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第6章 二人の話
第133話 式典(2)
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「あ……」
驚いていると、隣に座るエルフの男性がまたゆっくりと口を開いた。
「国民は皆、儀式の成功を願っていますので……私たちが立ち会えない分も、どうか……どうか、よろしくお願い致します!」
頭を下げた体が微かに震えている。
膝の上で握った手が白い。
力がこもっているな。
森の王様、国民にめっちゃくちゃ慕われているじゃないか。
俺、責任重大だな。
「うん。解った。みんなの気持ちの分も、しっかり立ち会って来るね。大丈夫。あんなに素敵な魔法を使った人だよ? 絶対に成功するって」
口ではそう言ってみたけど……実は、一番の責任重大な仕事がまだできていないんだよね。
そうだ。ちょうどいい。
「ところで、皆から見た退位した森の王様ってどんな人?」
「どんな人、ですか? そうですね……どんなことにも真っすぐ、真剣に取り組み、やり遂げる人です」
真っすぐ、真剣、やり遂げる……。
なるほどね。
「他には?」
もっと聞きたいという視線を周囲に向けると、他の人たちの口からもどんどん森の王様を称える言葉が飛び出してきた。
「国民一人一人と丁寧に対話してくれて、親切で優しい方です」
親切、優しい……。
「新しいことも積極的に取り入れる、革新的な方です」
新しい、革新的……。
「公平で公正、信用できる方です」
信用……。
「この国の王の血筋らしく、森に愛され、森の精霊の力に満ち溢れた、母なる森のような方です」
森……。
なるほどね……俺は友人という立場での付き合いで、良い人なのは解っているけど……。
「皆の話を聞いていると、ただの素敵な人ってだけじゃなくて、王様として素敵な王様なんだね」
「はい! もちろん新王様も素敵な方ですが……前王様は、真の王様だと思います!」
「国民全員、そう思っています!」
「そっか……」
真の王様……。
うん。
これは良いことを聞いた。
「うん。ありがとう。きっとみんなが納得できると思うよ」
「え? 納得……ですか?」
「ううん。なんでもない。明日の儀式、ちゃんとみんなの気持ちも背負って参加するから。安心してね」
「はい! ありがとうございます!」
「よろしくお願いします!」
「お願いします!」
またみんなに頭を下げられて、そろそろ人も集まりすぎちゃったのでその場を退散した。
◆
「ライト様、先ほどの質問はもしかして……」
用意された部屋に戻ってすぐ、リビングルームのテーブルに紙を置いて思いついた単語を忘れないうちにと書き始めた俺に、ローズウェルさんが声をかける。
「うん。名前の参考にね。お陰でいい名前を思いついたよ」
ずっと悩んでいたけど、みんなの話を聞いて思いついた。
俺としては完璧。
後は、この世界やこの国でふさわしくない音の響きじゃないことを祈るだけだ。
「素敵な式典だったから……」
先ほどまで俺を取り囲んでいた人たちの顔を思い出す。
「……演出も良かったけど、皆のあの表情も、良かったよね」
自分に向けられた「愛」ではないのに、なぜか俺まで嬉しい気持ちでいっぱいになっていた。
驚いていると、隣に座るエルフの男性がまたゆっくりと口を開いた。
「国民は皆、儀式の成功を願っていますので……私たちが立ち会えない分も、どうか……どうか、よろしくお願い致します!」
頭を下げた体が微かに震えている。
膝の上で握った手が白い。
力がこもっているな。
森の王様、国民にめっちゃくちゃ慕われているじゃないか。
俺、責任重大だな。
「うん。解った。みんなの気持ちの分も、しっかり立ち会って来るね。大丈夫。あんなに素敵な魔法を使った人だよ? 絶対に成功するって」
口ではそう言ってみたけど……実は、一番の責任重大な仕事がまだできていないんだよね。
そうだ。ちょうどいい。
「ところで、皆から見た退位した森の王様ってどんな人?」
「どんな人、ですか? そうですね……どんなことにも真っすぐ、真剣に取り組み、やり遂げる人です」
真っすぐ、真剣、やり遂げる……。
なるほどね。
「他には?」
もっと聞きたいという視線を周囲に向けると、他の人たちの口からもどんどん森の王様を称える言葉が飛び出してきた。
「国民一人一人と丁寧に対話してくれて、親切で優しい方です」
親切、優しい……。
「新しいことも積極的に取り入れる、革新的な方です」
新しい、革新的……。
「公平で公正、信用できる方です」
信用……。
「この国の王の血筋らしく、森に愛され、森の精霊の力に満ち溢れた、母なる森のような方です」
森……。
なるほどね……俺は友人という立場での付き合いで、良い人なのは解っているけど……。
「皆の話を聞いていると、ただの素敵な人ってだけじゃなくて、王様として素敵な王様なんだね」
「はい! もちろん新王様も素敵な方ですが……前王様は、真の王様だと思います!」
「国民全員、そう思っています!」
「そっか……」
真の王様……。
うん。
これは良いことを聞いた。
「うん。ありがとう。きっとみんなが納得できると思うよ」
「え? 納得……ですか?」
「ううん。なんでもない。明日の儀式、ちゃんとみんなの気持ちも背負って参加するから。安心してね」
「はい! ありがとうございます!」
「よろしくお願いします!」
「お願いします!」
またみんなに頭を下げられて、そろそろ人も集まりすぎちゃったのでその場を退散した。
◆
「ライト様、先ほどの質問はもしかして……」
用意された部屋に戻ってすぐ、リビングルームのテーブルに紙を置いて思いついた単語を忘れないうちにと書き始めた俺に、ローズウェルさんが声をかける。
「うん。名前の参考にね。お陰でいい名前を思いついたよ」
ずっと悩んでいたけど、みんなの話を聞いて思いついた。
俺としては完璧。
後は、この世界やこの国でふさわしくない音の響きじゃないことを祈るだけだ。
「素敵な式典だったから……」
先ほどまで俺を取り囲んでいた人たちの顔を思い出す。
「……演出も良かったけど、皆のあの表情も、良かったよね」
自分に向けられた「愛」ではないのに、なぜか俺まで嬉しい気持ちでいっぱいになっていた。
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