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第5章 旅の話
第107話 お土産(1)
しおりを挟むまだ日本で、異世界への帰り支度をしている時だった。
「兄ちゃんって元々持ち物少ないし、海外からほぼ手ぶらで帰って来たのもヤバイと思ったけど……」
リビングで、お城に持って帰るものをわざわざ買って来た袋に詰め替えているのを見て、ナイトが呆れた声をかけて来た。
「そのペラッペラのエコバッグで帰るの? スーツケースとか、ボストンバッグとか、いくらでもあるのに?」
俺の手元には一〇〇円ショップで買って来た黒いトートバッグ型のエコバッグが二つ。
ファスナー付きで新聞紙くらいの大きさがあるかわりに、一〇〇円らしくペラペラですぐに破れそうだ。
どう見ても海外に行く鞄ではない。
オシャレでもない。
俺だって丈夫で便利なキャリーバッグとか、ブランド物のかっこいいボストンバッグとか、高機能のバックパックとかで帰りたい。
でも……
「重量制限があるから、鞄の重さも限界まで減らしたいんだよね。最初はゴミ袋に突っ込んで帰ろうかと思ったくらい」
「あぁ、機内持ち込みとかの制限? だったら仕方ないか……何キロまで?」
「六……念のため五キロくらいかな?」
「え? たった?」
そうだよね……海外旅行の飛行機なら、機内持ち込みでも一〇キロくらいはいけるよね? 預ける荷物も入れればもっと持って行けるはず。
正直、俺だって色々持っていきたい。
ソーラーパネルの充電器とタブレットなら向こうでも使えるな~電池や発電機もありだな~……なんて思っていた。
でも……ファイさんに言われてしまったんだ。
「ライト様の一部として持って帰れるとなると……体重の一割程度でしょうか。ちなみに、身に着けている服やアクセサリーもライト様には含まれませんので」
つまり、体重が五〇キロなら五キロ、体重が一〇〇キロなら一〇キロまで。
俺の今の体重が六〇キロ代後半くらいだから……六キロちょっとか。
身に着ける服や靴が一キロくらいとしたら、荷物は五キロくらい?
五キロって……電子機器は一気に難しくなる。
「はぁ……もう少し太っておけばよかったな」
「え? 逆じゃないの?」
荷物を前にため息をついていると、ナイトが不思議そうに首を傾げる。飛行機や船ならそうだよねー……。
「えーっと、軽い人用の席だから荷物も軽いみたいな感じ?」
「へー……?」
ナイトはあまり納得できていないようだけど、俺の荷物を覗き込みながらアドバイスはしてくれた。
「これとか、箱から出しちゃえば?」
「そうだね。ノートも、メモしたページだけ切って持っていくか……」
たった数グラムだけど減らせるものは減らし、何度か体重計に乗せながら荷物を詰めていく。
「なんか海外旅行のパッキングみたいでちょっと楽しそうに見えてきた」
「だんだんパズルっぽくなって来たしね。うーん。フリーズドライの味噌汁と雑炊、梅昆布茶は絶対に持っていきたい……日焼け止めと泡立てネットはいる。温泉の素は諦めるか……美容液、瓶じゃなければな……肌触り最高のスウェットは一セットだけ……気に入っている下着は枚数減らすか……使いやすい箸……でも一キロくらいはお土産に使いたいし」
元々、旅行ですらスマホと財布だけで行くような人間だけど、それは日本中どこでもコンビニやファストファッションの店があるからで……今回はスマホと財布を持っていかない代わりに持っていきたいものが多すぎて困る。
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