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番外編3(全13話)
【番外編3】若頭(改造巨根)と舎弟と「怪我」の話【2】
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「え?」
「え? え、リョウさん?」
俺がきっぱり言った言葉に、モトキも弁護士も顔を引きつらせる。
「タカさんが、若頭としての自覚がない。優しすぎる」
「そんな……いや、俺が、頼りないのが悪いだろ……」
「それも悪いけど、タカさんも悪い」
もう一度キッパリ言ったのと同時に、部屋のドアが開き、ため息交じりの声が聞こえた。
「……俺がなんだって?」
「若頭!」
タカさんだ。
朝に観たのと同じ、オーダーメードの高いスーツだけど、右腕側は肩にかけているだけで、俺が朝にアイロンをかけたシャツも同じように右は羽織るだけ。ネクタイは胸ポケットに突っ込んであるし、スーツ姿の時に見えるはずのないインナーの黒いタンクトップが見えている。
だらしない格好の原因は……右腕を黒いサポーターのようなもので肩から吊って固定しているからだ。
「タカさん……」
「リョウ」
タカさんはふっと表情を緩めた笑顔になるけど、そんなので誤魔化されない。
「タカさん、俺は怒っています」
「……そうだろうな。悪かった」
素直に謝っても許さない。
舎弟としても、恋人としても、いつも言っているんだ。
タカさんは優しいから、すぐに他人のために命を張ろうとするけどやめて欲しいと。
優しいタカさんが大好きだけど、それ以上にタカさんの命が心配だと。
タカさんがいないと生きていけないと。
絶対に命を大事にしてくれと。
タカさんが、タカさんを一番大事にしてくれないと困ると……。
「悪かったから。泣かないでくれ、リョウ」
「う……っ、タカさ……っ……」
怒り、心配、不安、恐怖……そして顔を見て感じる大きな安心。
緊張の糸が切れて思わず泣いてしまった俺を、タカさんは左手でそっと抱きしめてくれた。
◆
タカさんの怪我は、右手首の骨折。
病院の先生曰く「粉砕とかじゃなくてキレイに割れて、ちょっと欠けている程度なので、正常にくっつくと思いますよ」ということだった。金属バットのフルスイングを受けてこれは奇跡だと思う。
ただ、関節にも少しかかっているので最低四週間はギプスでしっかり固定。
安静にするように言われてしまった。
「油断したのは確かだな」
入院もいらないので、俺の運転する車で自宅に戻り詳しい話を聞いたが、どうやら弁護士の爆笑していた電動ママチャリというのはなかなか侮れないらしい。
かなりスピードが出るし、車やバイクが出てくるはずのない狭い路地から飛び出してきたしでモトキももう一人の護衛も対応が遅れたようだ。
「なぁリョウ、機嫌治してくれ。これでも情けないと思っているんだ」
リビングのデカいソファで、左側に座った俺の肩をタカさんが抱き寄せる。
タカさんの体温を感じるのは嬉しいけど、消毒液っぽい病院の匂いがして思わず眉を寄せる。
話を聞けば聞くほど笑い事じゃない。
「タカさん、俺、タカさんに何かあったらマジで生きていけないんスよ……」
「あぁ」
「俺、タカさんが大事で、生き甲斐で、タカさんのために生きる生き方しか知らねぇのに」
「あぁ」
俺が言葉を紡ぐたびに、タカさんを抱きしめる腕の力を強くする。
「俺を殺す気ッスか?」
「ははっ!」
俺は真剣なのに、タカさんは嬉しそうに笑う。
普段ならタカさんが嬉しいなら俺も嬉しいけど、今は真剣に話を聞いて欲しいのに……タカさん、良い笑顔過ぎる。
「すげぇ殺し文句だなぁ、リョウ」
殺し文句?
俺はタカさんの無茶を叱っているだけだ。
「タカさん……っ、ん」
もっと言わないと、と開いた口を、タカさんの口が塞ぐ。
「んっ……」
うぅ……キス、ねっちいこい。
舌、そんなに擦られたら痺れてしゃべれなくなる……。
「はぁ……なぁリョウ、確かに油断したし情けないが、怪我で済むと思ったから庇ったんだ。命張るつもりはなかった」
タカさんの左手が、俺のシャツをスラックスから抜いて、裾から中に入ってきて……
「死んだらお前のこと抱けねぇもんなぁ」
「っ、ちょっ、タカさん、話、まだ……!」
素肌を、セックスの始まりっぽくいやらしく撫でられる。
ちゃんとタカさんに言って聞かさないとダメなのに。
ダメなのに……怪我人相手に本気の抵抗はマズイと思って体がすくむ。
「リョウ、お前は俺のために生きているんだよな?」
「はい……そうッスけど」
「俺の役に立つのが生き甲斐なんだよな?」
「そうッス」
「じゃあ、今日からこいつが外れるまで……」
タカさんの唇が、俺の耳に触れる。
「俺の役に立ってもらえるか?」
「……!」
タカさんの、役に……?
「利き手を折ったんだ。不便も多い。お前のこと、頼りにしているからな?」
頼りに……?
「あ……」
顔を上げてタカさんを見ると、珍しく少し困ったような笑顔だった。
タカさんが、俺を頼ってくれている。
俺が、タカさんの役に立てる。
え。
こんなの。
不謹慎で申し訳ないけど。
最高だ!!!!!!
