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第2章 ペットの可愛がり方の話
第36話 二人の朝
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「んー……?」
朝だ。
時計は……六時半か。
この世界に来てから、だいたい六時半に目が覚めるからいつも通りなんだけど……今日は妙に体が重い。
「……あ」
ちゃんと目を開くと、いつものベッドの上に、俺ともう一人いる。
魔王さんだ。
「朝まで一緒にいてくれるんだ……」
嬉しい。
朝起きて一緒のベッドに誰かがいるっていいよね。
「ん……」
思わず裸の魔王さんに抱き着いて胸元に擦り寄ると、魔王さんの寝息が止まる。
起こしちゃった?
でも、魔王さんも毎朝七時が朝食らしいからいいよね?
「ん……ライト?」
「おはよう、魔王さん」
「あ……す、すまない、お前が起きる前に部屋に戻るつもりだったんだ……!」
俺が笑顔で見上げたのに、魔王さんは慌てて体を起こそうとする。
「……? なんで謝るの? 置いて行かれる方が寂しいよ?」
「え……? 俺が隣にいるとゆっくり休めないだろう?」
今までのペットはそうだったのか……。
「そう? セックスの後一人で放っておかれる方が嫌だけど?」
「そう……か? いいのか?」
「俺はそうだよ。覚えておいて?」
「あ、あぁ。わかった」
魔王さんは腑に落ちないようだけど、驚きながらも頷いてくれた。
じゃあ、この話は終わり。
魔王さんももう俺から離れようとはしていないので、両手を上にあげて体を伸ばす。
「んー……昨日寝落ちしちゃったけど……体拭いてくれたんだ? ありがとう」
思ったより筋肉痛は無いし、二回も射精した割に股間やお腹はきれいだった。
「別に……俺のせいで汚れたんだ。当然だろう?」
抱く方が拭いて当然とは思わないけど……まぁいいか。
「そんなこと言うなら、我儘言っていい?」
「なんだ?」
「シャワー連れてって」
「あぁ」
俺の我儘にも、魔王さんは「当然のことだ」という顔で頷いた。
「で、一緒にあびよう?」
「……あ、あぁ」
今度は少し戸惑いながら頷いて、俺をお姫様抱っこでシャワールームへ連れて行ってくれた。
◆
「ふふっ、くすぐったい。もういいよ」
「だめだ、まだ濡れている」
二人でシャワーを浴びて、きちんと服を着た後、ソファに座った魔王さんに促されて、膝に座った。
後ろからタオルで優しく髪を拭いてくれるのは良いんだけど……手つきがすごく優しくてくすぐったい。
身体的なくすぐったさと言うよりは……気持ち的なくすぐったさが強い。
朝からこんなイチャイチャするの、どう考えても昨日のセックスの余韻があって……。
――コンコン
振り向いてキスでもねだりそうになった時、ドアがノックされた。
「あ、はーい」
「失礼します。あの、こちらに魔王様がいらっしゃっていませんか……」
ローズウェルさんがドアを開けて俺たちを見た瞬間、ものすごく驚いた顔で固まった。
「……!」
「おはよう、ローズウェルさん。魔王さん、ここにいるよ」
「部屋にいなくて心配をかけたな。すまない」
「あ、いえ……」
魔王さんの手はまだタオル越しに俺の頭を撫でている。
シャワー浴びたてなのはバレバレだよね。
それに、入り口の洗濯籠には汚れたシーツと二人分のバスローブやタオルを突っ込んでいて……入りきらないからこんもりと存在感を主張している。
セックスしたのもバレバレだよね。
ちょっと恥ずかしいけど……。
まぁ、これもペットの役割らしいからいいか。
「魔王さん、このまま一緒に朝ご飯食べない?」
「いいのか? ライト」
「うん。一緒に食べたい」
「ローズウェル、頼めるか?」
「はい、すぐにご用意いたします!」
