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第3章 体の話
第57話 正体(2)
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ローズウェルさんが一歩下がった瞬間、俺と系統が近い整った顔が歪み、体が大きく膨れ上がった。
三秒もしないうちに、ローズウェルさんの外見は大きく変わって、似ても似つかない姿になる。
「……!」
ビックリした。
すごくビックリした。
でも、このビックリは醜くなったからビックリしたのではなく、急に変わったからビックリしただけだと思う。
ローズウェルさんの元の姿は、端的に言えば銀色の竜……竜人? こういうモンスター何かで見た気がする……リザードマン? って、あれはトカゲか。
とにかく、二足歩行の人型だけど、全身に鱗があって、顔は完璧に竜。アジア系のにょろにょろした竜じゃなくて、西洋のドラゴンっぽい竜。
色はローズウェルさんのいつもの髪色と同じシルバーで、角は一緒かな?
大きくなった口から見える牙は鋭いし、体は確かに三メートルくらいある。
これが人食い竜人とか言われると怖いけど、普通に理性的で、話が通じて、よく知ったローズウェルさんだと思えば怖くない。服だってどうやっているのか解らないけど、さっきまでの執事のフロックコートが体格に合った大きさになっているし……。
こんなのむしろ……。
「え? 普通にかっこいい!」
「は!? えぇぇぇ!?」
ローズウェルさんが思い切り驚く。
あ、竜人の姿でも結構表情解るな。
「な~んだ。醜いとかいうから、もっと体の一部が腐っているとか、触手がうにょうにょしているとかなのかと思ったら……竜っぽくてかっこいい。鱗、キラキラしてキレイだし」
「……あ……え?」
「魔王さんもこんな感じで竜っぽいの? この鱗の色……髪色が体の色になる感じ?」
「あ、魔王様は……はい……竜の系統で……体の色も、そうです」
あ、声もちゃんとローズウェルさんだ。姿が変わると声帯も変わりそうなのに不思議だな。
「じゃあ魔王さん黒いんだ? 黒ってかっこいいよね。それと、服も大きくなるんだね、魔法?」
「はい。魔法で……え?」
まだ戸惑っているローズウェルさんを見上げながら、ソファから立ち上がる。
近づくと高さだけでなく厚みがあるのも解って、確かに「強そう」とか「力で絶対にかなわない」とは感じるけど……うん。やっぱり怖くない。
「ねぇ、魔王さんに会いたい」
「……っ!」
俺が笑顔のままローズウェルさんを見上げれば、ローズウェルさんはぎゅっと顔を歪ませ……。
「お?」
いつもの姿に戻ると、俺に深々と頭を下げた。
「不要な気遣いでした。ライト様を信用しない言葉の数々、お詫び申し上げます」
「気にしてないよ。ローズウェルさんって優しいんだなって感心した」
「……ライト様」
「ローズウェルさんだって、元の姿を見せるのは嫌なはずなのにね。魔王さんのために優しいね」
「っ……す、すぐにお部屋から出られるように結界を調整します」
「うん。よろしくね」
後ろを向いてドアから出ていくローズウェルさんの目に、薄っすら涙が浮かんでいたことは、気付かないふりをした。
このお城の人、みんな優しいなぁ。
三秒もしないうちに、ローズウェルさんの外見は大きく変わって、似ても似つかない姿になる。
「……!」
ビックリした。
すごくビックリした。
でも、このビックリは醜くなったからビックリしたのではなく、急に変わったからビックリしただけだと思う。
ローズウェルさんの元の姿は、端的に言えば銀色の竜……竜人? こういうモンスター何かで見た気がする……リザードマン? って、あれはトカゲか。
とにかく、二足歩行の人型だけど、全身に鱗があって、顔は完璧に竜。アジア系のにょろにょろした竜じゃなくて、西洋のドラゴンっぽい竜。
色はローズウェルさんのいつもの髪色と同じシルバーで、角は一緒かな?
大きくなった口から見える牙は鋭いし、体は確かに三メートルくらいある。
これが人食い竜人とか言われると怖いけど、普通に理性的で、話が通じて、よく知ったローズウェルさんだと思えば怖くない。服だってどうやっているのか解らないけど、さっきまでの執事のフロックコートが体格に合った大きさになっているし……。
こんなのむしろ……。
「え? 普通にかっこいい!」
「は!? えぇぇぇ!?」
ローズウェルさんが思い切り驚く。
あ、竜人の姿でも結構表情解るな。
「な~んだ。醜いとかいうから、もっと体の一部が腐っているとか、触手がうにょうにょしているとかなのかと思ったら……竜っぽくてかっこいい。鱗、キラキラしてキレイだし」
「……あ……え?」
「魔王さんもこんな感じで竜っぽいの? この鱗の色……髪色が体の色になる感じ?」
「あ、魔王様は……はい……竜の系統で……体の色も、そうです」
あ、声もちゃんとローズウェルさんだ。姿が変わると声帯も変わりそうなのに不思議だな。
「じゃあ魔王さん黒いんだ? 黒ってかっこいいよね。それと、服も大きくなるんだね、魔法?」
「はい。魔法で……え?」
まだ戸惑っているローズウェルさんを見上げながら、ソファから立ち上がる。
近づくと高さだけでなく厚みがあるのも解って、確かに「強そう」とか「力で絶対にかなわない」とは感じるけど……うん。やっぱり怖くない。
「ねぇ、魔王さんに会いたい」
「……っ!」
俺が笑顔のままローズウェルさんを見上げれば、ローズウェルさんはぎゅっと顔を歪ませ……。
「お?」
いつもの姿に戻ると、俺に深々と頭を下げた。
「不要な気遣いでした。ライト様を信用しない言葉の数々、お詫び申し上げます」
「気にしてないよ。ローズウェルさんって優しいんだなって感心した」
「……ライト様」
「ローズウェルさんだって、元の姿を見せるのは嫌なはずなのにね。魔王さんのために優しいね」
「っ……す、すぐにお部屋から出られるように結界を調整します」
「うん。よろしくね」
後ろを向いてドアから出ていくローズウェルさんの目に、薄っすら涙が浮かんでいたことは、気付かないふりをした。
このお城の人、みんな優しいなぁ。
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