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第6章 二人の話
第138話 提案(2)
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俺の言葉に魔王さんが大きく目を見開きながら、ビクっと体を震わせる。
「俺が魔王さんの眷属になれば、ずっと一緒にいられると思わない?」
「……は?」
魔王さんは「信じられない」と言った顔で首を左右に振る。
「俺、魔王さんとの時間の流れが違うことで、先に死んじゃうことともう一つ、嫌なことがあったんだよね」
「……?」
「魔王さんはずっと若くてカッコイイ外見なのに、俺だけどんどん老いていくの、嫌だなって思っていた」
「そんなこと……」
「俺はおじいちゃんになっても美形だと思うし、歳をとればとったなりの魅力もあると思うけど……魔王さんはそのままなのにっていうのが嫌。俺と魔王さん、ただでさえ種族違うのに、俺だけ年取ったら、益々違う種族なんだって解りやすくなって嫌。差がつくの嫌。すごく嫌」
「差……」
魔王さんは俺の言葉をずっと呆けた顔で聞く。
解ってくれている?
まぁいいや、とにかく……
「眷属になれば、この差が埋まるんだよね? 俺、ちょっと魔王さんに近づけるんだよね? それって……」
魔王さんの両頬を掴んで、無理やり俺の顔へと視線を向けさせる。
「それって、すごく嬉しい!」
満面の笑みを向けると、魔王さんの顔も少しだけ緩んで……でも、慌てて引き締めた。
「あ……ラ、ライト……! しかし、お前は良く知らないからそんなことを言えるんだ! 眷属と言うのは元々……」
「種族を増やすために他の種族を無理やり眷属にしていたんだよね? 生存本能だから仕方ないんじゃない?」
「しかし、それによって滅びた種族もあり……」
「確かにそれは良くないけど、強い種族が残る方が発展するよね? 種族や動物の中でも強い個体が生き残るんだから自然の摂理じゃない? ちょっと冷たいかもしれないけど、弱肉強食だよね」
「人間の寿命を無理矢理伸ばすなんて……」
「ずっと一緒に同じ速度で生きられるんなら、そこはメリットしかないよ!」
「そ、その……眷属は、主の体液に縛られる。それをたてに無理な要求や支配を……」
「魔王さんは俺が嫌がることしないって信用しているし、ちょっとした強引な命令くらいなら、俺、喜んじゃうかも」
「定期的に魔力の補充をしなければ……」
「生で中出しセックスできるね! ずっとゴムアリだったから生で魔王さん感じたかった」
「っ! あ、その……お、俺の体調に左右されるんだぞ?」
「そこはね、今まで以上に魔王さんが自分の体調に気を付けてくれないと困る。魔王さんが頑張るところ。お願いよろしく。俺のためにそれは頑張って」
「居場所が……」
「今も魔王さんの許可ないと遠出できないしなぁ……ま、俺の居場所がわかると魔王さん安心だよね? いいんじゃない?」
「あとは……あぁそうだ、体に紋が刻まれるんだぞ?」
「俺が魔王さんの物だって一目で解るのいいね!」
ローズウェルさんたちも最初、同じように心配してくれたから間髪入れずに返事ができた。
その返事が重なっていくと……もう反論ネタ切れかな?
魔王さんが微妙な顔で黙ってから……小さく呟いた。
「……人間の眷属化を法律で禁止したのは俺だ。国民が許さない」
「そう、そこがネックだと思ったんだけど……」
俺が振り向くと、ローズウェルさんが一枚の書類とパンフレットを魔王さんに渡す。
「確認してきた」
「……は?」
「保険庁のエンラキさん。前に連絡先くれていたから、確認してみた」
帰りが遅くなった理由の一つだ。
城下町にある庁舎でエンラキさんに確認すると、この薄いパンフレットと書類をくれたんだ。
「法律では『人間の同意なく眷属化することを禁ずる』だから、同意がある場合の眷属同意確認書の用意、ちゃんとあったよ。人間の権利を守るための眷属化の心得のパンフレット付きで」
魔王さんがパンフレットを手に取る。
このパンフレット、よくできていて、「こんなペットと主は眷属化向き」という具体例とか、「こんな眷属化は人権侵害」「眷属化のメリットデメリット」「自分に合ってる? 眷属化チェックシート」なんかが書かれていて、眷属化に対して俺たちよりもよっぽどフラットかつ真摯に考えられていた。
「この三〇〇年くらいで、八〇件以上提出があったって」
この国に魔族も人間も何人いるのか知らないから、多いとか少ないとかは解らないけど。
「その辺りは、俺の私情を交えてはいけないと思い、任せていたから……そうか、八〇件も……」
「うん。それで、エンラキさんと話していたんだけど、この同意書の存在はまだまだ知られていないし、眷属化にネガティブなイメージが付きすぎて、眷属化で幸せになる人間もいるのになかなか活用できていない人たちも多いんだって。俺たちみたいに」
「そうか……」
「魔王さん、気持ちわかるよね? きっと国民の中にも、ペットの人間を大事に大事にしている魔族、いっぱいいると思う」
「あぁ」
魔王さんはパンフレットを観ながら深く頷く。
よし。理解が追い付いてきている。
「それで、エルフの国で偶然一緒にいた国際商工ギルドのギルドマスターさんがアドバイスくれたんだけど」
「ギルドマスターが?」
それは意外だったのか、魔王さんがやっと顔を上げてくれた。
「俺が魔王さんの眷属になれば、ずっと一緒にいられると思わない?」
「……は?」
魔王さんは「信じられない」と言った顔で首を左右に振る。
「俺、魔王さんとの時間の流れが違うことで、先に死んじゃうことともう一つ、嫌なことがあったんだよね」
「……?」
「魔王さんはずっと若くてカッコイイ外見なのに、俺だけどんどん老いていくの、嫌だなって思っていた」
「そんなこと……」
「俺はおじいちゃんになっても美形だと思うし、歳をとればとったなりの魅力もあると思うけど……魔王さんはそのままなのにっていうのが嫌。俺と魔王さん、ただでさえ種族違うのに、俺だけ年取ったら、益々違う種族なんだって解りやすくなって嫌。差がつくの嫌。すごく嫌」
「差……」
魔王さんは俺の言葉をずっと呆けた顔で聞く。
解ってくれている?
