、孤独な存在だと思っていた……」
「魔王さん……」
この三年、魔王さんとずっと一緒にいたからわかるよ。
家族がいなくて寂しかったよね。
俺がいなくなるのも怖かったよね。
魔王さんはずっと、寂しさと戦っていたんだよね。
労うように頭を撫でると、魔王さんは泣いていたことを誤魔化すことなく顔を上げた。
「みんなの好意に気付けたのも、愛される喜びを知れたのも、全てライトのお陰だ。ライト、お前を手放したくない。一生側にいて欲しい。お前がいない世界なんて考えられない。頼む俺の眷属に……いや、専属のペットになってくれ」
「うん。して」
懇願するような言葉に、一ミリも迷わず笑顔で頷くと、目元に涙を浮かべたまま魔王さんが幸せそうに笑ってくれた。
俺、愛されることが大好きで、愛されることに幸せを感じるんだけど……。
大好きな人にも、この幸せを感じてもらえるの……幸せだな。
◆
数日後、お城の議会で無事に法改正が決定して、「眷属化」の中でも同意がある場合は「専属化」と呼び分けるようになって、専属ペットの申請も大々的に始まった。
じゃあ、第一号は俺!
……と、意気込んでいたんだけど、施行日にすぐ登録できるように役所には問い合わせがたくさん入っていたらしく、第一号は一般市民のお家の七八歳のペットちゃんだそうだ。
七八歳までずっとずっと愛してもらえていいなぁ。
そして、第二号、第三号と続々と申請があるのだと、申請用紙をもらうために保険庁を訪れた時にエンラキさんが教えてくれた。
奥の応接室へ行くまでに見た窓口も事務室もみんな慌ただしく走り回っていて、先日来た時とは大違いだ。
「ごめんね。忙しくなっちゃって」
応接室で向かい合ったエンラキさんは、服の皺と目の下のクマが目立つ。
泊まり込みで仕事してるよね?
申し訳ない。
「確かに忙しいですね。新制度の運用にはまだ慣れていませんし、制度を悪用する者がいないとは限りませんから精査も慎重になります……しかし……」
エンラキさんは大きなため息をついた後、満面の笑みになった。
「申請に来るペットの方たちはみんな、とてもとても幸せそうなんです! ライト様、幸せなペットがたくさん増えます。ありがとうございます!」
「俺は……自分の幸せのために頑張っただけだよ」
口ではそう言ったけど……俺と同じで飼い主といい関係を築けているペットが沢山いるんだと思うと、俺と魔王さんのためにしたことではあったけど……頑張って良かったのかもしれないな。
「ライト様の頑張り、尊敬します。そして……ライト様の幸せを、心から願っています!」
エンラキさんがそう言って差し出してくれた書類を、両手でしっかり受け取った。
さぁ、いよいよ俺たちの番だ。
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