魔王さんのガチペット

メグル

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第4章 日常と過去とこれからの話

第75話 知りたい(3)

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「それから、高校を卒業して、働き始めて……接客業って言えば良いかな? お酒を提供するところ」
「酒場のようなところか?」
「この世界の酒場を知らないけど、ソファとテーブルが沢山あって、一席に一人給仕がついてお酒を楽しむ、ちょっと高級な感じのお店」
「あぁ、貴族向けのクラブのようなところか」

 それがどんなところかは解らないけど、ホストクラブがなさそうだから、完璧にニュアンスを伝えるのは難しいだろうしいいかな。

「そこで頑張って稼いで、弟二人の大学の学費を稼いだんだ」
「大学……? 先ほど卒業したと言った学校とは別の学び舎か?」
「そう。小学校、中学校までが義務教育で、その次の高校は義務ではないけどあまりお金もかからないから、だいたいの人が通いたければ通える学校。大学は、高校の次に行く学校で……頭が良い人か、お金がある人だけが行ける学校」

 説明が雑過ぎるかな……まぁいいか。俺にとっての大学はそうだったから。
 
「貴族の子息や大きな商家の子どもが通う上級学校のようなものか。ライトは行かなかったんだろう? それなのに弟は行かせてやったのか?」
「上の弟のナイトは努力家で勉強いっぱいする子だったから、行かないと勿体ないと思ったし、下の弟のカイトは……ちょっと頼りないからもっと勉強した方が良いかなと思って」
「しかし、自分がいけないだけでなく、学費を稼いでやるなんて……」

 改めて考えると、俺、頑張りすぎかな?
 施設育ちってこともあって、専用の基金や奨学金っていう選択肢もあったんだけど……俺は弟に学費を出してあげたかったんだよね……。

「……俺はさ、辛かったけど、ある程度は……納得はできないけど、捨てられても仕方がないんだよ? 本当のお父さんじゃないから愛してもらえなくて当然。でも、弟二人は……血のつながったお父さんなのに、お母さんの好きな人の子供なのに、捨てられたんだよ? 愛してもらえないんだよ? 二人の方が……辛かったと思うんだよね」

 実際捨てられてすぐは、弟たちの方が幼いと言うこともあって、かわいそうなほど泣き続けていた。
 今思い出しても、あの顔は辛い。
 自分が捨てられたことよりも、大事な弟まで捨てられたことがショックだったな……。
 家族という形は……親子の愛情は……こんなにもろいんだって。

「だから俺が、親がくれるような愛情とか、安心とか、金銭的なこととか、できるだけしてあげたかった」
「そうか……そんなに頑張って大切にした弟と引き離してしまったんだな……」

 魔王さんが申し訳なさそうにするし、実際魔王さんのペットになるために離れ離れになっちゃったんだけど……。

「あ……まぁ……寂しいよ? 俺にとっては唯一の家族だから。でもさ……」

 魔王さんを安心させるため……でもないか。
 自然と自嘲気味に笑ってしまった。

「弟……ナイトとカイトは同じ両親から生まれているけど、俺は半分違うって、ずっと……嫌……というか……寂しい? 上手く言えないな。とにかく引っかかっていて、俺が二人にきちんと家族として愛されるには、お兄ちゃんらしく二人の面倒を見ないとって一生懸命だったから……そう、学費を出したのも、そういう気持ちもあったかな」

 学費だけじゃない。
 住む場所も、マンションを買って渡している。
 そうやって、俺が二人に解りやすい、形のある愛情を与えないと……って勝手に焦っている部分がずっとあった。
 あー……俺、愛されたがりだな。
 自分の人生を振り返ると、上手くやっているとは思うけど、必死過ぎて……。

「だから……寂しいけど、距離を置いてちょっとほっとしたかな」
「だが……」

 魔王さんがぎゅっと唇を噛む。
 優しいなぁ。

「魔王さん、すまないって思うなら……弟たちの分も俺のこといっぱい愛して?」

 握り合った手にもう片方の手を重ねると、魔王さんももう片方の手を重ねてくれた。

「もちろんだ!」
「ふふっ、よろしくね」

 俺が笑顔になれば、魔王さんももう笑顔だった。
 よかった。引きずられたくないから。
 さぁ、これで面白くない話は終わり……。

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