まぁいいや、とにかく……
「眷属になれば、この差が埋まるんだよね? 俺、ちょっと魔王さんに近づけるんだよね? それって……」
魔王さんの両頬を掴んで、無理やり俺の顔へと視線を向けさせる。
「それって、すごく嬉しい!」
満面の笑みを向けると、魔王さんの顔も少しだけ緩んで……でも、慌てて引き締めた。
「あ……ラ、ライト……! しかし、お前は良く知らないからそんなことを言えるんだ! 眷属と言うのは元々……」
「種族を増やすために他の種族を無理やり眷属にしていたんだよね? 生存本能だから仕方ないんじゃない?」
「しかし、それによって滅びた種族もあり……」
「確かにそれは良くないけど、強い種族が残る方が発展するよね? 種族や動物の中でも強い個体が生き残るんだから自然の摂理じゃない? ちょっと冷たいかもしれないけど、弱肉強食だよね」
「人間の寿命を無理矢理伸ばすなんて……」
「ずっと一緒に同じ速度で生きられるんなら、そこはメリットしかないよ!」
「そ、その……眷属は、主の体液に縛られる。それをたてに無理な要求や支配を……」
「魔王さんは俺が嫌がることしないって信用しているし、ちょっとした強引な命令くらいなら、俺、喜んじゃうかも」
「定期的に魔力の補充をしなければ……」
「生で中出しセックスできるね! ずっとゴムアリだったから生で魔王さん感じたかった」
「っ! あ、その……お、俺の体調に左右されるんだぞ?」
「そこはね、今まで以上に魔王さんが自分の体調に気を付けてくれないと困る。魔王さんが頑張るところ。お願いよろしく。俺のためにそれは頑張って」
「居場所が……」
「今も魔王さんの許可ないと遠出できないしなぁ……ま、俺の居場所がわかると魔王さん安心だよね? いいんじゃない?」
「あとは……あぁそうだ、体に紋が刻まれるんだぞ?」
「俺が魔王さんの物だって一目で解るのいいね!」
ローズウェルさんたちも最初、同じように心配してくれたから間髪入れずに返事ができた。
その返事が重なっていくと……もう反論ネタ切れかな?
魔王さんが微妙な顔で黙ってから……小さく呟いた。
「……人間の眷属化を法律で禁止したのは俺だ。国民が許さない」
「そう、そこがネックだと思ったんだけど……」
俺が振り向くと、ローズウェルさんが一枚の書類とパンフレットを魔王さんに渡す。
「確認してきた」
「……は?」
「保険庁のエンラキさん。前に連絡先くれていたから、確認してみた」
帰りが遅くなった理由の一つだ。
城下町にある庁舎でエンラキさんに確認すると、この薄いパンフレットと書類をくれたんだ。
「法律では『人間の同意なく眷属化することを禁ずる』だから、同意がある場合の眷属同意確認書の用意、ちゃんとあったよ。人間の権利を守るための眷属化の心得のパンフレット付きで」
魔王さんがパンフレットを手に取る。
このパンフレット、よくできていて、「こんなペットと主は眷属化向き」という具体例とか、「こんな眷属化は人権侵害」「眷属化のメリットデメリット」「自分に合ってる? 眷属化チェックシート」なんかが書かれていて、眷属化に対して俺たちよりもよっぽどフラットかつ真摯に考えられていた。
「この三〇〇年くらいで、八〇件以上提出があったって」
この国に魔族も人間も何人いるのか知らないから、多いとか少ないとかは解らないけど。
「その辺りは、俺の私情を交えてはいけないと思い、任せていたから……そうか、八〇件も……」
「うん。それで、エンラキさんと話していたんだけど、この同意書の存在はまだまだ知られていないし、眷属化にネガティブなイメージが付きすぎて、眷属化で幸せになる人間もいるのになかなか活用できていない人たちも多いんだって。俺たちみたいに」
「そうか……」
「魔王さん、気持ちわかるよね? きっと国民の中にも、ペットの人間を大事に大事にしている魔族、いっぱいいると思う」
「あぁ」
魔王さんはパンフレットを観ながら深く頷く。
よし。理解が追い付いてきている。
「それで、エルフの国で偶然一緒にいた国際商工ギルドのギルドマスターさんがアドバイスくれたんだけど」
「ギルドマスターが?」
それは意外だったのか、魔王さんがやっと顔を上げてくれた。
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