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第4章 日常と過去とこれからの話
第67話 パーティー(5)
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着替えとちょっとした用意にわざと時間をかけて……パーティーが終わる一〇分前に広間に戻ることにした。
遅れて登場する方が期待感が高まるからね。
「ライト様、遅いですね……」
「明るく振る舞ったものの、やはりショックだったのかも」
「あんなかわいい顔して、健気な……」
「かわいそうに……」
スタッフの出入り口からこっそり中をのぞくと、お客さん達はそんな反応で俺を待ってくれていた。
よしよし。
これならいけそう。
「ローズウェルさん、リリリさん、よろしくね」
「はい」
「お任せください」
正面の扉に戻り、リリリさんに首元のリボンをなおしてもらってから扉を開く。
「遅くなってごめんなさい」
お辞儀をして、俺が一番華やかに見える笑顔で顔を上げると……会場内の全員の視線が俺に向いていた。
「かわいい……」
「か、かわいい……」
ぼそぼそと呟いているのが聞こえる。
やっぱりかわいいよね?
白い光沢のある生地に、俺の髪色に似た金色の糸で刺繍が施された、王子様っぽいというか、アイドルっぽいジャケットに揃いのベスト。白いスラックス。中のシャツもリボンタイも白で、あえてシンプルにしたのは……。
「お城に咲いている自慢のバラを用意していたら遅くなっちゃって」
騎士団長さんのお祖父さんにも協力してもらって揃えた、真っ赤なバラの花束。
数ヶ月前に見せてもらった品種より小ぶりだけど、一つ一つの花が締まっていて、密度の高いゴージャスなバラの花束になっている。豪華なバラの花束を持っていると、男っぷりが上がって見えない?
「はぁ……バラの花が世界一似合う……!」
「花の妖精か?」
「自慢のバラを見せたいなんて、かっわいいなぁ……」
反応いいなぁ。
ちょっと良すぎる気もするけど。
でも、このバラの役目は見た目のブーストだけじゃない。
「折角みなさんとお話できる機会だったのに、長く離席してしまったから……このバラとお帰りの際のお土産を俺が配らせてもらうね?」
「ペットが、直接?」
「なんてかわいいサービス……!」
「こんなになつくなんて、魔王様、いったいどんなお世話を……?」
……お客さんたち、感動しすぎじゃないかな……でも、もし、元の世界でペットのワンちゃんがパーティーの帰り際にプレゼントをくれたら「わぁ、かっわいい! なんておりこうさん!」って感動するだろうから……。
喜ばれているようだし、このまま行こう。
俺がパーティー会場を進むと、両手に来賓に配るお土産の袋を持ったローズウェルさんとリリリさんが続く。
ちゃんとパーティーを仕切っているドーラルさんにも確認済みだし、中身も教えてもらっている。
来賓は全部で二〇人ほど。サクサク渡していくべきなんだけど……。
「どうぞ」
「あ、あぁ」
まずは、入り口に近いところにいた、赤髪で赤い燕尾服風の少しいかつい感じの魔族男性にお土産の袋を渡し、隣に立つ黒髪短髪で凛々しい感じのペットの男の子にはバラの花束から一本抜いて渡す。
「ふふっ。ご主人様とペットちゃんでお揃いのタイだ。仲良しって一目で解っていいなぁ。真似していい?」
「え? あぁ、もちろん!」
俺の言葉にすごく驚いた魔族の男性は、いかつい顔をすぐに満面の笑顔にして頷いた。
「魔王さん! 俺たちも今度はお揃いのタイね?」
「あぁ、そうしよう」
少し離れた王座に座る魔王さんに手を振ると、魔王さんは嬉しそうに頷いてくれた。
よし、次はその奥の……焦げ茶色の髪で軍服を着た、険しい顔の魔族のおじさん。
