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第1章 ペットの個性の話
第16話 食べもの
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食後は、食器を片付けに来たローズウェルさんが置いて行ってくれたお茶と焼き菓子。
クッキー? ビスケット? ガレット? みたいなものから、マドレーヌ? マフィン? パウンドケーキ? みたいなものまで八種類。昨日も似たようなお菓子を用意されて、俺は一つだけ食べた。
味は良かったんだけど……バターも砂糖もたっぷりで胃に重いし……カロリー……我慢……。
そして魔王さんは四つくらい。
食べている時の反応から言って、どうやら魔王さんは焼き菓子が好きなようなんだけど、俺が食べないから遠慮なのか食欲がわかないのか……意外と繊細な人みたいだ。
だから今日は、考えがある。
「俺、お腹いっぱいだから一つだけにしておこうと思うんだよね」
「そうか……」
魔王さんが少し寂しそうに眉尻を下げる。
ほら、やっぱり俺と一緒に好物を食べたい感じ?
だったら……
「でも、八種類もあるから、すごく悩む」
「そうだろうな」
「そこで、魔王さんが全種類食べて一番美味しかったのを俺に教えて? 俺、それだけ食べるから」
悪びれもせずお茶の入ったカップを持ち上げると、魔王さんは驚いた顔をした後、楽しそうに声を上げた。
「は、ははっ、便利に使われてしまったな」
「ごめんね?」
「まぁいい。これも飼い主の仕事だろう。そうだな……まずはこれから」
魔王さんは楽しそうに焼き菓子を一つずつ食べて、簡単に味を解説してくれた。
食レポは……まぁ、上手でも下手でもない。
「俺はこれが好きだ。でも、甘い方が良いならこっちだな」
「じゃあ魔王さんオススメの……ナッツのクッキー?」
「あぁ」
「いただきまーす。ん、うん。おいしい。ナッツも美味しいけど、まず生地が良いよね。このお城、小麦を使った料理もお菓子もよく出てくるけど全部美味しい! でも、良かった。俺は小麦アレルギーじゃないけど弟にはあるから……弟がこの世界に来ていたら食事困っただろうな」
「小麦……アレルギー?」
美味しいけど口の中の水分を奪っていくクッキーを飲み込み、お茶で口内を潤していると、魔王さんが不思議そうに首をひねる。
「人間って、人によって合わない食材があるんだ。俺もお医者さんじゃないからちゃんとした説明ができないんだけど……小麦が合わないとか、卵が合わないとか、牛乳、えび、そば、りんご、大豆、はちみつ……食材以外にもホコリとか花粉とかがダメな人もいるね」
「それは、食べるとどうなるんだ?」
「体がかゆくなったり目とか口とか鼻がしんどくなったり……ひどい時は呼吸がちゃんとできなくて死んじゃう場合もあるよ」
「死……!?」
魔王さんがひどく驚いた顔をする。
そりゃあそうか。人間好きからしたら、人間が死ぬのは嫌だよね。
「人間全員に良くない、解りやすい毒とは違って、個人差があるのが厄介だよね。それに、子供の頃は大丈夫だったのに、大人になってからダメになる場合もあるし、逆に大丈夫になる場合もあるし……」
「人間は……そんなにも個人差があるのか」
「そうだよ。魔王さんからみたら人間はみんな等しくかわいいペットかもしれないけど、個性が色々あるんだよ。ほら、俺なんか特に他の人間より美人でしょう?」
「はは。そうだな。ライトが一番美人だ」
一瞬複雑そうな顔をした後、魔王さんはいつもの蕩けそうな笑顔で俺を見ていた。
でも、熱っぽい視線なのに……ちょっと寂しそうな気がした。
クッキー? ビスケット? ガレット? みたいなものから、マドレーヌ? マフィン? パウンドケーキ? みたいなものまで八種類。昨日も似たようなお菓子を用意されて、俺は一つだけ食べた。
味は良かったんだけど……バターも砂糖もたっぷりで胃に重いし……カロリー……我慢……。
そして魔王さんは四つくらい。
食べている時の反応から言って、どうやら魔王さんは焼き菓子が好きなようなんだけど、俺が食べないから遠慮なのか食欲がわかないのか……意外と繊細な人みたいだ。
だから今日は、考えがある。
「俺、お腹いっぱいだから一つだけにしておこうと思うんだよね」
「そうか……」
魔王さんが少し寂しそうに眉尻を下げる。
ほら、やっぱり俺と一緒に好物を食べたい感じ?
だったら……
「でも、八種類もあるから、すごく悩む」
「そうだろうな」
「そこで、魔王さんが全種類食べて一番美味しかったのを俺に教えて? 俺、それだけ食べるから」
悪びれもせずお茶の入ったカップを持ち上げると、魔王さんは驚いた顔をした後、楽しそうに声を上げた。
「は、ははっ、便利に使われてしまったな」
「ごめんね?」
「まぁいい。これも飼い主の仕事だろう。そうだな……まずはこれから」
魔王さんは楽しそうに焼き菓子を一つずつ食べて、簡単に味を解説してくれた。
食レポは……まぁ、上手でも下手でもない。
「俺はこれが好きだ。でも、甘い方が良いならこっちだな」
「じゃあ魔王さんオススメの……ナッツのクッキー?」
「あぁ」
「いただきまーす。ん、うん。おいしい。ナッツも美味しいけど、まず生地が良いよね。このお城、小麦を使った料理もお菓子もよく出てくるけど全部美味しい! でも、良かった。俺は小麦アレルギーじゃないけど弟にはあるから……弟がこの世界に来ていたら食事困っただろうな」
「小麦……アレルギー?」
美味しいけど口の中の水分を奪っていくクッキーを飲み込み、お茶で口内を潤していると、魔王さんが不思議そうに首をひねる。
「人間って、人によって合わない食材があるんだ。俺もお医者さんじゃないからちゃんとした説明ができないんだけど……小麦が合わないとか、卵が合わないとか、牛乳、えび、そば、りんご、大豆、はちみつ……食材以外にもホコリとか花粉とかがダメな人もいるね」
「それは、食べるとどうなるんだ?」
「体がかゆくなったり目とか口とか鼻がしんどくなったり……ひどい時は呼吸がちゃんとできなくて死んじゃう場合もあるよ」
「死……!?」
魔王さんがひどく驚いた顔をする。
そりゃあそうか。人間好きからしたら、人間が死ぬのは嫌だよね。
「人間全員に良くない、解りやすい毒とは違って、個人差があるのが厄介だよね。それに、子供の頃は大丈夫だったのに、大人になってからダメになる場合もあるし、逆に大丈夫になる場合もあるし……」
「人間は……そんなにも個人差があるのか」
「そうだよ。魔王さんからみたら人間はみんな等しくかわいいペットかもしれないけど、個性が色々あるんだよ。ほら、俺なんか特に他の人間より美人でしょう?」
「はは。そうだな。ライトが一番美人だ」
一瞬複雑そうな顔をした後、魔王さんはいつもの蕩けそうな笑顔で俺を見ていた。
でも、熱っぽい視線なのに……ちょっと寂しそうな気がした。
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