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第4章 日常と過去とこれからの話
第59話 お詫び
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少し前、魔王さんに髪の色を変えてもらった三日後くらいのことだ。
「ライト様への数々の失言、無礼な態度、あらためてお詫びする」
「気にしてないけどね?」
部屋の入り口に立って深々と頭を下げる騎士団長さんへ、ソファに座ったまま笑顔を向けると、騎士団長さんは顔を上げて意志の強そうな目で俺を見て……睨まれてる? 違うか……。
「俺の気がすまない! 何か詫びの品を献上させて欲しい。何か欲しいものは無いか?」
「欲しいもの……」
不自由ない暮らしをさせてもらっているし、この世界に何があるかわからないし、ここでお願いするべきものの相場もわからないし。
悩ましいな。
「そう言われても……」
悩んでいると、ローズウェルさんが助け舟を出してくれた。
「ライト様、首周りが楽な服が欲しいとおっしゃっていましたよね?」
「あ、確かに。欲しい!」
割と最初の頃に言ったのに。ローズウェルさん、覚えていてくれたんだ。
あの頃は、魔王さんに「ニマが似合っていた服」というこだわりがあったけど、今ならそれもなさそう。
名案! ……とは思うんだけど。
「さすがローズウェルだな! よし! 街の人気店のものでも、オーダーメイドでも、好きなものを言ってくれ!」
「でも……俺が他人からもらった服を着ていると魔王さん嫌かな……あ、そうだ!」
良いこと思いついた!
ソファから立ち上がり、部屋の隅に置いてあるチェストから紙とペンを取り出して……絵は得意なんだよね……形は普通にTシャツで……真ん中にこういう模様を……。
「服の絵……か?」
ソファに戻って簡単な服のイラストを描く俺の手元を、騎士団長さんとローズウェルさんが興味深げに覗き込んで……うん、こんな感じかな?
「こういうのって作れる?」
描きあがった、作って欲しい服のイメージを騎士団長さんに見せると、騎士団長さんは微妙な顔で首をひねってしまう。
「……できるとは思うが、その……俺の感覚では、とても、えっと……ダサい……のだが?」
騎士団長さんの隣で、ローズウェルさんも同じように首をひねった。
形は普通だから、二人が気になっているのは、Tシャツの中心に描いたとある模様のことだと思う。
そうか。この世界の感覚でコレってダサいんだ。
でもコレ……
「うん。俺もダサいと思う」
「え? だったら、ライト様はせっかく美しいんだ。もっと違う模様……いっそ美しい顔が目立つ無地など……」
「でも、これなら他人からもらった服でも、魔王さん喜びそうじゃ無い?」
「……」
「……」
騎士団長さんとローズウェルさんが暫く俺の描いた服の絵を見つめて……服の絵の中の模様を見つめて……
「「確かに!」」
少し大きな声で頷いた。
「じゃあ、これよろしく。サイズは……これに書き込むね。柔らかくて肌触りが良くて……色は赤系、ピンクでも良いな」
「あぁ、その辺りの希望は細かく書いてくれ。明日、仕立て屋に持っていくが……」
俺が好き勝手に希望を書き込んだ紙を渡すと、騎士団長さんはそれをじっと見つめながらその場に立ち尽くした。
「……騎士団長さん?」
「……ライト様は、本当に魔王様のことをよく解っているのだなと……感心した! このような服を思いつくなんて、素晴らしいと思う!」
紙から顔を上げた騎士団長さんは、子供のように目をキラキラさせていた。
この人、やっぱり若いのかもしれないな。
「俺のいた世界では、周りを楽しませるための服って色々あったから……その一つってだけだよ」
「色々あるのなら、その中から魔王様に一番喜ばれそうなものを選ぶことが素晴らしい!」
「……そんなに言われると……照れるなぁ」
騎士団長さん、仲良くなるとこんなに素直な良い人なんだ?
あぁ、もう。
このお城、本当に良い人だらけだな。
「ライト様への数々の失言、無礼な態度、あらためてお詫びする」
「気にしてないけどね?」
部屋の入り口に立って深々と頭を下げる騎士団長さんへ、ソファに座ったまま笑顔を向けると、騎士団長さんは顔を上げて意志の強そうな目で俺を見て……睨まれてる? 違うか……。
「俺の気がすまない! 何か詫びの品を献上させて欲しい。何か欲しいものは無いか?」
「欲しいもの……」
不自由ない暮らしをさせてもらっているし、この世界に何があるかわからないし、ここでお願いするべきものの相場もわからないし。
悩ましいな。
「そう言われても……」
悩んでいると、ローズウェルさんが助け舟を出してくれた。
「ライト様、首周りが楽な服が欲しいとおっしゃっていましたよね?」
「あ、確かに。欲しい!」
割と最初の頃に言ったのに。ローズウェルさん、覚えていてくれたんだ。
あの頃は、魔王さんに「ニマが似合っていた服」というこだわりがあったけど、今ならそれもなさそう。
名案! ……とは思うんだけど。
「さすがローズウェルだな! よし! 街の人気店のものでも、オーダーメイドでも、好きなものを言ってくれ!」
「でも……俺が他人からもらった服を着ていると魔王さん嫌かな……あ、そうだ!」
良いこと思いついた!
ソファから立ち上がり、部屋の隅に置いてあるチェストから紙とペンを取り出して……絵は得意なんだよね……形は普通にTシャツで……真ん中にこういう模様を……。
「服の絵……か?」
ソファに戻って簡単な服のイラストを描く俺の手元を、騎士団長さんとローズウェルさんが興味深げに覗き込んで……うん、こんな感じかな?
「こういうのって作れる?」
描きあがった、作って欲しい服のイメージを騎士団長さんに見せると、騎士団長さんは微妙な顔で首をひねってしまう。
「……できるとは思うが、その……俺の感覚では、とても、えっと……ダサい……のだが?」
騎士団長さんの隣で、ローズウェルさんも同じように首をひねった。
形は普通だから、二人が気になっているのは、Tシャツの中心に描いたとある模様のことだと思う。
そうか。この世界の感覚でコレってダサいんだ。
でもコレ……
「うん。俺もダサいと思う」
「え? だったら、ライト様はせっかく美しいんだ。もっと違う模様……いっそ美しい顔が目立つ無地など……」
「でも、これなら他人からもらった服でも、魔王さん喜びそうじゃ無い?」
「……」
「……」
騎士団長さんとローズウェルさんが暫く俺の描いた服の絵を見つめて……服の絵の中の模様を見つめて……
「「確かに!」」
少し大きな声で頷いた。
「じゃあ、これよろしく。サイズは……これに書き込むね。柔らかくて肌触りが良くて……色は赤系、ピンクでも良いな」
「あぁ、その辺りの希望は細かく書いてくれ。明日、仕立て屋に持っていくが……」
俺が好き勝手に希望を書き込んだ紙を渡すと、騎士団長さんはそれをじっと見つめながらその場に立ち尽くした。
「……騎士団長さん?」
「……ライト様は、本当に魔王様のことをよく解っているのだなと……感心した! このような服を思いつくなんて、素晴らしいと思う!」
紙から顔を上げた騎士団長さんは、子供のように目をキラキラさせていた。
この人、やっぱり若いのかもしれないな。
「俺のいた世界では、周りを楽しませるための服って色々あったから……その一つってだけだよ」
「色々あるのなら、その中から魔王様に一番喜ばれそうなものを選ぶことが素晴らしい!」
「……そんなに言われると……照れるなぁ」
騎士団長さん、仲良くなるとこんなに素直な良い人なんだ?
あぁ、もう。
このお城、本当に良い人だらけだな。
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