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第4章 日常と過去とこれからの話
第62話 料理(2)
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「うん。俺のいた世界とこの世界で文化が違うから、魔王さんに変なもの出したくないし。この世界の人の意見を聞きたい」
「では、遠慮なくいただきます!」
「私も、ぜひ!」
料理長さんも手を上げてくれたので、サンドイッチをテキトーに切って二人の前に置きなおす。
「はいどうぞ。俺も味見しようかな」
「では失礼してこの玉子の……」
「私も……」
二人が玉子サラダのサンドイッチを手に取ったので、俺もそれへ手を伸ばす。
どうかな……?
「ん、んん!?」
「ん!」
あ、いい顔。これは大丈夫そうだ。
「ライト様! これ、美味しい! この玉子のペーストがもったりして、ベーコンの塩気とよく合って、味が濃いけどパンも一緒に食べるから濃すぎなくて……美味しいです!」
「お、おいしい……ゆで玉子のもそもそした感じが気にならなくて……でも白身のぷりぷり感は残っていて……味も濃厚に感じる。ゆで玉子にこんな使い方が……!」
「ん、イメージ通りできてる。良かった」
こっちのマヨネーズ、ちょっと味が薄いんだよね。黄身多めにして正解だったな。
俺が味を確認している間に、二人はポテトサラダのサンドイッチに手を伸ばしていた。
「ん~! このジャガイモ、美味しいです! パンとジャガイモを一緒に食べるなんて、栄養満点ですね!」
「ジャガイモがしっとりするからパンと一緒でも食べやすい……すごく考えられた料理だ……」
そういえば、ここの料理ってジャガイモが主食扱いの時あるな。元の世界でもヨーロッパ……北欧? ドイツだっけ? どこかジャガイモが主食だった気がする。
主食のパンと主食のジャガイモのセットは普通しないか……日本なら焼きそばパンとかあったけど。
「でも私、この中のジャガイモだけをお腹いっぱい食べたいかも……むしろ、お酒と……」
「あぁ、俺のいた世界だと、パンにはさまずにこの中身だけで食べることも多かったよ。お酒とも合わせてた」
「やっぱり! 家で真似して作りたいです! 作り方、詳しく教えて頂けますか?」
「あの、私も! 城のメニューに加えたいです! 今度のパーティーメニューにも!」
「パーティーだったらキレイなカップに入れるとか、ケーキみたいな形にするとかしてもいいかもね」
「なんと……! あ、ちょっと、メモします、メモ!」
料理長さんがポケットからメモ帳と万年筆のようなペンを取り出した。
リリリさんも。
気に入ってもらえたなら良かった。
「いいよ。じゃあ、魔王さんの分を作りながら教えようか」
「あ! そうでした……!」
「つい、あまりにおいしくて……」
最初に作ったサンドイッチは、もう無い。
いつの間にか、主に二人がパクパク食べていたからなんだけど……。
「好評で嬉しい。安心して魔王さんに作ってあげられるな」
これでこの世界の人の舌に合うって解ったから、自信をもって魔王さんに出せる。
多少の好みの違いはあるだろうけど、そこは「ライトが作った」と思えば魔王さんも美味しく感じるはずだし。
「そうだ、何個作ればいいかな? 魔王さん、魔力も消耗しているならたくさん作る方がいいよね?」
「はい。沢山召し上がっていただきたいので三種類それぞれ一〇個ほど作って頂ければと思います」
ん?
「え?」
今、え?
三種を一〇個?
つまり、全部で三〇個?