ローズウェルさんは驚いた顔のまま珍しく足音をバタバタと立てて部屋を出て行くと、すぐに俺と魔王さん、二人分の朝食を部屋に運んでくれた。
「今日は魔王さんの好きなパンだね。焼き立て美味しい」
「そうだな……ライトはいつもそれか?」
明るい部屋で向かい合って朝食をとるのは新鮮だ。
魔王さんもそう思っているみたいで、自分の手元よりも俺の顔と俺の手元ばかりに視線を向けてくれる。
「うん。朝は軽めにしてもらっているから、小さめのパンと、このスムージー」
「スムージー……そのどろどろした飲み物は体にいいのか?」
「そう。そんなに美味しくないけどめちゃくちゃ体にいいスペシャルドリンク。すごく手間なのに料理長さんが作ってくれているおかげで、俺の美肌が保たれてる」
「そうか。努力してえらいな、ライト」
「俺は飲むだけ。料理長さんの方がえらいよ」
そんな話をしながら、魔王さんはパンを一〇個とラグビーボールみたいな大きさのオムレツとソーセージを食べていた。
……これだけ食べるのはやはり珍しいらしく、食後にお皿を下げつつ魔力量を測りに来た料理長さんが泣いて喜んでいた。
ちなみに、体温計のようなものを咥えて測る魔力量はいつもよりかなり多かったらしく、また料理長さんが泣いて喜んでいた。
「では、昼過ぎに迎えに来る」
「うん。楽しみに待ってるね」
午後からは自由時間だけど、午前中はお仕事があるらしく、八時前に魔王さんがソファから立ち上がって扉へと向かった。
丸一日休めないって大変なお仕事だ。
昨日の夜、エッチ頑張って疲れているとも思うのに……。
「では……」
魔王さんもちょっと名残惜しいのか、一度ドアの方を向いたのにまた振り返った。
……なんか、かわいい。
「魔王さん!」
かわいいなって思うと、いてもたってもいられなかった。
思わず魔王さんに駆け寄って……頬に軽くキスをする。
「いってらっしゃい」
「あ……あぁ……」
魔王さん、昨日あんなにエッチなことしたのに……。
初めてキスをしたみたいに嬉しそうに照れ笑いを浮かべて、ぎゅっと俺の体を抱き寄せてから部屋を出て行った。
朝だ。
時計は……六時半か。
この世界に来てから、だいたい六時半に目が覚めるからいつも通りなんだけど……今日は妙に体が重い。
「……あ」
ちゃんと目を開くと、いつものベッドの上に、俺ともう一人いる。
魔王さんだ。
「朝まで一緒にいてくれるんだ……」
嬉しい。
朝起きて一緒のベッドに誰かがいるっていいよね。
「ん……」
思わず裸の魔王さんに抱き着いて胸元に擦り寄ると、魔王さんの寝息が止まる。
起こしちゃった?
でも、魔王さんも毎朝七時が朝食らしいからいいよね?
「ん……ライト?」
「おはよう、魔王さん」
「あ……す、すまない、お前が起きる前に部屋に戻るつもりだったんだ……!」
俺が笑顔で見上げたのに、魔王さんは慌てて体を起こそうとする。
「……? なんで謝るの? 置いて行かれる方が寂しいよ?」
「え……? 俺が隣にいるとゆっくり休めないだろう?」
今までのペットはそうだったのか……。
「そう? セックスの後一人で放っておかれる方が嫌だけど?」
「そう……か? いいのか?」
「俺はそうだよ。覚えておいて?」
「あ、あぁ。わかった」
魔王さんは腑に落ちないようだけど、驚きながらも頷いてくれた。
じゃあ、この話は終わり。
魔王さんももう俺から離れようとはしていないので、両手を上にあげて体を伸ばす。
「んー……昨日寝落ちしちゃったけど……体拭いてくれたんだ? ありがとう」
思ったより筋肉痛は無いし、二回も射精した割に股間やお腹はきれいだった。
「別に……俺のせいで汚れたんだ。当然だろう?」
抱く方が拭いて当然とは思わないけど……まぁいいか。
「そんなこと言うなら、我儘言っていい?」
「なんだ?」
「シャワー連れてって」
「あぁ」
俺の我儘にも、魔王さんは「当然のことだ」という顔で頷いた。
「で、一緒にあびよう?」
