魔王さんのガチペット

メグル

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第3章 体の話

第46話 金髪(1)

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 三日後の夕方六時ごろ。
 ローズウェルさんと一緒に部屋を出た。
 
「魔王さんが一緒じゃなくても出られるんだ?」
「一時的に結界を広げているので、城内は自由に歩けます」
 
 ずっとこれにしておいてくれたらいいのに……でも、このお城は魔王さんの家である以上に職場? 国の役所? そんな感じだからなぁ。ペットがうろうろするのは良くないか。
 いやでも、元の世界では職場で犬や猫を飼ってアニマルセラピーに……なんて話題になることがあった。
 俺の顔は魔王さん以外にも美形に見えるらしいから、みんなの癒しのために……。

 そんな自惚れたことを考えている時だった。

「おい、ペット!」
「あ……騎士団長さん?」

 廊下の先に、鎧姿の屈強な魔族が道を遮るように立っていた。
 いつもの怒鳴るような口調で、顔も険しい。
 部屋から出ていること、また何か言われちゃうのかな……うーん。面倒くさい。

「何か用?」

 俺が笑顔のまま立ち止まると、騎士団長さんは鎧をガチャガチャいわせながら大股で近づいてくる。

「話は聞いた。確かに根元が黒いな……」

 俺を見下ろす騎士団長さんが、微かに唇をかむ。
 ん?
 なんだろう、この反応……?
 どう返事をするか悩んでいると、騎士団長さんが先に口を開いた。

「いいのか? その……無理をしているなら、俺も一緒に魔王様に進言するぞ?」
「……!」

 騎士団長さん……!
 俺の心配をしてくれているんだ?
 真っすぐで根が真面目というか、良い人とは感じていたけど……俺、騎士団長さんには嫌われていると思っていたのに?
 
「ありがとう。大丈夫だよ。魔王さんに喜ばれたいし……俺、金髪似合うでしょう?」
「あ……あぁ、そうだな。似合うと思う」

 騎士団長さんは俺が明るく笑っても、まだ何か言いたそうで……なんか申し訳ないな。
 俺、本当に気にしないのに。

「騎士団長、ライト様と魔王様で十分にお話し合いをされて決めたことです。強制ではありません。ご安心ください」
「そうだとは思うが……ただのペットが、こんなにも大きな決断をするなんて……その……」

 騎士団長さんがまだ何か言いたそうに言葉を濁すと、ローズウェルさんが珍しくあからさまなため息を吐いた。

「ウオルタ、魔王様が信用できないのか?」

 お、敬語じゃないローズウェルさん珍しい。
 ちょっと苛立ってるし、あと、ウオルタって騎士団長さんの名前? 呼び捨ても珍しいな。

「あ……! も、もちろん信用している!」

 騎士団長さんは慌てて叫んだあと、俺に向き直って頭を下げた。

「すまない。決心を揺るがすようなことをした。お前のその決断、尊敬する。ペット……いや、ライト様。今まですまなかった。今度、改めて謝罪をさせていただきたい」
「んー? 俺、謝られるようなことされた?」

 あまりにも深々とお辞儀をするので、その場にしゃがんで騎士団長さんの顔を覗き込むと……騎士団長さんはぎゅっと泣くのをこらえるように目を閉じてから顔を上げた。

「っ……う、うぅ。か、かっわいい……優しい……かわいい……天使だ……!」

 ……どうしよう。
 騎士団長さん、チョロすぎて心配になる。

「……騎士団長、魔王様がお待ちですので、そろそろ……」

 今度はおそらく違う意味でため息をついたローズウェルさんは、いつもの口調に戻っていた。
 この人も、仕事はプロフェッショナルって感じだけど、意外と感情豊かな人だ。

「あ、あぁ。引き留めてすまなかった。後日改めて……」

 ローズウェルさんの言葉でやっといつもの顔に戻った騎士団長さんが、廊下の脇に避けてくれる。

「じゃあ、いってくるね」
「……」

 俺が手を振ると、騎士団長さんは恭しく最敬礼をして見送ってくれた。
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