「そんなに……?」
「はい。普段よりもお疲れですので」
よく見たら、用意されたパンは三〇本以上あるし、ゆで玉子も鍋いっぱい、ベーコンは塊で置いてある。
余裕をもって用意してくれているのかと思ったけど……使い切るレベルで作れということだったのか。
「……わかった……頑張るよ」
こんな重労働になるなら、もう少し簡単な「挟むだけ」のメニューばかりにすればよかった……とちょっと後悔もしたけど、作りながらレシピを教えた二人が「これ、絶対に魔王様喜ばれますよ」「こんなに作ってもらえて、魔王様は幸せ者ですね」なんてずっと言うから……。
久しぶりに誰かのために労働らしい労働をするのも、悪くないなと思った。
◆
頑張って作ったサンドイッチは、予想通り大好評だった。
魔王さんはあまりに喜びすぎて、泣きながら食べていたので作業の手が止まってしまったらしいけど……キレイに全部食べ切ったおかげで魔力の回復も良く、その後の仕事が捗ったらしい。良かった、良かった。
ただ、感動しすぎた魔王さんが……
「この料理は『かわいいライトの天才パン』と名付けよう」
と言い出したらしくて……。
きちんと「サンドイッチ」「カスクート」という名前を教えたはずのリリリさんや料理長さんも……
「ライト様、家でも先日教えて頂いた『かわいいライトの天才パン』を作ってみたのですが、家族にも大好評でした!」
「ライト様、今夜の夕食に、『かわいいライトの天才パン』のジャガイモペーストをアレンジしたものを入れてみました! 明日は城の賄いに『かわいいライトの天才パン』を作ってみますね!」
なんて言い出すから、ローズウェルさんや騎士団長さんにも……
「ライト様、先日の『かわいいライトの天才パン』のお陰で、ここ数日魔王様の体調がとても良く、仕事がはかどります。ライト様は本当にかわいくて天才ですね」
「ライト様、今日の騎士団の食事が『かわいいライトの天才パン』だったのだが、あれはとても食べやすく栄養補給に優れていてまさに天才パンだな! 次の騎士団の遠征にも『かわいいライトの天才パン』を活用させてもらおう!」
一瞬で定着してしまった。
もちろん、お城の他の人たちにも。
「……」
元の世界でも、人の名前や味に関係ない名前の料理名ってあるけど……なんとかさんの誘惑とか、悪魔のなんとかとか、娼婦風なんとかとか……でも……。
かわいい、天才、と言われるのは嬉しいけど……でも……。
愛されること、褒められること大好きな俺だけど、さすがに「もうこの世界に無い料理は作らない」と心に決めた。
「では、遠慮なくいただきます!」
「私も、ぜひ!」
料理長さんも手を上げてくれたので、サンドイッチをテキトーに切って二人の前に置きなおす。
「はいどうぞ。俺も味見しようかな」
「では失礼してこの玉子の……」
「私も……」
二人が玉子サラダのサンドイッチを手に取ったので、俺もそれへ手を伸ばす。
どうかな……?
「ん、んん!?」
「ん!」
あ、いい顔。これは大丈夫そうだ。
「ライト様! これ、美味しい! この玉子のペーストがもったりして、ベーコンの塩気とよく合って、味が濃いけどパンも一緒に食べるから濃すぎなくて……美味しいです!」
「お、おいしい……ゆで玉子のもそもそした感じが気にならなくて……でも白身のぷりぷり感は残っていて……味も濃厚に感じる。ゆで玉子にこんな使い方が……!」
「ん、イメージ通りできてる。良かった」
こっちのマヨネーズ、ちょっと味が薄いんだよね。黄身多めにして正解だったな。
俺が味を確認している間に、二人はポテトサラダのサンドイッチに手を伸ばしていた。
「ん~! このジャガイモ、美味しいです! パンとジャガイモを一緒に食べるなんて、栄養満点ですね!」
「ジャガイモがしっとりするからパンと一緒でも食べやすい……すごく考えられた料理だ……」
そういえば、ここの料理ってジャガイモが主食扱いの時あるな。元の世界でもヨーロッパ……北欧? ドイツだっけ? どこかジャガイモが主食だった気がする。
主食のパンと主食のジャガイモのセットは普通しないか……日本なら焼きそばパンとかあったけど。
「でも私、この中のジャガイモだけをお腹いっぱい食べたいかも……むしろ、お酒と……」
