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第5章 旅の話
第93話 一方通行(1)
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エルフの森へ遊びに行った後は、しばらく穏やかな日が続いた。
魔王さんのお仕事は相変わらず忙しそうだけど、夕食を一緒に取れないほどではないし、毎日俺のことをかわいがってくれる。
変化は少ないけど穏やかで幸せな日々。
これから一生こんな感じかな……年に一回くらい、この前のエルフの国みたいにどこかに旅行に行けたらいいのにな……くらいの気持ちで日々を過ごして、気付けばこの世界にやってきて、二年半が過ぎていた。
◆
ここ数日は魔王さんが忙しかったらしく、一緒にいられる時間が少なかった。
だから今日は久しぶりの夜のゆっくりいちゃいちゃタイムなんだけど……
「ライト……ライト……」
「ん……」
ソファでくっつくように座った魔王さんが、いきなり耳元で熱っぽい声を出す。
「今日も、とてもかわいい……愛しい……」
「魔王さんも。今日もかっこいいね」
抱きしめる手が……今日はちょっと性急だな。
最近忙しくて、ゆっくりいちゃいちゃできてないから?
「……ライト、好きだ」
「んっ! ……あ、魔王さん?」
俺の体をまさぐっていた手が、シャツの中に入る。
今日はするかなと思って、髪を下ろしたままにして中もキレイにしているんだけど……。
「はぁ……好きだ……っ……ライト……好きだ」
「んんっ! 魔王さん?」
いきなり胸の辺りを揉まれて、足の間にも手が入ってくる。
魔王さんの息はもう上がっていて、俺を見つめる視線もいつになく獰猛。
確かに久しぶりだけど、もっと溜まっているときもあったと思うのに。
「落ち着いて? 俺も、大好きだよ」
落ち着いてもらうように優しく頬を撫でると、魔王さんはやっと手を止めてくれた。
「っ……すまない。ライトはムードを大切にするのに……」
「大丈夫。たまにはこうやって……真っすぐ求められるのも嬉しいよ。でも、魔王さんなんか焦っているみたいだから」
「ライト……」
魔王さんはぎゅっと眉を寄せて唇を噛んだ後、俺の体を両手で……こんなに焦った様子で、息も上がっているのに、優しく壊れ物を扱うように抱きしめてくれた。
「絶対に、ライトが気持ちよくなれるようにするから……セックスをさせてくれ」
……「させてくれ」か。
いつもの「してもいいか?」じゃないんだ。
そもそも答えになっていないし。
なんで今日はそんなに必死なの?
わからない。
けど……
「うん。しよう。魔王さんとのセックス、いっぱい気持ちよくなれるから大好き」
あきらかに様子がおかしいけど、求められるのは嬉しいし、セックスが始まれば多少激しくてもセックスはセックスでいつものように楽しいだろうし……
と、このときは軽く考えて魔王さんの腕に抱かれていた。
魔王さんのお仕事は相変わらず忙しそうだけど、夕食を一緒に取れないほどではないし、毎日俺のことをかわいがってくれる。
変化は少ないけど穏やかで幸せな日々。
これから一生こんな感じかな……年に一回くらい、この前のエルフの国みたいにどこかに旅行に行けたらいいのにな……くらいの気持ちで日々を過ごして、気付けばこの世界にやってきて、二年半が過ぎていた。
◆
ここ数日は魔王さんが忙しかったらしく、一緒にいられる時間が少なかった。
だから今日は久しぶりの夜のゆっくりいちゃいちゃタイムなんだけど……
「ライト……ライト……」
「ん……」
ソファでくっつくように座った魔王さんが、いきなり耳元で熱っぽい声を出す。
「今日も、とてもかわいい……愛しい……」
「魔王さんも。今日もかっこいいね」
抱きしめる手が……今日はちょっと性急だな。
最近忙しくて、ゆっくりいちゃいちゃできてないから?
「……ライト、好きだ」
「んっ! ……あ、魔王さん?」
俺の体をまさぐっていた手が、シャツの中に入る。
今日はするかなと思って、髪を下ろしたままにして中もキレイにしているんだけど……。
「はぁ……好きだ……っ……ライト……好きだ」
「んんっ! 魔王さん?」
いきなり胸の辺りを揉まれて、足の間にも手が入ってくる。
魔王さんの息はもう上がっていて、俺を見つめる視線もいつになく獰猛。
確かに久しぶりだけど、もっと溜まっているときもあったと思うのに。
「落ち着いて? 俺も、大好きだよ」
落ち着いてもらうように優しく頬を撫でると、魔王さんはやっと手を止めてくれた。
「っ……すまない。ライトはムードを大切にするのに……」
「大丈夫。たまにはこうやって……真っすぐ求められるのも嬉しいよ。でも、魔王さんなんか焦っているみたいだから」
「ライト……」
魔王さんはぎゅっと眉を寄せて唇を噛んだ後、俺の体を両手で……こんなに焦った様子で、息も上がっているのに、優しく壊れ物を扱うように抱きしめてくれた。
「絶対に、ライトが気持ちよくなれるようにするから……セックスをさせてくれ」
……「させてくれ」か。
いつもの「してもいいか?」じゃないんだ。
そもそも答えになっていないし。
なんで今日はそんなに必死なの?
わからない。
けど……
「うん。しよう。魔王さんとのセックス、いっぱい気持ちよくなれるから大好き」
あきらかに様子がおかしいけど、求められるのは嬉しいし、セックスが始まれば多少激しくてもセックスはセックスでいつものように楽しいだろうし……
と、このときは軽く考えて魔王さんの腕に抱かれていた。
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