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第5章 旅の話
第98話 兄弟(1)
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「じゃあ行ってくるね、魔王さん」
元の世界に帰れると聞いた一週間後。
ファイさんも交えて細かいルールや注意事項を教えてもらって、持ち物の準備、元の世界でやりたいこと、やるべきことのリストアップも済ませて……俺は今、お城の地下にある魔法陣の上に立っている。
エルフの国に行った時に使ったものと同じ場所に書かれているけど、同じ魔法陣かは解らない。
「あぁ。もし、少しでもおかしいところがあればすぐに魔法石を割るんだぞ?」
「わかった」
無難な黒いズボンに白いスタンドカラーのシャツ姿の俺の首には、緑っぽい石のついたネックレスがかかっている。この石を割れば強制的にここに戻ってくるらしい。
「ライト様、準備ができました。石を握って、行先を思い描いてください」
魔法陣の外で魔導書を広げていたファイさんがキャンドルを床に起きながら声をかけてくれる。
足元がぼんやりと光始めて……足は地面についているはずなのに浮遊感がある。
そうそう、エルフの国に行くときもこうだった。
違うのは、行先を自分で強くイメージしないといけないという所だ。
地球のどこに行くか……自分と繋がりの深い場所や人のイメージが必要ってことだから……。
「弟の……あ、見えたかも」
記憶の中の弟じゃない、これはおそらく今の弟……。
「いってらっしゃいませ、ライト様」
「気を付けて」
ファイさんと魔王さんの声が聞こえたと思うと、浮遊感が強くなって……一瞬、意識が途切れた。
◆
頭の中に今の弟……上の弟のナイトが寝ている姿が浮かんだあと、一瞬のブラックアウトを挟んで、俺はもう頭に浮かんだ場所に立っていた。
「……」
壁にかかっている時計を見ると、たぶん午前九時だけど、カーテンがかかって薄暗い部屋。
現代のマンションの一室っぽい普通の部屋だけど……ここ……俺が買ったマンションのナイトの部屋か。
ナイトに「部屋は狭くていいからウォークインクローゼットを譲って欲しい」と言われたから、3LDKの中で一番狭い四畳半の部屋で、半分はベッドで埋まり、本棚、シンプルな机もあって相変わらずギチギチな部屋だ。
「すー……すー……」
そのベッドで、俺と少しだけ似ているイケメンが熟睡している。
……よかった。一人だな。
彼女とか連れ込んでいるところだと気まずいなと思ったけど、大丈夫そうだ。
「……」
薄暗くてはっきりは見えないけど、元気そう。
髪色明るくなった? アッシュブラウン似合っているな。
あ、ピアス増えてる。右は三個……反対も?
この髪色とピアスの数で、平日のこの時間に寝ているって、就活どうなったんだろう?
気になることはたくさんあって……もう我慢できなかった。
「ナイト、起きて」
「ん……?」
気持ちよさそうに寝ているところごめんね?
お兄ちゃん、一週間しか時間が無いから。
「……ん? え?」
身体を軽く叩いて声をかけると、半覚醒のナイトは戸惑いながら枕元のリモコンに手を伸ばす。
あ、部屋が明るくなった。
「……え?」
「おはよう。久しぶり」
「あ……え? 兄ちゃん……!?」
「そう。ライトお兄ちゃん」
「……あ……っ……あ……あー……くっそ……言いたいことがありすぎて、何から言えばいいかわからない」
ナイトは笑顔の俺を、驚きと怒りと安堵となんかよくわからない複雑な感情が混ざった微妙な顔で見つめていた。
「ごめんね。ナイトに時間があるならゆっくり話そう」
「……解った」
「ついでに、ナイトが作るみそ汁とだし巻き卵が食べたい」
「…………解った」
ナイトは微妙な顔のまま頷いてくれた。
相変わらず優しい弟だ。
元の世界に帰れると聞いた一週間後。
ファイさんも交えて細かいルールや注意事項を教えてもらって、持ち物の準備、元の世界でやりたいこと、やるべきことのリストアップも済ませて……俺は今、お城の地下にある魔法陣の上に立っている。
エルフの国に行った時に使ったものと同じ場所に書かれているけど、同じ魔法陣かは解らない。
「あぁ。もし、少しでもおかしいところがあればすぐに魔法石を割るんだぞ?」
「わかった」
無難な黒いズボンに白いスタンドカラーのシャツ姿の俺の首には、緑っぽい石のついたネックレスがかかっている。この石を割れば強制的にここに戻ってくるらしい。
「ライト様、準備ができました。石を握って、行先を思い描いてください」
魔法陣の外で魔導書を広げていたファイさんがキャンドルを床に起きながら声をかけてくれる。
足元がぼんやりと光始めて……足は地面についているはずなのに浮遊感がある。
そうそう、エルフの国に行くときもこうだった。
違うのは、行先を自分で強くイメージしないといけないという所だ。
地球のどこに行くか……自分と繋がりの深い場所や人のイメージが必要ってことだから……。
「弟の……あ、見えたかも」
記憶の中の弟じゃない、これはおそらく今の弟……。
「いってらっしゃいませ、ライト様」
「気を付けて」
ファイさんと魔王さんの声が聞こえたと思うと、浮遊感が強くなって……一瞬、意識が途切れた。
◆
頭の中に今の弟……上の弟のナイトが寝ている姿が浮かんだあと、一瞬のブラックアウトを挟んで、俺はもう頭に浮かんだ場所に立っていた。
「……」
壁にかかっている時計を見ると、たぶん午前九時だけど、カーテンがかかって薄暗い部屋。
現代のマンションの一室っぽい普通の部屋だけど……ここ……俺が買ったマンションのナイトの部屋か。
ナイトに「部屋は狭くていいからウォークインクローゼットを譲って欲しい」と言われたから、3LDKの中で一番狭い四畳半の部屋で、半分はベッドで埋まり、本棚、シンプルな机もあって相変わらずギチギチな部屋だ。
「すー……すー……」
そのベッドで、俺と少しだけ似ているイケメンが熟睡している。
……よかった。一人だな。
彼女とか連れ込んでいるところだと気まずいなと思ったけど、大丈夫そうだ。
「……」
薄暗くてはっきりは見えないけど、元気そう。
髪色明るくなった? アッシュブラウン似合っているな。
あ、ピアス増えてる。右は三個……反対も?
この髪色とピアスの数で、平日のこの時間に寝ているって、就活どうなったんだろう?
気になることはたくさんあって……もう我慢できなかった。
「ナイト、起きて」
「ん……?」
気持ちよさそうに寝ているところごめんね?
お兄ちゃん、一週間しか時間が無いから。
「……ん? え?」
身体を軽く叩いて声をかけると、半覚醒のナイトは戸惑いながら枕元のリモコンに手を伸ばす。
あ、部屋が明るくなった。
「……え?」
「おはよう。久しぶり」
「あ……え? 兄ちゃん……!?」
「そう。ライトお兄ちゃん」
「……あ……っ……あ……あー……くっそ……言いたいことがありすぎて、何から言えばいいかわからない」
ナイトは笑顔の俺を、驚きと怒りと安堵となんかよくわからない複雑な感情が混ざった微妙な顔で見つめていた。
「ごめんね。ナイトに時間があるならゆっくり話そう」
「……解った」
「ついでに、ナイトが作るみそ汁とだし巻き卵が食べたい」
「…………解った」
ナイトは微妙な顔のまま頷いてくれた。
相変わらず優しい弟だ。
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