「はい、どうぞ……あれ? ご主人様のペンダント、ペットちゃんの瞳の色の石だ」
「あ……あぁ、そうなんだ! 全く同じ色のものを探して……やっとみつけたものなんだ!」
「ペットちゃんがキレイなエメラルドグリーンの瞳なのもいいよね。瞳がもうそのままで宝石っぽい」
「あ……ありがとうございます! ご主人様が褒めてくださる瞳に合わせて服も、髪飾りも選んでいるので……嬉しい」
ご主人様と儚い感じのペットの男の子が顔を見合わせて笑ってから、俺に笑顔でお辞儀をしてくれた。
さて次は……深緑の髪に同じ色の……一際上等に見える燕尾服をきた優しそうな年配の魔族と、おそらくこの中で一番幼い、小動物っぽい雰囲気でふわふわの茶色の巻髪がかわいいペットの男の子。
「ペットちゃん、イチゴのタルト気に入ってくれた?」
「え? あ、はい! とても美味しかったです……とても!」
「俺もあれ好きだから、一番に食べる人誰かなって見てたんだ。同じお菓子好き仲間だね?」
「はい! イチゴのお菓子は何でも好きなのですが、あのケーキは今まで食べたお菓子で一番イチゴ味が濃くて生地も美味しくて……初めて食べる形ですが、とても美味しかったです!」
なんとなく目に付いたのを覚えていただけなんだけどね。良い顔していたからアタリだった。
あと、この国の、このお城のお菓子が美味しいお陰だよね。
「料理長さんと、今日は城下町のケーキ屋さんも手伝いに来てくれているみたいだから、感想伝えておくね?」
「はい! 世界一のお菓子だとお伝えください!」
ペットの男の子が少し緊張していた顔を可愛らしい笑顔にした瞬間、俺たちの会話を柔らかい笑顔で見守ってくれていた年配の魔族男性が、表情と同じく、柔らかい声でペットちゃんに話しかけた。
「そうか。あの菓子が気に入ったのか。帰りに買って帰ろうな」
「あっ! あの、そんな……申し訳ないです!」
「いいんだ。お前の嬉しそうな顔が見たい。たくさん買っていこう。……ライト様、この子は遠慮がちな子なので、好物が知れて良かった。ありがとうございます」
「俺は同じお菓子が好きな友達ができて嬉しいだけだよ。イチゴのタルトは城下町で買えるし、お土産の中に入っている焼き菓子も、俺と魔王さんのお気に入りだからぜひ食べてみて」
「はい!」
二人と笑顔で別れて、次は……
遅れて登場する方が期待感が高まるからね。
「ライト様、遅いですね……」
「明るく振る舞ったものの、やはりショックだったのかも」
「あんなかわいい顔して、健気な……」
「かわいそうに……」
スタッフの出入り口からこっそり中をのぞくと、お客さん達はそんな反応で俺を待ってくれていた。
よしよし。
これならいけそう。
「ローズウェルさん、リリリさん、よろしくね」
「はい」
「お任せください」
正面の扉に戻り、リリリさんに首元のリボンをなおしてもらってから扉を開く。
「遅くなってごめんなさい」
お辞儀をして、俺が一番華やかに見える笑顔で顔を上げると……会場内の全員の視線が俺に向いていた。
「かわいい……」
「か、かわいい……」
ぼそぼそと呟いているのが聞こえる。
やっぱりかわいいよね?
白い光沢のある生地に、俺の髪色に似た金色の糸で刺繍が施された、王子様っぽいというか、アイドルっぽいジャケットに揃いのベスト。白いスラックス。中のシャツもリボンタイも白で、あえてシンプルにしたのは……。
「お城に咲いている自慢のバラを用意していたら遅くなっちゃって」
騎士団長さんのお祖父さんにも協力してもらって揃えた、真っ赤なバラの花束。
数ヶ月前に見せてもらった品種より小ぶりだけど、一つ一つの花が締まっていて、密度の高いゴージャスなバラの花束になっている。豪華なバラの花束を持っていると、男っぷりが上がって見えない?