「あぁ、俺のいた世界だと、パンにはさまずにこの中身だけで食べることも多かったよ。お酒とも合わせてた」
「やっぱり! 家で真似して作りたいです! 作り方、詳しく教えて頂けますか?」
「あの、私も! 城のメニューに加えたいです! 今度のパーティーメニューにも!」
「パーティーだったらキレイなカップに入れるとか、ケーキみたいな形にするとかしてもいいかもね」
「なんと……! あ、ちょっと、メモします、メモ!」
料理長さんがポケットからメモ帳と万年筆のようなペンを取り出した。
リリリさんも。
気に入ってもらえたなら良かった。
「いいよ。じゃあ、魔王さんの分を作りながら教えようか」
「あ! そうでした……!」
「つい、あまりにおいしくて……」
最初に作ったサンドイッチは、もう無い。
いつの間にか、主に二人がパクパク食べていたからなんだけど……。
「好評で嬉しい。安心して魔王さんに作ってあげられるな」
これでこの世界の人の舌に合うって解ったから、自信をもって魔王さんに出せる。
多少の好みの違いはあるだろうけど、そこは「ライトが作った」と思えば魔王さんも美味しく感じるはずだし。
「そうだ、何個作ればいいかな? 魔王さん、魔力も消耗しているならたくさん作る方がいいよね?」
「はい。沢山召し上がっていただきたいので三種類それぞれ一〇個ほど作って頂ければと思います」
ん?
「え?」
今、え?
三種を一〇個?
つまり、全部で三〇個?
「そんなに……?」
「はい。普段よりもお疲れですので」
よく見たら、用意されたパンは三〇本以上あるし、ゆで玉子も鍋いっぱい、ベーコンは塊で置いてある。
余裕をもって用意してくれているのかと思ったけど……使い切るレベルで作れということだったのか。
「……わかった……頑張るよ」
こんな重労働になるなら、もう少し簡単な「挟むだけ」のメニューばかりにすればよかった……とちょっと後悔もしたけど、作りながらレシピを教えた二人が「これ、絶対に魔王様喜ばれますよ」「こんなに作ってもらえて、魔王様は幸せ者ですね」なんてずっと言うから……。
久しぶりに誰かのために労働らしい労働をするのも、悪くないなと思った。
◆
頑張って作ったサンドイッチは、予想通り大好評だった。
魔王さんはあまりに喜びすぎて、泣きながら食べていたので作業の手が止まってしまったらしいけど……キレイに全部食べ切ったおかげで魔力の回復も良く、その後の仕事が捗ったらしい。良かった、良かった。
ただ、感動しすぎた魔王さんが……
「この料理は『かわいいライトの天才パン』と名付けよう」
と言い出したらしくて……。
きちんと「サンドイッチ」「カスクート」という名前を教えたはずのリリリさんや料理長さんも……
「ライト様、家でも先日教えて頂いた『かわいいライトの天才パン』を作ってみたのですが、家族にも大好評でした!」
「ライト様、今夜の夕食に、『かわいいライトの天才パン』のジャガイモペーストをアレンジしたものを入れてみました! 明日は城の賄いに『かわいいライトの天才パン』を作ってみますね!」
なんて言い出すから、ローズウェルさんや騎士団長さんにも……
「ライト様、先日の『かわいいライトの天才パン』のお陰で、ここ数日魔王様の体調がとても良く、仕事がはかどります。ライト様は本当にかわいくて天才ですね」
「ライト様、今日の騎士団の食事が『かわいいライトの天才パン』だったのだが、あれはとても食べやすく栄養補給に優れていてまさに天才パンだな! 次の騎士団の遠征にも『かわいいライトの天才パン』を活用させてもらおう!」
一瞬で定着してしまった。
もちろん、お城の他の人たちにも。
「……」
元の世界でも、人の名前や味に関係ない名前の料理名ってあるけど……なんとかさんの誘惑とか、悪魔のなんとかとか、娼婦風なんとかとか……でも……。
かわいい、天才、と言われるのは嬉しいけど……でも……。
愛されること、褒められること大好きな俺だけど、さすがに「もうこの世界に無い料理は作らない」と心に決めた。
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