魔王さんのガチペット

メグル

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第1章 ペットの個性の話

第20話 手紙

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 お城に来て六日目。

「リリリさん、文通ってできるんだよね? 俺が最初にいた村の人に手紙を出したいんだけど、できる?」

 朝食を持ってきてくれたリリリさんに、スムージーを飲みながら尋ねると、リリリさんはすぐに頷いてくれた。

「住所が解れば可能です」
「住所は解らないけど、村長さんに手紙が届けば、そこから伝言してもらえるかなって思うんだけど」
「あぁ、第一村の村長さんなら大丈夫です。お城で住所を把握しているので」

 あそこ第一村なんだ……第二とか第三もあるのかな? まぁ、今はいいか。

「じゃあ、後で書くから……午後に出すといつ届く?」
「通信室が混んでいなければ一五分くらいで届きます」
「一五分? 思ったより早い……」

 それ、手紙っていうか、メール? いや、ファックス?

「えっと……文字だけが届けば良いんですよね? 手紙そのものを届けるとなると翌日になります」
「文字だけでいいよ。文字だけが送れるんだ?」
「はい」
 
 やっぱりメールかファックスだな、それ。

「紙とインクは文通専用のものをお使いください。このチェストの……出しておきますね」
「ありがとう。文字の大きさとか決まりある?」
「この紙にこのインクで書いてあれば、そのまま向こうに伝わりますので……相手が読めないくらい小さい字はダメですが、普通に絵でも文字でもなんでも大丈夫です」

 ますますファックスっぽい。
 もしくは、画像をスキャンしてメールで送るみたいな感じか……。

「これ、魔法?」
「はい、魔法道具を使った文通信というものです」
「ふーん……便利だね。あ! 俺の書く文字ってこの世界の人読めるのかな?」
「おそらく……先日のサインは読めました。大丈夫だと思います」
「翻訳の魔法って書いた文字にも干渉するんだ? 便利すぎない?」
「便利ですよ! この魔法のお陰で、異種族の本も読めます」
「へぇ、しかも一般的に使われているんだ……」

 色々と仕組みは気になるけど……今日はとりあえず、用事を済ませる方が先だな。
 上手くいくといいんだけど……。


      ◆


 午前中で書き上げた手紙は、午後に村長さんへ送ってもらい、その日のうちに返事が来た。
 しかも……村長さんは俺のお願いをすべて快くうけてくれて、手配をしてくれるようだ。
 これなら上手くいきそう。
 ただ……

「本日は執務が長引いており、魔王様は別で夕食をとるとのことです」

 夕食の時間に俺の部屋にやってきたのはローズウェルさんだけだった。
 本当に仕事が忙しいのか、昨日、気落ちしてしまったままなのか……。
 ……手は打っているんだ。
 焦るな、俺。

「そっか。残念だけどお仕事なら仕方ないね。魔王さんに俺がすご~く寂しがっていたって伝えてくれる?」
「え?」
「それとも、俺が応援していたって言う方が元気出るかな? どっちでも、ローズウェルさんの良いと思う方で」
「……では、とても寂しがっておられて、食事も喉を通らないご様子だったとお伝えします」
「いいね、それでお願い」

 ローズウェルさんとそんな話をしながらも、用意された夕食はきちんと全部食べた。
 今日は野菜のコンソメゼリー寄せ。
 日に日に野菜メニューのクオリティが上がっている気がする。嬉しいな。

「あ、ローズウェルさん。明日、村長さんが俺に差し入れを持ってきてくれるんだ。申し訳ないけど、届いたらすぐに俺の部屋まで持ってきてもらえる?」
「承知致しました。門番にも伝えておきます。ただ、城への荷物は中身の検査が入りますが……」
「うん。しっかり検査して。魔王さんと楽しもうと思っているものだから」
「楽しむ……?」
「そう。中身によっては、明日の夕食後のお菓子を無しにしてもらうかも」
「食べ物と言うことですか……では、魔王様宛の場合と同じ検査をしてからお届けします」
「よろしくね」

 ローズウェルさんはさすが執事長だけあって話が早い。
 それに魔王さん、周りの人にめちゃくちゃ慕われているな。
 これは、ペットの俺もしっかり頑張らないと。

 明日、上手くいくと良いな。

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