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第4章 日常と過去とこれからの話
第66話 パーティー(4)
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「ライト様! 大丈夫ですか!?」
「ライト様! お怪我はありませんか!?」
部屋を出た瞬間、奥のスタッフ用の出入り口から出てきたリリリさんとローズウェルさんが駆け寄ってくれる。
自分では緊張していないつもりだったけど、二人の顔を見ると思わずため息が出た。
「はぁー……うん。大丈夫そう。ほら、俺って契約もあるし」
「良かった~! でも、念のために毒物の検査はしますね! あと、シャワーと、着替えと……あ、毒物ではなさそうですね」
部屋へ向かって歩きながら、リリリさんがワインのかかった服に触れる。おそらく魔法で調べてくれているんだけど……そうか、そういう懸念も必要なんだ。
油断していた。今後は気を付けないと。
でも、ローズウェルさんはタオルを手渡しながら俺の行動を手放しで褒めてくれる。
「ライト様、素晴らしい機転でした。さすがです」
「元の世界で仕事していた時に、ライバルにお酒かけられた経験が生きたかな」
ホスト時代にこんな感じで切り抜けたことがあったから、とっさに反応できた。
ホストやっていてよかったな。
「これで魔王さんが怒って関係悪化っていうのは無いと思うんだけど……」
「はい、大丈夫だと思います! ここで魔王様が攻撃魔法でも使われていれば、国際問題でした!」
「ライト様のおかげですよ~! ありがとうございます!」
廊下を進みながら二人は笑顔で俺を褒めてくれるけど……俺も喜んでいるんだけど……。
「でも俺ね、そこそこ腹が立っているんだよね」
「「え?」」
俺が笑顔で言った言葉に、二人はとても驚いた様子で……まぁ、そうか。
この世界に来て初めて言ったかもね。「腹が立った」なんて。
「あ、それは……当然です。大勢の前で服を汚されて……」
「腹が立ちますよね! でも、ライト様が怒るなんて珍しいですね」
「怒るよ。大事な魔王さんを馬鹿にされたみたいなものだから。それに、あの導王様の態度。ペットのこと……オファちゃんのことを何だと思っているんだろうね?」
もう笑顔もいいや。
不機嫌を隠さずにため息をつくと、なぜか二人は泣きそうな顔になる。
「ライト様……ご自身の尊厳よりも魔王様、更には相手のペットにまで心を砕くなんて……」
「うぅ、ライト様ぁ、かわいいぃぃ……お優しいぃぃぃ……」
そんな顔で俺にそう言ってくれる二人の方が優しいと思うけど……。
「優しくないよ。ちょっとだけ意地悪したいし」
「意地悪、ですか?」
「大丈夫。相手にケガさせたり服を汚したりはしないよ。ちょっと、親切なことをしてあげるだけ」
俺の言葉に二人は首を傾げる。
「俺と魔王さんの方が上だって解ってもらうだけ」
仕返ししてやろう。
そう思うとちょっと機嫌もなおってきた。
「手伝ってくれる?」
俺がいつもの笑顔に戻ると、二人も笑顔になって大きく頷いてくれた。
「「はい、もちろんです!」」
「ライト様! お怪我はありませんか!?」
部屋を出た瞬間、奥のスタッフ用の出入り口から出てきたリリリさんとローズウェルさんが駆け寄ってくれる。
自分では緊張していないつもりだったけど、二人の顔を見ると思わずため息が出た。
「はぁー……うん。大丈夫そう。ほら、俺って契約もあるし」
「良かった~! でも、念のために毒物の検査はしますね! あと、シャワーと、着替えと……あ、毒物ではなさそうですね」
部屋へ向かって歩きながら、リリリさんがワインのかかった服に触れる。おそらく魔法で調べてくれているんだけど……そうか、そういう懸念も必要なんだ。
油断していた。今後は気を付けないと。
でも、ローズウェルさんはタオルを手渡しながら俺の行動を手放しで褒めてくれる。
「ライト様、素晴らしい機転でした。さすがです」
「元の世界で仕事していた時に、ライバルにお酒かけられた経験が生きたかな」
ホスト時代にこんな感じで切り抜けたことがあったから、とっさに反応できた。
ホストやっていてよかったな。
「これで魔王さんが怒って関係悪化っていうのは無いと思うんだけど……」
「はい、大丈夫だと思います! ここで魔王様が攻撃魔法でも使われていれば、国際問題でした!」
「ライト様のおかげですよ~! ありがとうございます!」
廊下を進みながら二人は笑顔で俺を褒めてくれるけど……俺も喜んでいるんだけど……。
「でも俺ね、そこそこ腹が立っているんだよね」
「「え?」」
俺が笑顔で言った言葉に、二人はとても驚いた様子で……まぁ、そうか。
この世界に来て初めて言ったかもね。「腹が立った」なんて。
「あ、それは……当然です。大勢の前で服を汚されて……」
「腹が立ちますよね! でも、ライト様が怒るなんて珍しいですね」
「怒るよ。大事な魔王さんを馬鹿にされたみたいなものだから。それに、あの導王様の態度。ペットのこと……オファちゃんのことを何だと思っているんだろうね?」
もう笑顔もいいや。
不機嫌を隠さずにため息をつくと、なぜか二人は泣きそうな顔になる。
「ライト様……ご自身の尊厳よりも魔王様、更には相手のペットにまで心を砕くなんて……」
「うぅ、ライト様ぁ、かわいいぃぃ……お優しいぃぃぃ……」
そんな顔で俺にそう言ってくれる二人の方が優しいと思うけど……。
「優しくないよ。ちょっとだけ意地悪したいし」
「意地悪、ですか?」
「大丈夫。相手にケガさせたり服を汚したりはしないよ。ちょっと、親切なことをしてあげるだけ」
俺の言葉に二人は首を傾げる。
「俺と魔王さんの方が上だって解ってもらうだけ」
仕返ししてやろう。
そう思うとちょっと機嫌もなおってきた。
「手伝ってくれる?」
俺がいつもの笑顔に戻ると、二人も笑顔になって大きく頷いてくれた。
「「はい、もちろんです!」」
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