「はい! 頑張ります!」
タカさんを叱ることも忘れて、俺の心はタカさんの役に立てる悦びでいっぱいになってしまった。
「え? え、リョウさん?」
俺がきっぱり言った言葉に、モトキも弁護士も顔を引きつらせる。
「タカさんが、若頭としての自覚がない。優しすぎる」
「そんな……いや、俺が、頼りないのが悪いだろ……」
「それも悪いけど、タカさんも悪い」
もう一度キッパリ言ったのと同時に、部屋のドアが開き、ため息交じりの声が聞こえた。
「……俺がなんだって?」
「若頭!」
タカさんだ。
朝に観たのと同じ、オーダーメードの高いスーツだけど、右腕側は肩にかけているだけで、俺が朝にアイロンをかけたシャツも同じように右は羽織るだけ。ネクタイは胸ポケットに突っ込んであるし、スーツ姿の時に見えるはずのないインナーの黒いタンクトップが見えている。
だらしない格好の原因は……右腕を黒いサポーターのようなもので肩から吊って固定しているからだ。
「タカさん……」
「リョウ」
タカさんはふっと表情を緩めた笑顔になるけど、そんなので誤魔化されない。
「タカさん、俺は怒っています」
「……そうだろうな。悪かった」
素直に謝っても許さない。
舎弟としても、恋人としても、いつも言っているんだ。
タカさんは優しいから、すぐに他人のために命を張ろうとするけどやめて欲しいと。
優しいタカさんが大好きだけど、それ以上にタカさんの命が心配だと。
タカさんがいないと生きていけないと。
絶対に命を大事にしてくれと。
タカさんが、タカさんを一番大事にしてくれないと困ると……。
「悪かったから。泣かないでくれ、リョウ」
「う……っ、タカさ……っ……」
怒り、心配、不安、恐怖……そして顔を見て感じる大きな安心。
緊張の糸が切れて思わず泣いてしまった俺を、タカさんは左手でそっと抱きしめてくれた。
◆
タカさんの怪我は、右手首の骨折。
病院の先生曰く「粉砕とかじゃなくてキレイに割れて、ちょっと欠けている程度なので、正常にくっつくと思いますよ」ということだった。金属バットのフルスイングを受けてこれは奇跡だと思う。
ただ、関節にも少しかかっているので最低四週間はギプスでしっかり固定。
安静にするように言われてしまった。
「油断したのは確かだな」
入院もいらないので、俺の運転する車で自宅に戻り詳しい話を聞いたが、どうやら弁護士の爆笑していた電動ママチャリというのはなかなか侮れないらしい。
かなりスピードが出るし、車やバイクが出てくるはずのない狭い路地から飛び出してきたしでモトキももう一人の護衛も対応が遅れたようだ。
「なぁリョウ、機嫌治してくれ。これでも情けないと思っているんだ」
リビングのデカいソファで、左側に座った俺の肩をタカさんが抱き寄せる。
タカさんの体温を感じるのは嬉しいけど、消毒液っぽい病院の匂いがして思わず眉を寄せる。
話を聞けば聞くほど笑い事じゃない。
「タカさん、俺、タカさんに何かあったらマジで生きていけないんスよ……」
「あぁ」
「俺、タカさんが大事で、生き甲斐で、タカさんのために生きる生き方しか知らねぇのに」
「あぁ」
俺が言葉を紡ぐたびに、タカさんを抱きしめる腕の力を強くする。
「俺を殺す気ッスか?」
「ははっ!」
俺は真剣なのに、タカさんは嬉しそうに笑う。
普段ならタカさんが嬉しいなら俺も嬉しいけど、今は真剣に話を聞いて欲しいのに……タカさん、良い笑顔過ぎる。
「すげぇ殺し文句だなぁ、リョウ」
殺し文句?
俺はタカさんの無茶を叱っているだけだ。
「タカさん……っ、ん」
もっと言わないと、と開いた口を、タカさんの口が塞ぐ。
「んっ……」
うぅ……キス、ねっちいこい。
舌、そんなに擦られたら痺れてしゃべれなくなる……。
「はぁ……なぁリョウ、確かに油断したし情けないが、怪我で済むと思ったから庇ったんだ。命張るつもりはなかった」
タカさんの左手が、俺のシャツをスラックスから抜いて、裾から中に入ってきて……
「死んだらお前のこと抱けねぇもんなぁ」
「っ、ちょっ、タカさん、話、まだ……!」
素肌を、セックスの始まりっぽくいやらしく撫でられる。
ちゃんとタカさんに言って聞かさないとダメなのに。
ダメなのに……怪我人相手に本気の抵抗はマズイと思って体がすくむ。
「リョウ、お前は俺のために生きているんだよな?」
「はい……そうッスけど」
「俺の役に立つのが生き甲斐なんだよな?」
「そうッス」
「じゃあ、今日からこいつが外れるまで……」
タカさんの唇が、俺の耳に触れる。
「俺の役に立ってもらえるか?」
「……!」
タカさんの、役に……?
「利き手を折ったんだ。不便も多い。お前のこと、頼りにしているからな?」
頼りに……?
「あ……」
顔を上げてタカさんを見ると、珍しく少し困ったような笑顔だった。
タカさんが、俺を頼ってくれている。
俺が、タカさんの役に立てる。
え。
こんなの。
不謹慎で申し訳ないけど。
最高だ!!!!!!
「はい! 頑張ります!」
タカさんを叱ることも忘れて、俺の心はタカさんの役に立てる悦びでいっぱいになってしまった。
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