魔王さんのガチペット

回路メグル

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第1章 ペットの個性の話

第7話 お城の人

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「俺は執務に戻る。執事長、ライトのことは頼んだぞ」
「承知致しました」

 俺の斜め後ろ辺りで男の人の声が聞こえた後、魔王さんは王座から立ち上がって後ろの……どこかに繋がる扉へと消えていった。
 へぇ。ペットってずっと連れ歩かれるかと思ったけど違うんだ?
 さて、俺はこれから執事長さんとかいう人とどこか行くのかな……?
 後ろを向こうとした瞬間、ガチャンガチャンと派手な音をさせて、甲冑の魔族が階段を降りて来た。
 あ、やばい?

「なんて生意気なペットなんだ……! 魔王様がお優しいからと調子に乗って!」
「あー……」

 これはフォローがいるか……とりあえず大人しく近づいてくる甲冑の魔族に笑顔を向けていると、両横からローブを着た赤髪のオカッパでサンタクロースみたいな髭のおじいちゃん魔族と、黒くてごてごてした装飾のドレスを着た紫のお団子ヘアのおばあちゃん魔族が間に入ってくれた。

「まぁまぁ騎士団長。か弱い人間が魔王様に怯えずになつくなんて微笑ましいじゃないですか」
「そうですわ。あの魔王様の楽しそうなお顔。良い子が来ましたわね」
「なにより、とても美形だし!」
「ねぇ、美形ですわよね!」

 おじいちゃんとおばあちゃんが盛り上がっているのを見て、甲冑の魔族が複雑そうな顔をする。

「確かに今までのペットより美形だが、しかし……」

 この魔族も俺のことを美形とは思ってくれているんだ?
 で、三人の会話的にこの水色の髪の甲冑魔族は「騎士団長」か。
 偉い人ではあるけど、なんとなく他の人より若そう。頑固そう。こういう人は……

「騎士団長さん、魔王さんのことすごく考えているんだね」
「え……?」

 俺の言葉に騎士団長さんが怪訝そうな顔をする。

「俺なりに魔王さんを楽しませるつもりだけど、失敗した時には、俺よりも魔王さんのことをしっかり考えている騎士団長さんに相談するから。その時はアドバイスよろしく」
「え……? あ、あぁ……」
「あらあら~! ほら、良い子じゃないですか」

 俺の言葉にひるんだ騎士団長さんに、おばあちゃん魔族がニコニコと声をかける。

「まずは好きにさせてみましょう? 魔王様もたまには違う感じのペットを楽しんだ方が良いと思いますし」
「そうですよ。いつまでもニマにこだわっていては……」
「それも……そうだな。見た目は申し分ないし……少しでも魔王様のご機嫌を損なうことがあれば、俺が言うように振る舞ってもらうからな! それと、執事長や城の者に迷惑をかけるなよ!」
「わかった」
 
 俺が笑顔で頷くと、騎士団長さんは怒っているとも言いきれない微妙な顔で部屋から出て行った。
 まぁ、成功かな?
 こういうの、最初が肝心だからね。

「ふふっ、本当にきれいで楽しい子が来てくれて嬉しいわ。私はドーラル。このお城のことを仕切っている世話係みたいなものだから、何かあれば遠慮なく相談してくださいね」
「ドーラルさんね、よろしく」
「私はこの国の政治の方を仕切っています、ファイです。どうぞ、魔王様を楽しませてくださいね」
「ファイさんもよろしく」

 周囲を伺うと、おおむね「良さそうな子じゃないか」「今までで一番美しい」「魔王様の楽しそうなお顔……よかった」なんて反応のようだ。
 
「みなさん、今日から三年間よろしくね」

 俺が全方向に笑顔を振りまくと、ほぼ全員が「よろしくお願いします」「ライト様、よろしく!」と拍手までしてくれた。

 ……俺の計算どおりではあるけど、あまりにチョロすぎてちょっと怖い。
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