「はぁ……バラの花が世界一似合う……!」
「花の妖精か?」
「自慢のバラを見せたいなんて、かっわいいなぁ……」
反応いいなぁ。
ちょっと良すぎる気もするけど。
でも、このバラの役目は見た目のブーストだけじゃない。
「折角みなさんとお話できる機会だったのに、長く離席してしまったから……このバラとお帰りの際のお土産を俺が配らせてもらうね?」
「ペットが、直接?」
「なんてかわいいサービス……!」
「こんなになつくなんて、魔王様、いったいどんなお世話を……?」
……お客さんたち、感動しすぎじゃないかな……でも、もし、元の世界でペットのワンちゃんがパーティーの帰り際にプレゼントをくれたら「わぁ、かっわいい! なんておりこうさん!」って感動するだろうから……。
喜ばれているようだし、このまま行こう。
俺がパーティー会場を進むと、両手に来賓に配るお土産の袋を持ったローズウェルさんとリリリさんが続く。
ちゃんとパーティーを仕切っているドーラルさんにも確認済みだし、中身も教えてもらっている。
来賓は全部で二〇人ほど。サクサク渡していくべきなんだけど……。
「どうぞ」
「あ、あぁ」
まずは、入り口に近いところにいた、赤髪で赤い燕尾服風の少しいかつい感じの魔族男性にお土産の袋を渡し、隣に立つ黒髪短髪で凛々しい感じのペットの男の子にはバラの花束から一本抜いて渡す。
「ふふっ。ご主人様とペットちゃんでお揃いのタイだ。仲良しって一目で解っていいなぁ。真似していい?」
「え? あぁ、もちろん!」
俺の言葉にすごく驚いた魔族の男性は、いかつい顔をすぐに満面の笑顔にして頷いた。
「魔王さん! 俺たちも今度はお揃いのタイね?」
「あぁ、そうしよう」
少し離れた王座に座る魔王さんに手を振ると、魔王さんは嬉しそうに頷いてくれた。
よし、次はその奥の……焦げ茶色の髪で軍服を着た、険しい顔の魔族のおじさん。
「はい、どうぞ……あれ? ご主人様のペンダント、ペットちゃんの瞳の色の石だ」
「あ……あぁ、そうなんだ! 全く同じ色のものを探して……やっとみつけたものなんだ!」
「ペットちゃんがキレイなエメラルドグリーンの瞳なのもいいよね。瞳がもうそのままで宝石っぽい」
「あ……ありがとうございます! ご主人様が褒めてくださる瞳に合わせて服も、髪飾りも選んでいるので……嬉しい」
ご主人様と儚い感じのペットの男の子が顔を見合わせて笑ってから、俺に笑顔でお辞儀をしてくれた。
さて次は……深緑の髪に同じ色の……一際上等に見える燕尾服をきた優しそうな年配の魔族と、おそらくこの中で一番幼い、小動物っぽい雰囲気でふわふわの茶色の巻髪がかわいいペットの男の子。
「ペットちゃん、イチゴのタルト気に入ってくれた?」
「え? あ、はい! とても美味しかったです……とても!」
「俺もあれ好きだから、一番に食べる人誰かなって見てたんだ。同じお菓子好き仲間だね?」
「はい! イチゴのお菓子は何でも好きなのですが、あのケーキは今まで食べたお菓子で一番イチゴ味が濃くて生地も美味しくて……初めて食べる形ですが、とても美味しかったです!」
なんとなく目に付いたのを覚えていただけなんだけどね。良い顔していたからアタリだった。
あと、この国の、このお城のお菓子が美味しいお陰だよね。
「料理長さんと、今日は城下町のケーキ屋さんも手伝いに来てくれているみたいだから、感想伝えておくね?」
「はい! 世界一のお菓子だとお伝えください!」
ペットの男の子が少し緊張していた顔を可愛らしい笑顔にした瞬間、俺たちの会話を柔らかい笑顔で見守ってくれていた年配の魔族男性が、表情と同じく、柔らかい声でペットちゃんに話しかけた。
「そうか。あの菓子が気に入ったのか。帰りに買って帰ろうな」
「あっ! あの、そんな……申し訳ないです!」
「いいんだ。お前の嬉しそうな顔が見たい。たくさん買っていこう。……ライト様、この子は遠慮がちな子なので、好物が知れて良かった。ありがとうございます」
「俺は同じお菓子が好きな友達ができて嬉しいだけだよ。イチゴのタルトは城下町で買えるし、お土産の中に入っている焼き菓子も、俺と魔王さんのお気に入りだからぜひ食べてみて」
「はい!」
二人と笑顔で別れて、次は……
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