「……あ、あぁ」
今度は少し戸惑いながら頷いて、俺をお姫様抱っこでシャワールームへ連れて行ってくれた。
◆
「ふふっ、くすぐったい。もういいよ」
「だめだ、まだ濡れている」
二人でシャワーを浴びて、きちんと服を着た後、ソファに座った魔王さんに促されて、膝に座った。
後ろからタオルで優しく髪を拭いてくれるのは良いんだけど……手つきがすごく優しくてくすぐったい。
身体的なくすぐったさと言うよりは……気持ち的なくすぐったさが強い。
朝からこんなイチャイチャするの、どう考えても昨日のセックスの余韻があって……。
――コンコン
振り向いてキスでもねだりそうになった時、ドアがノックされた。
「あ、はーい」
「失礼します。あの、こちらに魔王様がいらっしゃっていませんか……」
ローズウェルさんがドアを開けて俺たちを見た瞬間、ものすごく驚いた顔で固まった。
「……!」
「おはよう、ローズウェルさん。魔王さん、ここにいるよ」
「部屋にいなくて心配をかけたな。すまない」
「あ、いえ……」
魔王さんの手はまだタオル越しに俺の頭を撫でている。
シャワー浴びたてなのはバレバレだよね。
それに、入り口の洗濯籠には汚れたシーツと二人分のバスローブやタオルを突っ込んでいて……入りきらないからこんもりと存在感を主張している。
セックスしたのもバレバレだよね。
ちょっと恥ずかしいけど……。
まぁ、これもペットの役割らしいからいいか。
「魔王さん、このまま一緒に朝ご飯食べない?」
「いいのか? ライト」
「うん。一緒に食べたい」
「ローズウェル、頼めるか?」
「はい、すぐにご用意いたします!」
ローズウェルさんは驚いた顔のまま珍しく足音をバタバタと立てて部屋を出て行くと、すぐに俺と魔王さん、二人分の朝食を部屋に運んでくれた。
「今日は魔王さんの好きなパンだね。焼き立て美味しい」
「そうだな……ライトはいつもそれか?」
明るい部屋で向かい合って朝食をとるのは新鮮だ。
魔王さんもそう思っているみたいで、自分の手元よりも俺の顔と俺の手元ばかりに視線を向けてくれる。
「うん。朝は軽めにしてもらっているから、小さめのパンと、このスムージー」
「スムージー……そのどろどろした飲み物は体にいいのか?」
「そう。そんなに美味しくないけどめちゃくちゃ体にいいスペシャルドリンク。すごく手間なのに料理長さんが作ってくれているおかげで、俺の美肌が保たれてる」
「そうか。努力してえらいな、ライト」
「俺は飲むだけ。料理長さんの方がえらいよ」
そんな話をしながら、魔王さんはパンを一〇個とラグビーボールみたいな大きさのオムレツとソーセージを食べていた。
……これだけ食べるのはやはり珍しいらしく、食後にお皿を下げつつ魔力量を測りに来た料理長さんが泣いて喜んでいた。
ちなみに、体温計のようなものを咥えて測る魔力量はいつもよりかなり多かったらしく、また料理長さんが泣いて喜んでいた。
「では、昼過ぎに迎えに来る」
「うん。楽しみに待ってるね」
午後からは自由時間だけど、午前中はお仕事があるらしく、八時前に魔王さんがソファから立ち上がって扉へと向かった。
丸一日休めないって大変なお仕事だ。
昨日の夜、エッチ頑張って疲れているとも思うのに……。
「では……」
魔王さんもちょっと名残惜しいのか、一度ドアの方を向いたのにまた振り返った。
……なんか、かわいい。
「魔王さん!」
かわいいなって思うと、いてもたってもいられなかった。
思わず魔王さんに駆け寄って……頬に軽くキスをする。
「いってらっしゃい」
「あ……あぁ……」
魔王さん、昨日あんなにエッチなことしたのに……。
初めてキスをしたみたいに嬉しそうに照れ笑いを浮かべて、ぎゅっと俺の体を抱き寄せてから部屋を出て行った。
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